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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第2章 幸せのはじまり

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女子会の恋バナ

10月半ば、美久は16歳の誕生日を迎える。

誕生日前日土曜日、部活のあと高田家に洋子とまゆみが来てパーティを催してくれた。


パーン パーンッ


「美久明日は誕生日おめでとー、前祝い〜」

「ありがとう〜」

クラッカーが鳴り響き、万国旗がたなびく。

パラシュートが落ちて来るものまで持参し、楽しい演出。


智之を筆頭に男子弓道部1年生組も来たいと言い出したが、

「今日は女子会やから美久こっちで貸しきりな」

というまゆみのひと言で打ち消された。

手土産のお祝いのお花とケーキと、美久母手料理のごちそうがテーブルに並ぶ。

「すごいねー、からあげにウィンナーにサンドイッチ!みかんのフルーツサンドもきれい〜」

「お母さん料理好きやねん、朝から張り切ってた」

スマホで写真を撮ったり、みんなで動画を撮ったり。

思い出を記録した後はもぐもぐタイム。

「うーん、どれもおいしいっ」

「料理屋の娘さんにそこまでほめられたらお母さんも喜ぶわ」

部活後の空腹が満たされると、まゆみが本題を切り出した。


「ところで、結局大珂とはどうなってるん?なんか遠征合宿行ってから妙に仲いい感じやけど…」

「ええっ、そんなふうにみえる??」

「なんか大珂くんも美久をみる目が優しいっていうか…距離もさらに近いし…」

「洋子まで何いって…」

「そろそろ白状したらどうや??」

ふたりに詰め寄られ、美久は白鳥神社での出来事を話した。


「えー、いいなー。やっぱりそうやったんやっ。あの神社って縁結びの効果もあるんかなぁ」

ロマンチストな洋子が目を輝かせている。

「まゆみは?ともぴーとはどうなん?」

まさか両思いだとは自分の口から言ってはもったいない、と美久は智之から恋の相談を受けたことは黙っている。

「うん、もうじれったいからそろそろ自分から告ろうかなぁとは…」



ともぴー!


あんた何やってんねんっ


私に相談するくらいならとっととまゆみに告ったらええのに〜



それぞれの気持ちを知っている身としてもじれったい。


「いいなぁ美久は。大珂なんだかんだいって男気あるなぁ」

「なんかいつもと違う場所だから言えたって。普段と同じ日常だとなかなか一歩踏み出せなかったと思うって」

「そうやんなぁ、やっぱ非日常て大事やんなぁ。なんか次の行事ないやろか」

「12月はクリスマス、大晦日、年が明けて初詣とバレンタイン!イベント盛りだくさんやん」

洋子は自分のことのようにワクワクしている。

「来月なら紅葉狩りとか…」

「渋っ。高校生がデートで紅葉狩りとか言う?」

「紅葉にいこーよーでもいいんやけど」

「それ大珂が言いそうなダジャレw」

「美久ちゃんどんどん大珂くんに似てくるね」

「夫婦は似るっていうし」

まゆみがニンマリと笑う。

「夫婦なんてだいそれたもんなってないし、つきあい始めたばかりやし」

「将来夫婦漫才してそう」

「洋子まで〜」

夫婦とか似てくるとか言われるのが、まんざらでもない様子。



先のことはわからないけれど…


なってたって幼なじみからやっと抜け出したばっかやし



それでも美久の胸の中には、生まれ育ったこの坂越の町で大珂とずっと一緒にいられることを願う気持ちと、漠然ときっとそうなるんじゃないかという安堵感があった。

彼の家は牡蠣漁師、自分の家は赤穂みかん農家。

家業を継ぐなら、ずっと近くにいれる。

実際はまだ1年生、普通科だし具体的な進路の話は出ていないけれど。



ピコン



スマホの通知が鳴る。


『女子会終わったらちょっと会える?』

愛しの彼氏くんからだ。

『うん』

『とうろん台のとこで待ってる』


とうろん台とは坂越湾歩道にある、昔坂越浦を航行する船舶に海洋気象を知らせた施設。

役場の人が日中は布製のものをとうろん台の柱の上に掲げ、夜はランプを吊って船舶に知らせたらしい。

現在あるものは当時のものを再現したものだが、坂越の歴史を語るモニュメントとなっている。


「彼氏からのラブメールぅ?いいなぁ、ひゅーひゅー。それならうちらは早々に退散しよっかー」

「そだねー」

「えっ、いいよそんな気ぃ使わなくても。ゆっくりしてってよ」

「もう暗くなるし、うちじいちゃんとか心配するから」

洋子は箱入り娘のお嬢様なので、家族から大事にされ祖父母からも溺愛されているのだ。



「今日はわざわざ来てくれてありがとう!また来週ね」

「彼氏によろしくねー、ひゅーひゅー」

まゆみが元気に手を振って自転車で帰っていく。

そこに、洋子も続く。

「さて」

タタタッ

スマホ早打ち。

『みんな帰った』


ピコン


速攻返事

『りょーかい』スタンプ


『今からいくね』


秋の日暮れは早い。

暗くなった道を海辺に向かい、美久はとうろん台に向かった。









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