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思考虫

 教授は解きかけの公式が書かれた黒板の前で頭をグリグリと揉んでいた。考えたすぎた頭が時に熱を持ち、キリキリとした痛みを覚える事がある。その症状に悩んでいたのだ。

 ああ、一度脳を取り出して水洗いできないものだろうか。そんな馬鹿げた考えを持ってしまうくらい、教授は思考の絡まりや重たさ、痛みや痒みといった、いわゆる脳が感じているイメージといった類のナニカに辟易していた。

 左耳の後ろ数センチの所から一度頭頂へと登って、そこから額の辺りへと伸びていき眉間で止まる。まるで頭の中で虫が這っているような……。不快さを吹き飛ばすように、教授は頭をワシャワシャと掻きむしるが感覚は晴れない。思考という虫が頭の中で蠢いている。そんな妄想に囚われた教授は胸ポケットにしまっていた万年筆を取り出すと、おもむろに左耳の穴へと突き刺した。深く深く、思考がもう這いずり回らないように。

「ああ、やっと捕まえた……」

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