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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第2章 幸せのはじまり

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こたつ

年末年始、美久にとって怒涛の年越し&新年が過ぎた。

いつもなら人気のない大避神社も、お正月はたくさんの参拝客。

授与品やお正月の御朱印対応に大わらわ。


「美久ちゃーん、あけおめっ」

元旦早々弓道部メンバーも初詣へ。

洋子は休憩時間を待って朱色袴姿の美久を撮影し喜んでいる。

「せっかくなら幼なじみコンビで撮ってあげるよ」

そう言ってツーショット写真を撮影してくれた。

「プリントアウトしたらあげるね♪」

スマホで撮影しているとあまりプリントすることもないので、それはとても楽しみだった。


巫女バイトが終わると翌日は弓道の射始め式。

「美久は袴の色変わっただけやなぁ、あはは」

大珂はそう言って笑う。

確かに鮮やかな朱色から紺色に変わっただけで、衣装のかたちはあまり変わっていない。

「評判よかったらしいで。うちおとんが氏子の集まりの時みんなが美久ほめとったから鼻高かったわーって、言うとった」

「ありがたいことです」


正月ということもあり、射始め会は華やかに行われる。

的も扇になったり、成績上位者には景品もある。

大珂も美久も図書カードをもらった。

学生の本分である学業にも力を入れろということか。



「もうすぐ始業式か、早いなぁ〜」

「なんだかんだで大珂は頭いいからもう全部宿題終わってるんよね、ええなぁ」

「だから今日こうして教えてるやん」

射始め会の翌日、午前中の部活を終え高田家で勉強会。

大珂の部屋にはないが、美久の部屋にはこたつがある。なので冬場はこたつにみかんが定番。家がみかん農家だからね。

「若松家はみんな賢いもんね。遺伝子の違いか、クッ」

「どうなんかな?おとんは勉強サッパリやけど、母方のおじいちゃんとかは勉強ようできたらしいし。おかんの血筋ちゃう、ははっ」

「私数学は特に苦手〜、計算とかむずかしい〜」

「どれ?ここは…」

数字との格闘を投げ出したい美久の側に寄り、丁寧に教える同い年の家庭教師もどき。

「あぁ、ここはこの数式で…」


ドキッ


何回もキスして、何回もハグしているのに。

それでもこれだけ距離が近くなると、胸が高鳴る。

ずっと、好きな気持ちが変わっていない証拠。


「数式でいうとさ」

「ん?」

「好きの比重のバランス。両思いだったら平行と思いがちやけど、徐々に変化していくと思う」

「そうなん?」

「だって絶対私のほうが大珂のこと好きやと思う。毎日毎日好きが増えてってるから。だから数式でいうとかけ算で増えてって、グラフにすると右肩上がりで何乗とかになりうる」


ははっ、と笑う余裕の表情。


「オレも美久好きやで。その気持ちもつきあい始めた頃より増えてるし」

「そうかなー、だって好き過ぎてなんにも手につかなくなるとか、ないやろ?」

「まぁ頭ん中いっつも美久だらけとか言ったらストーカーみたいで怖いやん」



そうなんだよね…

きっと大珂みたいに多趣味で好奇心旺盛な男子は、

何かに心奪われるってことないんやろな

私がそういう存在になれたらいいのに


美久は密かにそんな想いを抱く。

独占したい、好きなものを。


これは、男女の脳の違いか

はたまた個人的心理の差か



「はー、ひと息ついたしちょっと休憩しよか」



ゴロン



でかいのがこたつに入り寝っ転がる。




スー…




あれ?


もしかしてマジ寝してる?


そういえば最近遅くまで部屋の明かりついてるし

(夜中に目が覚めた時みえた)


遅くまで起きてるのかな?


何してるんやろ


映画とかテレビみてる?


ま、冬休みやし夜更かししてるだけかもやけど



じっと、寝顔をみつめる。


無防備な、寝顔。



スー…



まつ毛長いな…



好きな人の寝顔をみているだけで、こんなにも幸せだなんて。



チュッ



思わず軽くキス。


しかし気づかず目覚めることもない。


背が高い分、こたつ布団からはみ出している上半身が多い。

ブランケットを取り出し、そっと首元までかける。


肩より上にあげた左腕、手首には誕生日にプレゼントした天然石ブレスレットをつけている。


「ちゃんと使ってくれてる、うれしいなぁ」


人の部屋で安心しきっている姿をみていると…


「ふわぁ…」


つられてウトウト。


不慣れな巫女の仕事を5連勤。

その後すぐに弓道の試合。


そりゃ眠くなるわな…



スー…



こたつのぬくもりに包まれて、猫のように丸くなって眠る至福のひと時。




「こらー、ふたりともっ。こたつで寝てたら風邪引くわよっ」


その後、みかん畑の作業所から帰ってきた美久母に見つかり、強制的に起こされることとなる。




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