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君は繋ぐ手を優しくほどいた
「おお、星がたくさん! ∪ちゃん越しに見る夜空もオツなもんですねえ。ウヒヒ」
Iは呑気に笑っていた。僕も笑って返事をしてあげたかったけれど、それどころではなかった。突然、叫びにも似た軋む音を響かせながら、僕たちの居た橋が崩れたのだ。
僕は崩れた橋の端で右手を伸ばし、真っ逆さまに落ちていくIの細い手首をがむしゃらに掴んだ。
ブラブラと宙に浮いているIはまたも呑気な声を上げる。「ファイト一発だよお、∪ちゃん!」
僕は返事の代りに、ギイとかグウとかいう音を奥歯の隙間から出して、全身全霊の力で持ってIを引っ張るのだが一向に上がってこない。
「真剣な顔の∪ちゃんも格好良いなあ。本当に。私は幸せ者だったよなあ。こんな格好良くて頼りになる彼氏ができて。だからさ、ウン、大丈夫! 私は後悔しないから。だから∪ちゃんも、ね? エヘヘ……――」
そういってIは僕の手首を思い切りつねった。




