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願いの対価
「十五夜の丑三つ時に、四谷にある二車線道路の一端か三叉路で、北斗七星を見ながら九字を切って、十八番を歌うと悪魔が現れて願いを叶えてくれるらしいよ」
「え?」
「だからあ、十五夜のうしみ――」
「いやいや、急にどうしたの?」
「温泉に、入りたいなと思って。ちょっくら行って呼び出して来てくれない? 対価として魂は地獄に行っちゃうけど」
「嫌だよ。魂を対価に差し出すのも、わざわざ悪魔に温泉に入りたいって馬鹿な願いを言うのも」
「仕方ないじゃない。人類は私たち以外滅んじゃったし、水は貴重だからお風呂になんて使えないし」
「もし本当に願いが叶うなら、もっと他に頼む事があるんじゃないかなあ」
「駄目だよ、大きな願いは。どこかの誰かが願ったその対価として、この世界が生まれたんだから。」




