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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第1章 高校時代

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4/17

きっかけが難しい

「新入生!注文してた道着できたから各自試着してみて」

放課後、弓道場に集まると先輩からのひと声。

「やったぁ!」

今までジャージだったから、皆大喜び。

男女それぞれ部室に別れ、着方を教わりその姿で再度集合。


「どぉ?」

「似合ってるやん」

「かわいい♪」

おたがいにほめ合う、調子のいい女子新入部員たち。

「男子はまだなん?」

「こういう時男子のほうが早そうなのにね」


噂をしていると、男子3人が後から登場。

「大珂くん背が高いから映えるね!部のSNSに出てよ」

女子の先輩たちが浮き足立つ。

美久も振り返ると…


ドキッ


初めてみる、白の道着と紺の袴姿の幼なじみの姿。

不覚にも、いつもと違う姿に見とれてしまう。

 

「3人ともよう似合ってるやん。美久は…馬子にも衣装ってやつ?」

「何それ!どういう意味よ〜」


あははっ


屈託なく笑う明るさ。

太陽みたいに眩しい。

つい目で追ってしまう。


それをみて、洋子もまゆみもははーん、やっぱり。

と言わんがばかり。

にやっと微笑む。



練習後。

新入生は片付けと掃除を行うのが通例だ。

先輩たちの放った矢の回収や手入れをしながら、洋子は美久に問いかける。

「お昼休みの宿題さ、もう聞かなくても答えわかるよ」

「どういう意味?」

「今日道着姿の大珂くん、ずっと目で追っかけてたやん」

「あ、あれは…ただ珍しいっていうか…ああいうの小学校の時の盆踊りの法被くらいしかみてないし」

「ふぅーん、ずっと昔から大珂くんのことみてるわけだ」

「そ、そりゃあ生まれた時から一緒にいるようなもんやし」

「でもいいの?ずっとその幼なじみっていう立ち位置で。おたがいもう子どもじゃないんやし、一歩踏みこまないと何にも変わらへんのとちゃう?」

「そうだけど…だから尚更タイミングが難しいよ。何かきっかけがないと」




誰かを好きになるきっかけ



ずっと側に居るのが当たり前と思っていた人を

特別視するのって


どういうとき

どんなタイミングなんだろう



うまく、説明できない



一番今の自分に当てはまるのは


いつの間にか、とか


ふとした瞬間、とか


ほんと曖昧なもので



きっかけは


高校生になったとか


制服が大人っぽいとか


背が伸びたとか


思春期で異性に関心が湧くようになったとか


たくさん理由付けできるだろうけど



そんな不確かで


曖昧な関係だからこそ



ただの幼なじみから


脱却するにはどうしたらいいのか


はたまた違う関係性を築けるのだろうか



もしかしたら大珂は私のこと


単純に幼なじみとしか思ってない可能性も大なわけだし


あぁやって女子の先輩たちからもきゃあきゃあ言われて


結構人気者で(洋子やまゆみに言われないと気づかなかった私もあほやけど)


もしかしたらそろそろ誰かに告白されちゃったりして


別の誰かとつきあうかもしれない。



そしたら今みたいに一緒に登校もできなくなって、


大珂の家でごはん食べたりも気まずいからしなくなって


よそよそしくなって

(もしそうなったら部活やめちゃうかも私)




………




いやだ



そんなの



ぜったい




大珂の隣に、私はずっといたい




そのためにはどうしたらいいんだろう?




悶々と道場を掃除しながら、思い悩む美久だった。







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