ライバルは後輩男子
冬が過ぎ、春。
JR坂越駅前は桜並木だ。
高校2年生になった大珂はある日、満を持して両親に打ち明けたい思いを話した。
バーンっ!
ビクッ
これにはたまたま廊下を通った弟海斗もビックリ。
「誰がそんなこと許すかっ」
「…たぶんそう言われると思ってたから」
道理で動じていない。
「別にすぐ許してもらおうとは思ってない。時間かけて説得するつもりやから。とりあえず知っといてほしかっただけ」
そう言うと気にすることもなく2階の自室に上がった。
「あなた…」
「あいつのことや。いつもの気まぐれに決まっとる」
「美久ちゃんこのこと知ってるのかしら…」
「なんで隣の美久ちゃんがここで出てくる?」
「あの子たちつきあってるでしょう」
「はぁ!? いつから??」
「去年の秋くらいかしら。急に雰囲気が変わったっていうか…。あなたまさか知らなかったの?」
「そ、そんなん、昔から幼なじみとして仲良かったから…いつも一緒におったしな」
「ほんと鈍いわね」
こういうこと、女親は鋭い。
「まぁ気ぃ変わるやもしれんし、まだ口外せんとこか」
「そうね、ヘタに心配かけたらいけないし」
大珂と美久は、つきあい始めてから半年が過ぎた。
クラス替えでは、また同じクラスになれずに意気消沈する美久を彼氏は頭ポンポンで慰めた。
弓道部は新入生が男子3名入部。
その中のひとり、田原はなぜか大珂になつき、部活以外でもちょろちょろつきまとっていた。
当然美久はおもしろくない。
自分のポジションだった大珂の隣を、しょっちゅう明け渡すようになっていた。
デートの誘いも
「1年生らとボウリング行ってくるから」
「田原に勉強教えてやるから」
優先順位が変わっていく。
ゴールデンウィーク中、美久は洋子とまゆみを誘って女子会。
気分転換に学校近くのカフェでスイーツ食べながらの恋愛相談。
「確かに、いくら大珂面倒見いいからっていっても、田原くんのくっつき虫はちょっと異常だよね」
「そうやろ!? 私が大珂といると間割って入ってくるんよ??」
「もしかしてあれかな…田原くん男の人が好きなんじゃ…」
「あー、そんな感じだよねー」
「じゃあもしかして私恋敵と思われてるのかな??」
「ま、でもあれちゃう?男子って男同士でつるんでるほうが気が楽って時期あると思うよ?うちもともぴーそんな感じやから」
まゆみと智之はいい関係でありながらも、おたがい伸び伸びとそれぞれの時間や交友関係も大切にする、サッパリオトナのようなつきあいらしい。
「美久ちゃんは大好きな大珂くんとずっとずっと一緒にいたいタイプなんよね」
洋子の言葉に、うなずく。
「子どもの時から…ずっとそれが当たり前やったから」
「しばらく様子みてみたら?ほら、大珂も反抗期なだけかもしれへんし」
「そうそう、今は美久ちゃんもこうやって女子会楽しんだらいいやん。さみしい時は私話し相手になるし。別に卒業してもふたりとも地元いるんでしょう?これから先も安泰なんやから、たまにはおたがい息抜きしたら」
「うん…そうやね、ありがとう。まゆみと洋子は卒業後はどうするかもう決めてるん?」
「うちは調理の専門学校行って調理師免許とるつもり。いずれは店継ぎたいから」
「私は写真の専門学校行って、カメラ関係の仕事に就きたいな」
「みんなすごいな…ちゃんと考えてる」
「美久ちゃんも、農家の仕事継ごうと思うなんてすごいよ」
「だってね、おばあちゃんが愛媛でみかん畑やってるんやけど、海の近くの斜面一面みかん畑で、青い空と海の間に鮮やかな緑の葉っぱと、季節によってはオレンジ色の丸い果実がたわわに実って。すごいきれいな景色で大好きで、小学校の時から何度も行ってるの。だからその風景を守りたくて。それに、気持ちいいの。みかん畑に吹く風が」
場所を移動して駅前のゲーセンに行くと、噂の人物らがそこにいた。
「大珂くんと、1年生か」
「ともぴーもおるやん」
少し離れた場所から女子3人は様子をうかがう。
「あんな楽しそうな顔…私の前ではしない」
ライバル?田原にあまえられ、UFOキャッチャーしている姿はいきいきとしている。
「男子ってやっぱ子どもやねー。あんなムキになって」
まゆみは冷ややかな笑み。
何度も百円玉を入れ、フィギュアやお菓子、ぬいぐるみに挑戦している。
その中でも大珂が一番真剣かもしれない。
ポトン
ひとつ、手のひらサイズのぬいぐるみキーホルダーが落ちた。
「やったー、イェーイ」
田原と大珂はハイタッチで喜んでいる。
ムカムカムカッ
男子相手、しかも下級生にムカつく。
これは嫉妬?なんだかよくわからない感情がうずまく。
「ごめん、私今日は帰るね」
美久はその場を立ち去った。
いつも一緒だったのに
あいつが現れてから大珂は
私より後輩との時間を大事にしてる
大事な場所を奪われたような、
うまく言葉にできない
もどかしい思い。
「あっ、美久待ってよー」
友人たちも心配して追いかける。
その後ろ姿に気付いた田原は、にやっと薄気味悪い笑いを浮かべた。




