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4話 人には誰しも居場所がある

——追放直後 ハフリ

 シグマが店を出た直後だった。

「良かったんですか? シグマくんにあんなこと言ってしまって。」

 ハフリが侍らせていた女が言った。

「何が言いたい?」

 ハフリはその女を睨みつけ、そう言った。

「い、いえ。なんでも。」

 ハフリは出口を見て口角を上げる。

「やっとこれで邪魔者が消える。」


 ——現在 迷宮都市パンドラ シグマ

 そんな、ユリウスさんがなんであんな……。なんで女を。

 そうだ。人違いだ。

 いや、そんなはずがない。僕が他の人とユリウスさんを間違えるわけがないだろ。

「どうした? 兄弟。」

 隣で鎧を着た男がそう言った。

「明日、同じ時間に総括ギルドの前で会わないか?」

 鎧を着た男が首を傾げる。

「何言ってんだよ。今から飲もうぜって。」

「ごめん。それは明日にしよう。」

 僕はユリウスさんに向けて足を踏み出した。

 確かめてやる。僕の英雄を。

「……ユリウスさん。なんでこんなところで、こんなことを。」

 はっきり言うつもりだった。何をしてるんだ、って。横の女は誰だ、って聞くつもりだった。

 なのに、声が出ない。

 ユリウスさんがトロンと落ちた目で僕を見る。

「あぁ? 誰だよ。お前。」

 その瞬間、僕の中で何かが切れた。

 鼻を刺激する食べ物の匂いが、神経を逆撫でする。目の前の男に腹が立つ。僕は拳をいくら握りしめても足りない気がした。

「しん……じてたのに。」

 僕は一歩また一歩と足を運び潰れた男の前に立った。

「ち、ちょっとなんなのあなた?!」

 横の女が口を出す。

 うるせぇよ。喋んなクソアマが。

 僕は痛いくらいに握りしめた拳を振り下ろした。

 固いものに当たる感触が拳に響く。人間を殴った感触ではない。

 目の前には一枚、板のような結界が張られていた。

 視界にはさっき口を出した女の腕が伸びるのが映る。頭の中に稲妻が走る。

 直後、僕は無意識にそれを掴み取る。

 握りつぶしてしまいたかった。

 ユリウスさんから拾われたときから剣を握ってきた。細い腕、容易い。

 腕に力を込めた瞬間、酒の匂いが鼻を刺す。一人の女の支えがなくなり、地にしりもちをついた男から漂う匂いだ。

 ——もういいや。

 僕は掴んだ女の腕から力を抜き、弾くように放った。

 僕は男に視線を向ける気も起きなかった。背を向け歩き出す。

 行く当てもない。僕にもう居場所なんてないのか。

 これからどうしようか。

「待って。」

 女の声が背中に響く。

「もしかして、シグマくん?」

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