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風待ち港で、君を待つ  作者: 風間 絆
第1章 高校1年生

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10/24

初めてのジェラシー

宿にて昼食をとりおえしばし休憩時間。

午後の練習に向けて各自リラックスし、移動の疲れを癒す。


「あれ?美久は?」

大珂がきょろきょろとあたりを見回し探している。

「さぁ、そういえばさっきから姿みてないね」

写真の確認をしながら洋子は答えた。

「珍しいね、いっつも一緒なのに」

「いやそういうわけじゃないけど」

思わず苦笑。


ただ単に弓の手入れする道具借りようと思ったんやけどな


窓の外をみると、少し離れたところで長い黒髪の後ろ姿を見かけた。

「なんだ外か」

まだ休憩時間はある。靴を履いて外に出て声をかけようとすると、思いがけない場面に遭遇してしまった。



へっ!?



室内からは死角になって見えなかったけど、話し相手がいた。智之だ。

美久の耳元に手をやり内緒話しているよう。



おい待て待て近い距離がっ



心の中で叫ぶ。




しばらくゴニョゴニョした後、ふたりで談笑。



なんだその笑顔!?


オレ以外の男と何仲良くしてんの??



「………」


目を疑う光景。


しかも照れたように顔を赤らめている。



なんだよアレ


あんなかわいい笑顔オレの前でするか?あいつ




モヤモヤモヤモヤ



「あれ?大珂どうしたのこんなとこで」

話を終え近づいてきた美久を前に、動揺した大珂は何も言わず立ち去った。

「変なの、お腹こわしたんかな?」

(子どもの頃からお腹弱いしな…)

まさか自分が智之と話していたところを見られているとは思わず、首をかしげる。




午後の練習。

大珂はさっきの出来事が気なって集中できない。

凡ミスばかりを繰り返す。

「大珂どしたん?いつもの調子出てないやん。移動で疲れたか?」

2年生の先輩にツッコまれるも、元気がない。

「また食べ過ぎて腹こわしたんか、ははっ」

からかう智之をじっと睨む。



誰のせいや思ってんねんっ



直接本人に聞いてみたいが、勇気が出ない。



待てよ


もしかしたらあのふたりがつきあうとか??


そしたら…もう今まで通りにはいかんよな


美久の隣には智之がいて…


オレもう美久の家気軽に行かれへんやん


あいつの母ちゃんのパウンドケーキめちゃうまいのに


いやそれは今どうでもいいんやけど



あーあーあー


うーうーうー




「ちょ、明日練習試合なのに何でかい図体で悩んでんの」

まゆみにゲキとばされても浮上できないまま頭を抱え、その日の練習を終えた。



歩いてすぐの宿に戻り、皆お風呂で汗を流し夕飯の時間。


チラッ


 チラッ


「何?なんかついてる?」

「べ、別に」


湯上がり、まだ少し濡れた髪をおろし肩にタオルをかけた美久を、大珂はいつもと違う視点でみていた。



今まで特別意識したことなかったのに


なんでだろう


美久がもしかしたら誰かと(しかもオレの友達と)


つきあうことになるかも


誰か好きなやつがいるのかもしれないと思ったら


なんか胸がザワザワして


ザワザワして…



いやだって小さい時から当たり前のように一緒にいて


おたがいの家を行き来して


家族ぐるみのつきあいで


気づけば高校まで一緒で


部活も一緒で


だから行き帰りも一緒で



………



今さらその役割が他の誰かに移るとか


考えたこともなかったし


よくよくみたら


結構かわいいし


わりとオレ好みだし



………



あーーーーーっ


スッキリさせたいっ


うじうじ悩んでんのはオレらしくないっ



「いだきますっ」


もぐもぐもぐもぐもぐもぐっ


一心不乱に夕餉をかきこむ。


「うまっ」

「それだけ食べたらそりゃでかくなるわねぇ」

「こうみえて子どもの頃は好き嫌い激しくてお母さん苦労してたけどね」

まゆみと美久が話す姿を、智之はじっと見つめていた。



やっぱりか!


お前美久のこと好きなんか?


渡さんぞ、絶対っ



メラメラメラ



密かに燃える闘志


煮立つ小鍋


「あっつ!」

「ほら、猫舌のくせに何やってんの」

口の中熱そうな大珂に、美久は冷たい氷水を渡す。

「…さんきゅ」


やれやれ


他の弓道部員はそんなふたりを、毎度のことですな、と温かい目で見守った。








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