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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第4章 離れ離れ

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会いたい気持ち

コロナの療養期間が終わったが、大珂は引き続き体調不良に悩まされていた。


味覚障害や記憶障害、全身の倦怠感や頭痛。

コロナによる後遺症が出る場合もあると、連日報道されている。

日々退屈なのもありテレビばかりみて過ごしているので、情報だけは頭に入ってくる。



なんで自分ばかりがこんな目に…



腹ただしさと、やりきれなさがこみ上げてくる。


大学なんてほとんど行けてないが、あっという間に夏休みに入った。



坂越に帰ろう



新幹線の切符を手配し、7月後半帰省予定。



みんなに会いたい



あんなにケンカばかりしていたクソ親父とも、

おかんとも、

高田のおじさんとおばさんも、 

弟の海斗も


そして何より


美久に会いたい。



荷物を受け取ったあと、声が出せないのでお礼メッセージだけ送った。

その後体調が悪化しコロナ病棟にしばらく入院したこともあり、やりとりが途絶えてしまった。


間隔が空くと、次どう言って連絡しようか迷ってしまう。



いや、これはもうサプライズで帰ろう



別に自分の家やし、いつ帰ってもいいんやから。

美久だって地元おるんやから、坂越に戻ったらいつでも会える。



久しぶりの再会


思いきり美久を抱きしめたい


そして今のオレの想いを、ちゃんと伝えたい


やっぱり、オレには美久しかおらん


大好きやって



離れて初めて気づいたんだ


ずっと一緒にいたあの時は、正直重いと思ってしまった。


それは美久の想いやったり、自分で何も考えんとオレのあとをついてくるあまったれなところが。


女の子とつきあうのも初めてやったし、オレは美久にかっこいいとこ見せたいとか、彼氏やったらこうでないととか、無意識に気負い過ぎてたんやと思う。


でもそんな弱音や本音は見せたくないから、ふざけたおちゃらけキャラを演じていた。

せやから、男同士のほうが気ぃつかわんで楽やなってなって、美久を避けてもうた。



だって



オムツはいてる頃から知っとんのに


鼻水垂らしてよだれ流して泥団子こねて遊んでた頃から一緒なのに



あんなにかわいくて、きれいになって


ずるいやんか



スタイルもいいし顔だけやなく性格もほんまにええし


誰にでも分け隔てなく優しくて、にこにこ笑顔がかわいくて


料理もお菓子作りもめちゃめちゃうまいし


心がきれいやから巫女さんもピッタリで



キラキラしてまぶしい、宝物みたいな彼女



オレは偏屈に拗ねてもうて不良のまねごとみたいなんでかっこつけて


そんなオレでも、好き好きいうてくるんやから


美久と向き合うことから逃げた、臆病ものな彼氏のオレ



でももう、絶対逃げへん


二度と、美久を傷つけない。




意を決して東京駅から乗った東海道新幹線。

富士山を横目に、一目散関西へ。



美久の好きな甘いもん買ったで


東京バナナの限定キャラメルバナナ味


彼女の喜ぶ顔がみたいと、心底思う



相生から赤穂線に乗り換え、坂越を降り駅からの道をまっすぐ歩く。



あぁ…なつかしいな



千種川の向こうの茶臼山。

夏の濃い緑がまぶしい。


海が、近づいてくる。

風がほんのり、潮風に変わる。



この空気だ



東京とは違う、心地よい瀬戸内の風。

からだも細胞も覚えてる。



まだ体力が完全に復調しておらず、荷物を持って歩くと息がきれる。

それでも、この道を歩きたかった。

美久との思い出を、かみしめるように。




ピンポンピンポンピンポン 

「ごめんくださーい、ハァハァ…」


パタパタパタパタ


軽やかなスリッパの音とともに、美久母高田家玄関に登場。


「あら!大珂くんどしたん!体調大丈夫?コロナなったんでしょ?大変だったわねぇ、東京は人口多いからねぇ」

止まらなくなりそうな世間話の挨拶を遮り、尋ねた。

「おばさん!美久は?」

「美久?今おれへんけど…何も聞いてないん?」

「そしたら畑のほう?そっちに行かしてもらうわ」

「ちゃうねん、赤穂のみかん畑やなくて…愛媛行っとんねん」

「はっ!?」

「おばあちゃんが転んで足ケガしてもうて…みかんの木の手入れに大事な時期やから」

「うそやん…」



せっかくここまで来て


絶対会えると思ってたのに


まさかの肩透かし。



自宅に戻る前に、海辺の遊歩道へ向かう。



この場所だ



オレが東京に行く日


美久は言った。


ここで、ずっと待ってるって



「風待ち港で待ってる言うたくせに、おれへんやんかーーーーーっ」



ハァハァ…ケホッ


肺活量も衰えているので、叫んだとて息が続かない。



トボトボ…と肩を落とし、若松家へ。


「ただいま」

「えっ、はっ?大珂?よかった!生きてたん??」


おかんよ…他に言い方はないんか


「ちょ、おとーさーん、大珂が帰ってきたわ!もう、帰るなら帰るって連絡してくれたらいいのにっ。ごはんの準備してへんで」


家族のバタバタに見向きもせず、自室でフリーズ。

出ていったまま何も変わっていない。


美久との思い出がつまった部屋。

誕生日のお祝いもしたし、ここでキスして、抱き合って。



あぁ…


抱きしめたかった…


この手で


あの長い髪に触れ


白い陶器のような美しい肌に


ほほに


艶のある唇に


キスしたい



…いや


キスはまだやめとこ


この体調やし



1日も早く会いたい


大珂はいてもたってもいられなかった。







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