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3話 試練と旅立ち


ゴアス村から少し離れた荒野に2つの影があった。



一方は村の村長ノア。手には槍を持っている。



もう一方は村人のルイ。ルイの手には木製剣。


そして遠目から戦いを眺めるマリナ。



ノアとルイお互い一歩も動かずににらみ合っている。



「ひとつ聞きたいんだけど…」



沈黙を破ったのはノアだった。黙り込んでいたルイも口を開く。



「なんだ」



「あたしゃあんたのために、木製じゃない、ちゃんとした剣を用意したってのになんでそんなん使ってんだい?」



「なんでって…本物の剣を使ったらノアが怪我するだろ?」



あっけからんと質問に答えると俺は木刀を握る力を入れ直す。



それを見ていたノアはしばらくキョトンとしていたが何かがきれたのか突然笑い出した。


「ぷっ…アッハハハハハハハハ!!…全くあたしもなめられたもんだ。いいよ、あたしが実戦ってもんを教えてやる。」



そういってノアも槍を握って構えに入る。



その瞬間ノアが消えた。


いや消えたように見えた。


(早い……!!)



ノアは目にも留まらぬ速さで俺の懐に潜り込み、俺の喉めがけて槍を入れる。



「ルイッ!」



それを見ていたマリナが悲鳴をあげる。



「…フン」



「なっ!?」


カンッ



俺は喉に突き刺さる寸前でノアの槍を木刀で弾くと、逆にノアの喉に木刀を添えた。



「一本……かな?」



笑みを浮かべて言うと、ノアは冷や汗をかいて、口元に苦笑いを浮かべる。



「…あんた…いつの間にこんな…」



「実戦じゃ人は死ぬっていったな。ノア手加減してたろ。喉に刺さる手前で槍の勢いがなくなってた」



ノアは確かに速かったが、俺にとっては見切れない程ではなかったし、槍が俺の命まではとろうとはしないのも分かった。


「全く、見切りなんてどこで覚えたんだか…」



ノアはため息をつくと、すぐに冷静な顔になる。



「分かった。あたしも本気をだすよ」



「何言ってんだよ、この状況で抜け出すなんて無理だよ」



俺は笑って答える。

ノアは暫く黙っていたが、



「どうかな……」

そういってノアはにやりと笑うと、目を閉じた。


するとノアの体がぼうっと光始める。



「…炎よ!」



そうノアが叫んだ瞬間、俺の体に焼けるような痛みが走った。



とっさに後退したが俺の着ていた服の先は墨になっていた。



「…驚いたぜ。まさか魔法を使うとは。それも詠唱なしで…」



この世界で魔法とは一般的に使われるものだが、普通魔法を発動するには世界の理から外れた力、マナと呼ばれる地球の命、世界の万物の源とも言える力を地球から借りるために、詠唱をしなければならない。

だが今ノアは詠唱もなしに魔法を発動した。



「エルフの特権さ。あたしたちエルフの一族はマナと一番近い存在って言われててね。詠唱しなくてもマナの力を引き出せるんだよ」



ノアはそう言って得意げに鼻をフフンと鳴らした。



「ったく……魔法使いってのは口さえ封じちまえばどうにでもなると思ったんだけどな…」



俺は頭をポリポリ掻いて、ため息をつく。



「めんどくせぇ……一気にかたをつけてやるよ」


俺の言葉を聞いたノアは笑った。



「威勢がいいのはいいけど……それはこっちのセリフだよっ!!」



ノアがことばを発したと同時に、無数の火の玉が俺に襲いかかる。



俺はそれをよけ、ノアに近づく。



「ほぉ~…こいつをよけるとは中々…だけどこれはどうかな!?」



ノアは更に大きな火の玉を作ると、俺の方に飛ばしてきた。



俺は木刀に力を込めて木刀を振り下ろし炎を斬る。



ボワッ



途端に火の玉がボールを縦に切ったように真っ二つになると、すぐに地面に落ち消えた。



「なんて奴…!」



流石に焦ってきたのか、ノアは詠唱に戸惑っている。



「その隙は見逃せないな」


俺はノアの前に踊り出ると、すぐに飛びかかった。



「んー!んー!」



とりあえずノアの口を塞いでみたが、さっきのエルフの説明の通り詠唱が必要だとしたら意味がない。



でもなにもしないよりマシだと思い俺は続けた。


「……」



ノアは暫くもがいていたが、諦めたのかピタリと動かなくなった。それに心なしか顔が赤くなっている。



(まさか窒息!?)



俺はノアの口から手を離すと、ノアに呼びかける。



「大丈夫か!?ノア!」



「だ…大丈夫だよ…別に…」



ノアは起き上がったがまだ息しずらいのかまだ顔が赤い。



「顔赤いぞ?本当に大丈夫か?」



ノアを傷つけたとなれば、女子供を傷つけないという俺の理念が壊れる。それにノアは口喧嘩は絶えないが俺やマリナの大切な家族のようなものだ。何かあったら本当に一大事だ。



「本当に大丈夫だってば。まったく……本気を出してんのに、餓鬼に一本取られるとはね」



口元に笑みを浮かべながら、ため息をつく。



「いつからあんなに強くなったんだい?見切りなんて、この村じゃあ、使えるのはあたしぐらいだよ?」



ノアはぱっぱとと服の埃を手ではらいながら立ち上がって俺に聞く。



「ずっと見てたからな。あんたの事」



ノアが立ち上がったのに対して俺は座りながら答える。



「【見てた】?……あんたまさか、見てただけであんな技…」





俺は小さい頃からノアの事をずっと見ていた。



ノアの戦う時に使う剣技や身のこなしをずっと見ていた。



「ま、使ったのは今日初めてで、見様見真似だけどな」



ノアは暫く口を開けて呆気にとられていたが、すぐに気を取り直した。



「あんた…見様見真似って、何者だよまったく…」




呆れたのかため息を付いて、肩を落とす。



そして座っていた俺に手を差し伸べるとこういった。



「合格だよ。いいよ、あんたならどこ言っても通用しそうだ」










--------



「--忘れ物はないね?」



俺にバッグを渡してノアは言う。



「気を付けていくんだよ」



「気を付けてね、ルイ」


「ああ、お前も風邪とか引かないようにすんだぞ、マリナ」



昨日の勝負の後、俺は晴れて村の外にでることを許された訳なのだが、マリナだけはノアが旅立ちは許さなかった。



マリナは何回もノアに頼み込んだが、まだ身を守る術もない女が、男に付いてっていっても足手まといになるだけだと言われようやく諦めた。


そしてこうして見送りに来てくれたわけだ。



(まあ俺としては村に残ってくれた方が気が楽だしな…)



「すぐにルイに追いつくから、待っててよね?」


そういってマリナは俺の背中をとんと叩いた。



「保証はできないけどな」



俺はバッグを背負うと、村の門に手をかける。



そこでノアが俺に声をかけた。



「所で行く宛はあんのかい?」



「ああ、ストラギウスのギルドに行こうかって思ってる」



ストラギウスとはここから山一つ超えた所にある城下町だ。



そこはストラギウスの王の王城の下、人が沢山住んでいてとても賑わっているらしい。



そのストラギウスのギルドとは簡単に言えば人助けをして儲ける所だ。



人が集まれば必ずそこには何かしらの問題が発生する。その問題をそれを解決するのがギルドの役割であり、人に危害を加える魔物の駆逐、遠出する貴族の道中の護衛など、常に危険と隣合わせの仕事だ。



なので、ギルドには武術に自信のある武者が集まる。



俺がそこに行きたいのは仕事をこなす上で色々な所を回って世界を知りたいからだ。(無論腕っ節にも自信があるからでもあるが)



「やっぱりギルドね。まあ、なんとなく予想はしてたけど…そうだ、ストラギウスに着いてギルドに行ったらこれを渡すといいよ。はいこれ。」



ノアは持っていた紙を俺に渡した。



「なんだこれ?」



紙にはなにやら難しい言葉がつらつらと書いてある。



「まあこいつを受け付けに出して、ノアからだーって言えばいいからさ」


俺は貰った紙をバッグに詰め込むと、改めて二人に背を向け、歩きだす。


「ここはあんたの家だから~!!いつでも戻って来るんだよ~!!つか一回位帰ってこないとのろいころすかんね~!!」



「すぐ追いつくから~!!ギルドの仕事で死なないでよ!!」



二人の不吉な言葉の混じった見送りに俺は片手を上げてそれを返した。

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