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Nostalgia world online  作者: naginagi
第四章
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迷路イベント③

「それにしても、ウィルだいじょぶかな?」

「さっきの橋のところでは見なかったし、死に戻りはまだしてないんじゃないかな?」

「勘だけはかなり鍛えられましたからね。なんだかんだ罠も回避しているんじゃないですか?」


 罠って勘だけで回避できるものなのかな?

 まぁそういう勘って無視できないこともあるし、実際回避してるんだろうね。

 それにしても…。


「結構道分かれてるねぇ…」


 先程から何回も道が分かれており、どの道が正解なのかは全くわからない。

 一応マッピングはされているようなので、今いる道があっているのか間違っているかの判断はできそうだ。

 流石にマッピングされてなかったら中々の鬼仕様だと思うけどね。


「あちこちから悲鳴も反響してますけどね…」


 罠に引っかかったプレイヤーの悲鳴が次々に聞こえてくる。

 どこの絶叫施設だここは。


「でもここまで罠に掛かるとなると、第三陣は辛いんじゃないですかね?」

「たぶん第三陣とそれ以外で、補正が掛かってると思う」

「補正?」


 ルカ曰く、第三陣にはある程度罠が分かりやすいような仕様になっているのではないかということらしい。

 例えば最初の社長の時みたいに、罠の位置に色が出ていたりなどといった具合に。

 確かにそれならば、第三陣でも罠を回避することは可能だろう。

 それに一定間隔に休憩所もあるため、そこで空腹度などを回復させることも可能だ。

 つまり、罠に掛からなければ進めるようになっているのだ。


「でも、既に一部はゴール諦めて生産してるけど」


 ルカが指を指した方を見ると、生産設備の近くに採掘場があるのかわからないが、プレイヤーたちが一心不乱にピッケルで壁を掘っているのが見えた。


「ヒャッハー! 鉱石じゃ鉱石じゃぁ!」

「いつ掘るの? 今でしょ!」

「鉱石稼ぎじゃぁぁ!」


 どうやら一定時間毎に採掘ポイントが回復するようで、これ幸いにと生産者たちが採掘をしていた。


「採掘ポイントがあるってことは、採取ポイントもあるのかな?」


 それはそれで少し採取しておきたいかも。


「たぶんあっちの事だと思いますよ?」


 今度は海花が指差した方向を見ると、この風景に不釣り合いな草が生い茂った空間があった。

 そこでも採掘場と同じように、プレイヤーたちが群がっているのが見えた。


「ある意味正解な気がする」

「まぁ罠に掛かって心折れるよりは、こうやって楽しくやるのもありとは思いますが…」


 なんか…違くない?

 このイベントの趣旨としては。



 しばらく進んでいると、前の方で何やら争って言うような声が聞こえてきた。

 PT内で喧嘩かな? と思って近づいてみると、ここ最近聞いてきた声が聞こえた。

 どうやら六人程いて、その内の二人が口論しているようだ。


「約束通り、俺が勝ったらクオは解放してもらうぞ!」

「はっ! お前が俺に勝てると思ってんのかよ!」


 おや、あそこにいるのはウィルじゃないか。

 ってことは、あのオドオドした子がクオって子かな?

 何かあの子を見ていると…。


「挙動不審の時のルカみたい…」

「!?」


 私が呟いた言葉にショックを受けたルカが、ショボーンと項垂れた。

 ごめん…。


「なんだテメェら! 見てんじゃねえよ!」


 私たちに気づいた男の子は、威嚇するように私たちを睨みつけてきた。

 それに反応してウィルがこちらを見た。


「しっ師匠! なんでここに!?」

「んー…道なりに進んでたら着いた…みたいな?」


 まぁこういう説明しかできないよね。

 狙ってきたわけでもないし。


「はっ! 随分威勢がいいと思ったら、そいつらに手伝ってもらうからかよ!」


 一体あの子は何を言っているのだろうか。

 弟子の戦いに師匠は手を出さないというのに。


「師匠! 俺一人で大丈夫です! 手出ししないでください!」

「あー…うん…」


 元々手を出すつもりはなかったけど…。

 まぁ頑張って、ウィル。


「一人で大丈夫だと!? 吠え面かくんじゃねえぞ!」

「それはお前がだ!」


 お互い剣を抜いて斬り掛かった。

 おうおう、お熱い事で。


 私たちは二人が戦っている間に、クオと呼ばれた子に近づく。


「君がクオだね?」

「だっ誰…?」

「私はアリス。ウィルの師匠だよ」

「ウィル…の…?」

「うん、そうだよ」


 本当に臆病な子なんだね。


「なんで…?」

「ん? ウィルが私に弟子入りしたってことが?」


 私が問うと、コクコクと首を縦に小さく動かす。


「ウィルが君をこのPTから解放したいからかな」

「えっ…」

「さっきもウィルが言ってたでしょ? 君を解放するって」

「うん…」


 クオはチラッと戦っているウィルの方を見る。


「ウィルから聞いたけど、君は脅されて今のPTにいるって言ってたけど、本当?」

「それは…」


 クオは顔を伏せて口を噤む。


「違うならウィルは私に嘘をついてたってことになるよね?」

「ウィルはそんなことしない! …っ!」


 彼女ははっと口を抑えた。

 その様子を見てふっと私は微笑んだ。


「もう一度聞くよ? 君は今のPTにいたい?」


 彼女は首を横に振る。


「じゃあ、君はどうしたい?」

「ウィルと…いたい…」

「なら、顔を上げてウィルの戦いを見なきゃね」


 私は彼女の頭に手を置いてゆっくりと擦る。

 どうやら決着がつきそうだ。


「テメェ! なんでこんなにっ!」

「はぁぁ!」


 ウィルの薙ぎ払いの一撃で、相手の子は持っていた武器を吹き飛ばされてしまう。

 そしてウィルは剣を相手の喉元の前へと突き立てる。


「俺の勝ちだ! クオは解放してもらうぞ!」

「くっそがぁっ! お前ら! やっちまえ!」


 相手の子の命令で、周りにいた三人の男の子たちがウィルに襲い掛かる。


「きゃっ!」


 クオは咄嗟に顔を手で覆って、これから起こるであろう事から目を背ける。


「なっ…!?」


 誰が呟いたかわからないが、ガキンっという音とともに辺りが静かになった。

 クオは恐る恐る目を開けて目の前の光景をゆっくりと見た。

 そこには、バックラーと剣で後ろから襲ってきた三人の攻撃をピンポイントで防いでいたウィルの姿があった。


「お前何で後ろからの攻撃にピンポイントで反応できんだよ!」

「別に大した事じゃない。後ろからの攻撃程度、何百回も受けてるからな」

「なっ!?」


 ふふふっ。

 驚いてる驚いてる。


「あぁ…。お姉様が悪い顔をしている…」

「でもあのスキルがなくても、後ろからの攻撃は一杯食らってたし。第三陣のAGIぐらいなら、なおさら余裕」

「えっ…? えっ…?」


 おっと、クオが困惑してる。

 仕方ないから説明してあげよう。


「ウィルが一週間前に私に弟子入りしてきたのはさっき説明したよね?」

「はい…」

「そこでウィルに教えた事として、特に特別な事は教えてないよ」

「でっでも! 特別な事を教えたからあんなことをっ!」


 うん、確かに特別な事は教えていないよ。

 特別な事はね。


「アリスがやったのは、ただひたすらに実戦をしてただけ」

「実戦…?」

「そう。第一陣と第二陣からの実戦演習。その中にはトップランカーもいた」

「えっ!?」


 まぁ私がお願いして銀翼やアルトさんたちにお願いしたんだけどね。


「武器だけ初期武器にしてあとは全力」

「あんな講座もうこりごりですよ…。何度ウィルが可哀想に思えたか…」


 時間がなかったんだから仕方ないじゃん。


「と、そんな感じで訓練してたらウィルがあるスキルを手に入れたんだよね」

「あるスキル?」

「そのスキル名は【制空】。要は空間把握のスキルだね」


 自身の腕の届く距離までの空間を確実に感知することができるっていう感知系スキル。

 いわゆる間合いを認識できるってことだね。

 そして元々ウィルが持っていた【察知】スキルにより、更に感知範囲は広がる。

【感知】スキルと効果が被るかもしれないけど、【制空】スキルはより近い範囲しか感知できない分確実性は増すし、より実戦向きのスキルだ。

 それに、ウィルが自分で手に入れたスキルだ。

 そういうのは今後もウィルを助けてくれるはずだ。


 そんなこんなで説明している間に、ウィルは他三人も制圧していた。

 まぁこれでウィルの力はわかっただろうし、もう大丈夫かな?

 そう思った時、私たちが来た道から声が響いた。


「おいリョータ、何遊んでんだよ」

「にっ兄ちゃん!」


 後ろから十二人程のプレイヤーが現れた。

 その内の一番前の男がどうやらいじめっ子の兄のようだ。


「まったく、何一人相手に四人で負けてんだよ」

「だっだってこいつ!」

「あーもういいわ。あとは俺らがやるからさっさとどいてろ」

「うっうん!」


 リョータと呼ばれたいじめっ子たちは、兄の言う事を聞いてその場から逃げる。


「俺の弟が世話になったようだなぁ」

「くっ…!」


 男たちはゆっくりとウィルに近づいていく。

 ウィルは流石に無勢と感じたのか、ゆっくりと後退する。

 そんな二つの勢力の間に私たち三人が入った。


「おい【首狩り姫】。邪魔だ、どけ」

「弟子の戦いに師匠は手を出さないけど、あなたが手を出すなら私たちが手を出さない理由にはならない」

「テメェ…」


 男たちは武器を抜いて構える。

 私は後ろを向かずにウィルに声を掛ける。


「ウィル、危ないからクオの側にいてあげて」

「師匠…」

「大丈夫だよ。だからほら、早く」


 ウィルは私の言う通りにクオの側にいく。

 私はそれを確認して脇差を抜いてレヴィを呼ぶ。

 ルカと海花も各々のペットを呼ぶ。

 黒花、蒼花、藍花、白花、銀花、アレニア、レヴィ、そして私たち三人の十人が揃った。

 さて準備も整ったし、始めようか。

 そして教育してあげなきゃね。

 人の恋路を邪魔する奴は首を斬られて地獄に落ちろってね。

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