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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第2章 幸せのはじまり

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13/19

行きはよいよい、帰りも良い

帰りの電車。

再び瀬戸内海を渡り四国から本州へ。


岡山に入ると、近辺には日本のデニム発祥の地であり制服作りが盛んな児島や、眺めの良い遊園地鷲羽山ハイランドがある。

「今度みんなで鷲羽山いきたいねー。バンジーとかもあるらしいよ」

「バンジーやるの罰ゲームやん、誰がすんねん」

1年生4人掛けのほうで盛り上がっている。


行きと同じ座席配置。

2人掛けの幼なじみペアが気持ちを伝えあい、あらためてちゃんとつきあい始めたことはまだ誰も知らず。

安心しきったのか、おたがいもたれかかりスヤスヤ爆睡。

死角になっていて見えないが、その手は座席の真ん中で固く結ばれていた。


行きは時間の関係で相生からの新幹線ルートだったが、帰りは乗り換えのJR岡山から赤穂線利用でのんびり帰る。

山中を抜ける新幹線と違い、海が近い眺めの良いローカル線の旅。

赤穂が近づくに連れ、夕暮れが空をオレンジ色に染めていく。

マリンライナーの中で爆睡した大珂と美久は、すっかり回復し岡山駅で買った白桃きびだんごをみんなに配りながら自分たちもパクパク食べる。

「きびだんご食べたからみんなお供になってオレについてこなあかんで」

試合のショックも忘れ、いつもの調子が戻ってきた口ぶり。

これには他部員たちもひと安心。

それくらい、落ちこむ時はとことんなのでわかりやすい。


途中、邑久駅。

スマホでマップをみていた美久が、近隣のおすすめ情報に出てきた場所に興味を示す。

「ホテルリマーニってところ、すごくきれい!ギリシャ料理とか食べれるんだって」

「あー、牛窓エリアって日本のエーゲ海とか呼ばれてるとこやな」

ふたりで顔を近づけ、ひとつの画面を見つめる。

「いつか行ってみたいなー。でもめっちゃ高いわ、学生には手届けへん」

「じゃあ高校卒業したら、記念に行こうか」

「ほんと!? 約束やで」

「…つきあい始めた記念の約束な」

こそっと、耳打ち。

吐息が、耳元をくすぐる。



ぽわ〜…


うれしすぎて頭ぼんやりする



「うん…」

車窓を眺めながら、喜びをかみしめる。



はぁぁぁぁ…


おんなじ高校にして


同じ部活入って


遠征合宿行ってよかった…!



これがなければ、まだ幼なじみのままだったかもしれない。

最悪別々の高校行ってたら大珂にも彼女とかできて、距離ができてよそよそしくなってたかもしれないし。

案外押しに弱いところあるから、かわいい子に言い寄られたらホイホイついてったかもしれない。


あほやから…



妄想が暴走する。



赤穂線沿線は他にも見所がいろいろある。

駅からバスなどにはなるが黒島ビーナスロードや、珍しいところでは廃墟ファンに人気の水没ペンション村など。


「あんまり赤穂から岡山方面って行ったことなかったけど、いつもと違うところ行くとなんか気分も変わっていいな。時間もそんなにかかれへんし、たまには出かけようか…デートで」

さいごのほうはこそっと小声で。



バフッ


と赤面。



顔から火を吹きそうなくらい、デートという言葉に過剰反応。



だってだってだって


デートなんていうのはちゃんとした恋人同士ってことで、

つきあってるからできることやから



などと考えつつ、言葉の重みをかみしめるのだった。



解散場所のJR播州赤穂駅に到着した時には、もう辺りは暗くなっていた。


「みんなおつかれ!練習試合といえど県外の高校相手にいい成績を残してくれた。これで夏のボヤ騒ぎも影を潜めるやろ」

「先生…もう古傷えぐらんといて。しっかり反省して、一度やった過ちは繰り返さんから」

しょんぼり肩を落とす大珂の姿に、皆失笑しうなずく。

「お目付け役の高田、これからも目離さんように頼むで」

「えっ?私ですか??」

「そうや、若松の扱い慣れてるのは幼なじみの高田くらいやろ。こいつおもろいと思ったことはすぐ飛びつくから誰か止めたらんとな」



そーんなふうにみられてたんだ、大珂。

そして私…まるで活きのいい馬と手綱引きの娘?ってとこか。



ムッフッフ


これからどう進展するのか楽しみになってきた。



「それじゃあ解散!明日疲れたとかいって学校サボるなよっ」



楽しかったねー


また明日ねー


バイバーイ



手を振り各自帰宅。

隣駅の坂越方面は大珂と美久のみ。

近くに高田家のみかん農園があるので、帰りはふたりを美久母が送ってくれる手はずになっている。

電話すると、ちょうどこれから出るところだからすぐ迎えに来るという。

駅前で待ちながら話をする。


「ねぇ、親とかにどう言ったらいいかな?なんかあらたまってつきあうことにしましたって、なんか恥ずかしくない?」

「オレもなぁ、おかんならまだ話しやすいかなぁ。父親とはそんな話する感じちゃうし…まぁいずれわかるやろしおいおいでええんちゃう?多分生活は今までとそう変わらんし。おたがい家行き来して、一緒に登校してって」

「そうやね」

「あ、もうすぐ美久誕生日やん。今年はそしたら、彼女にプレゼントってことになるんや」



彼女…


いい響き…



うっとり酔いしれる。

昨日出発した時には、まだ幼なじみのままだった。

初めての町へ、しかも1泊。

ドキドキワクワクの旅路。

それが帰ってきたら、彼氏と彼女になっている。

同じ駅にいるのに、おたがいの関係は変わっている。

夢のような感覚に、今は浸っていたい、星月夜。






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