迷路イベント②
「まさか本当にお姉様の言った通りになるとは…」
「ちゃんとした装備もちらほら見える。危ない」
確かに死に戻りが前提かもとは言った。
でもまさか開始十分経たずに、およそ百人近くが最後尾っぽい私たちの後ろから走ってきているとは思わなかった。
しかも初心者以外もってどういうこと…。
「なっ!? さっきはこの場所にはトラップはなかっギャァァ!?」
「トラップの場所が変わってっウギャァァ!?」
言った側から私たちを追い越して前を走っていたプレイヤーがトラップに掛かって死に戻っていた。
いや、そこは同じ場所に常にあるとは限らないでしょ。
例えば踏んだら別の場所に変わるとか…。
てか鉄球とか爆破トラップとか定番なのが基本なのかな?
しかも道が細かく分かれてるから結構難しいかも。
こういう場合は左手を壁に付けて進めば大丈夫とかと思うけど…。
「ひっ! 落とし穴っ!?」
「下にも階層あるなんて聞いてねえぞ!?」
こういった具合に下に落ちてしまう罠もあるっぽいので、そう言った手が使えなさそうだ。
むしろ転移もあるでしょ、きっと。
「それにしてもルカはよく罠の場所わかるね」
「【発見】スキル持ってるから、わかる」
「あなた自身が罠張りますものね。こういうステージは得意でしょうね」
あぁ、だから罠を踏まないように進めているのか。
今後の事を考えると、私も【発見】スキルを取っといた方がいいのかもね。
って、【解読】スキルの取得とレベル上げも忘れてた…。
今度上げておかないと。
ゆっくり進んでいると、逸れた道に『Rest』と書かれた看板が掛かっている木造のお店が見えた。
「Restって書かれているって事は、あそこは休憩所ですかね?」
「まだそんなに距離進んでないと思うけど…」
「たぶん第三陣用に、一定間隔で作ってると思う」
なら私たちは特にダメージも受けてないし、そのまま進めばいいよね。
この様子だと、生産施設も一定間隔でありそうだね。
そこからしばらく進むと、看板が地面に刺さっており、『5km地点』と書かれてあった。
ってことは、ここからPK解禁ってことか。
注意しないとね。
…って、なんか前が騒がしいな。
どうかしたのかな?
私たちはその騒ぎの元に近づいてみた。
すると、目の前には大きな穴のような空間が開いており、その先へ続く100m程の長さの橋が架けられていた。
一部の飛行可能なプレイヤーは、橋を避けて先に進んでいるが、どうしても橋を渡る必要のあるプレイヤーたちで橋は渋滞を起こしていた。
一応橋は何本か架かっているが、どうしてもプレイヤーの割合からして足りていないようだった。
「これは移動するまでに時間掛かりそうだね」
「そうですねー…。お姉様のレヴィと蒼花が協力して氷の橋を作るという手もありますが、たぶん殺到してきて壊れて落ちるのが予想できます…」
流石に落ちて死に戻るのは勘弁願いたい。
とはいえ、どうするかなぁ…。
苗を壁に植えて【急激成長】で行くという手もあるけど、下手すると周りを巻き込んで成長するからPK扱いにされかねない…。
どうするか考えていると、ルカがアレニアを召喚して何かを指示し始めた。
指示を聞いたアレニアは、天井に向けてルカが軽く抛ると、お尻から糸を出してぶら下がった。
そしてその糸を周囲の壁に貼りつけ始め、次第にアレニアが移動するための足場が完成した。
すると今度はその足場から下に、太めの糸を張り始めた。
私たちは何をしてるのかとアレニアの行動を見ていると、次第に足場のようなものが出来ていった。
そして最後にアレニアは自分の足場と、支えている壁の部分の糸を補強して戻ってきた。
「完成したし、いこ」
「…えっ?」
「まさかアレニアで足場を作ったの…?」
「蜘蛛の糸は意外に丈夫。あと、私のPTだからアレニアの糸が、ちゃんと見えるから大丈夫。戦闘の時は見えないように、色を更に薄くしてる」
確かに自分の糸に捕まったらどうしようもないからね。
そういう補正が掛かってるんだ。
「じゃ、いこ」
「うっうん…」
「ぐぬぬっ…ここでポイントを取りに来るとは…」
私たちは下に落ちないように気を付けながらアレニアの作った足場を歩く。
ルカの言った通りに、結構丈夫に作られており、私たち三人が乗っても全く揺れなかった。
この光景を外から見た人は、「空中を歩いている!?」「まさかあれは舞〇術!?」「知っているのかお前!」といった具合に話していた。
慎重に歩いていた私たちはようやく対岸に着いた。
それを見ていたプレイヤーが、私たちの後ろから追いかけようとアレニアの糸を探すように色々と何かをしている。
そして、見つけたプレイヤーは次の足場を探すようにゆっくりと歩いていたが、ぱっと見える様にする為か、【水魔法】か何かで糸に水を掛けた。
それを見たルカが「あっ」と声を出した。
「どうしたの?」
「アレニアの糸、水掛けると粘弾性一気に上がる」
「それってつまり…」
「ああなる」
ルカが指を指した方を見ると、先程まで張りつめていた糸が、急にたるみ始めて上に乗っていたプレイヤーが足を取られる形で転んでしまった。
そしてもがけばもがくほど、糸が体に巻き付いてしまっていた。
「せっかく粘着性のないの作ってもらったのに」
「えーっと…あれはどうすれば…」
「乾くまで待つしかない」
「いっその事死に戻らせてあげた方がいいんじゃ…」
見たところ一人では済まず、十数人ほどが動けずにいるようだった。
自然に乾くのを待つと、かなりのタイムロスになるだろう。
それならまだここで死に戻りして復帰した方が早いかもしれない。
「まぁ今なら水を掛けたことで強度が弱まったと言い訳できますし…」
「でも流石にアレニアが移動したら私たちがやったってバレると思うけど…」
「それならだいじょぶ。アリス、私を周りから見えないように抱きしめて」
「えっ? いいけど…」
私はルカに言われた通りに、周りから着物で見えないように隠す。
するとルカはアレニアを左腕に乗せ、その腕を噛ませた。
びっくりして離れそうになったが、ルカの右手が私を抱きしめていたため離れられなかった。
そしてルカの左腕から呪印のようなものが浮かび始め、ルカの半身に広がっていった。
「準備できた。アレニア、お願い」
ルカが指示すると、アレニアから小さな白い蜘蛛が複数体召喚され、糸を伝って移動をし始めた。
小さくて少し離れると見えなくなるが、しばらくすると糸がミシミシと音を鳴らし始めた。
おそらくあの子蜘蛛が糸を切っているのだろう。
そして薄くなったことで強度が下がったのか、糸に絡まっていたプレイヤーたちがそのまま落ちていった。
えーっと…また最初から頑張って…?
「相変わらずアレニアの能力開放はえげつないわね…」
「海花はアレニアのこれ知ってたの?」
「一応知ってます。正直ドン引きでしたけどね」
「私としては黒花の方が恥ずかしくて死にたくなる」
二人ともなんでお互いのペットの解放条件知ってるの…。
私には教えてくれてないのに…。
「あっ! お姉様に内緒にしてたわけではなくただ単に言うタイミングがなかっただけというかっ!」
「アリス、ごめんね。言ってなかった」
「うん…」
いいもんいいもん…。
って、ルカの呪印のような痣がいつの間にか消えてるけど、あれって痛くなかったのかな?
「ルカ、とりあえず今のがアレニアの能力開放だけど、あれってなんなの?」
「えっと、飼い主に病と毒の状態異常付加して解放」
「んっ…?」
「だから【病耐性】と【毒耐性】ないと死ぬ」
解放したら死ぬの!?
アレニア怖くない!?
「それって大丈夫なの…?」
「もう慣れた」
「慣れって…」
そんな慣れるものなのかな…?
「とりあえず先いこ」
「そこ流していいところなのかな…?」
「お姉様…それについては本人が気にしてないので諦めましょう…」
「うっ…うん…」
ルカは私から離れて先へと進むため、私たちは慌てて追いかける。
てかルカって結構タフなんだね…。
あんな状態で平然とできてたら、人見知りの方とか大丈夫だと思うんだけどなぁ…?
「はぁ…。やっぱり類は友を呼ぶってことなのですかねぇ…」
「海花ー、置いてくよー」
「あっ! お姉様待ってくださいっ!」
以前の話のあとがきにも書きましたが、今月と来月頭まで忙しいため、その間の更新は週一程度になりそうです。
楽しみにお待ちしておられる方には申し訳ありませんが、ご了承ください。




