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5話 門前払い?

「すごいな…こいつは」


目の前に立ちはだかる4mはゆうにこえる門を見上げて俺は思わず呟いた。


それをみたフィオネは呆れたように溜め息をつく。



「まったく…こんなこどでいちいち驚いていては、ストラギウスに入ってから身が持たんぞ?」



「いや、しかしこんな大きな扉を作る必要があるのか?」



「敵が攻めてきたとして簡単に突破されては困るだろう?」



フィオネはそう言うと、門の近くにいた門番らしき男に声をかけた。



「失礼。ギルドの者なのだが、中に入れてもらえないだろうか?」



門番はフィオネに気付くと、顔を少し歪めた。



(あれが…)



獣人差別。


俺は別に普通だったがやっぱりあるもんなんだな、と思った。



「証明書は?」



男は口を開くとボソッと呟いた。



男の返答にフィオネは少し困った顔をする。



「道中で少しいざこざがあって…証明書はその時に…」



「では無理だ。入れることはできん」



フィオネが喋り終わる前に男が言った。



「頼む…!ギルドに取り次いでさえくれれば…」


懇願するようにフィオネは言ったが、男はまるで応じようとしない。



「証明書がなければ入れることはできん。ましてや獣人などはもってのほかだ。何をするか分からんからな」



今まで黙って事の顛末を見守っていた俺だが男の今の言葉で少し頭に血が登った。



「おい今の言葉、取り消せ」


俺は男の胸ぐらを掴むとドンッとドアにぶつける。



男は苦しそうにして、口を開く。



「貴様ッ…!!この女の連れか!!」



「それがどうしたんだよ…」



「フンッ…やはりな、獣人の連れは野蛮人なんだなッ…」



「なんだと…!?」



男の言葉でさらに俺は怒ると、男の首をさらに締め付ける。



「やめなさいな」



後ろから女の声がする。フィオネの声ではないのは確かだ。



俺は男の胸ぐらから手を放すと、声のした方向を振り返る。



そこにいたのは、多分俺より二つくらい歳上の女だった。くるくる巻いた栗色のきれいな髪。女は大して着飾ってはいなかったが、気品の溢れる顔立ちから分かるように、恐らく貴族だろう。



俺の腕から解放された男はゴホゴホと咳をしていたが女に気付くと声を上げた。



「何者だ貴様ッ…」



この女が声をかけて助かったのに、どうやらこの男、礼儀というものに縁がない生き物のようだ。



「あらら。助けてあげたのに随分と生意気な人。最近の門番はこんな感じなのかしら?嫌な感じねぇ」



女はやれやれと言った感じで、手を振ると急に真面目な顔になる。



「私の名前は、アレストロメイア・ローズ・ストラギウス。自分の国の王の娘の名前と顔くらい覚えておきなさいな」



女の言葉に門番の男はハッとするととっさに地面にひれ伏した。



「ま…まさか王女様でおられたとは…」


王女とやらが、町の外にいるのも驚きだが、この男、自分の国の王女を知らないとは…。



「無礼を働いた事をどうかお許しください」



さっきの傲慢な態度はどこへいったのか、男はペコペコと何度も地面にキスしている。



女はそれを見て考え込むような顔をしていたが何か思いついた顔をすると、口を開いた。



「そうねぇ、別にそれは構わないのだけれど…この子に謝ってくれないかしら?」



そう言うと、フィオネの肩に両手をポンと置いた。



フィオネは戸惑っていたが、


アレストロメイアは構わずに話を進める。



「さ、謝りなさい?」



門番は困ったように顔をしかめる。



「しかし、それは獣人…」



「それ以上言ったら……殺すわよ?」



アレストロメイアは陽気な態度から打って変わって冗談とも本気とも取れない顔で凄むと男はすぐに謝った。



「すいませんでした。ごめんなさいぃ!!」



男はもう地面にキスどころか額に血がにじむ位頭を地面を打ちつけて叫んだ。



「…と、こいつはほっといてと」



アメストロメイアは門番からこちらに向き直る。


「悪いわね。うちの国の者が無礼を働いて」



アメストロメイアは言いながら苦い顔をした。



「ああ…いや、こっちこそ、あんたが止めてくれなきゃ、そのおとこぶっ飛ばしてたかもしれなかった。ありがとうな王女様」



俺は手を出してアストロメリアに握手を求めた。



それをみたフィオネは青い顔をすると俺を引きずるように引っ張り、俺は少し離れたに連れてこられた。



(痛ったいな。何すんだよ。背中の皮剥けたね今の)



(お前は馬鹿か!?相手は王女だぞ!?もうちょっと礼儀ってものを…)



(だから俺は畏敬の意を込めて王女様と呼んだじゃないか)



(言葉遣いを直せ、言葉遣いを!)



(いいじゃないかそれくらい…)



(それに気軽に握手を求めたりするな!下手したら首が飛ぶぞ!)



(王女ってそんなに怖いものなのか…)



「あらぁ、心外ねぇ。そんな怖いものじゃないわよぉ」


「!?」


俺達がいがみあっている間にいつの間にかアストロメリアは俺達の間に入りんで、ニコニコしていた。



「それに私の名前は王女じゃなくてアストロメリアよ。メリアって呼んで頂戴な。良ければあなた達の名前を教えて頂きたいのだけれど…」



そうだ。一連の出来事で名前を名乗る事が出来なかった。



「ゴアス村のルイ・ヴェルヘンだ。仮を作ったな」


「いいわよそんなの…それにしてもゴアス村から……遠い所からわざわざようこそ、ヴェル。そしてよろしくね」


メリアはそう言うと俺に手を差し出してきた。



俺はフィオネの言った[首が飛ぶ]が少し怖かったが、このまま受け取らない訳にはいかず素直にその手を受け取った。



「よ、宜しく」


結局何も起こらなかった。


メリアはフィオネの方に体を向けた。



「あなたの名前も教えて頂きたいわ」



「わ…私!?あ…あの…ふ…フィオネ・ツォーレと申しますっ…」



「フィオネ…いい名前だわ。宜しくね、フィオネ」



差し出されたメリアの手に戸惑いながらも、恐縮ですやらなんたら言いながらも、フィオネは握手に応じた。


少し焦ったがフィオネの首は飛ばない。



「……飛ばないじゃないか」



「え?」



何をいわれたのか分からない、というような顔をする二人。



「首、飛ばないじゃないか!」



ぶっ、と吹き出して二人に笑われて意味を教えられた時は死にたいと思った。

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