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幼女になった落第聖女ですが、騎士団で女神と呼ばれています〜騎士公爵様がお探しの最愛はすぐ側に〜  作者: 海空里和@電子書籍2冊発売中!
第六章 ジャム聖女と公爵騎士団長

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ジャム聖女と公爵騎士団長⑨

「アリッサ! ああ、良かった! 心配したよ」


 王城の来賓室へ通されると、両親が先にいた。わたしに気づいたお父様が駆け寄り、抱きしめてくれる。


「ごめんなさい、お父様」


 お父様を抱きしめ返せば、眉を吊り上げたお母様と目があった。これは怒られる前触れだ。わたしは覚悟をして息を呑んだ。


「アリッサ! あなたって子は!」

「ご、ごめんなさい、お母様!」


 ぴしゃーんと雷のようなお母様の怒鳴り声が懐かしい。思わず身をすくめる。だけど、お母様から次の言葉は出てこなかった。


「お母様……」


 お母様は涙を流しながらわたしを見ていた。


「偽りとはいえ、娘の葬式をする親の気持ちがわかる? 無事を確かめたくともハリソンからは接触するなと言われるし」

「ああ~それは僕が悪いのです、母上。リーサは巻き込まれただけで、すべては僕の計画なのですから」

「そうだよ、マーガレット。アリッサの命を守るためには仕方がなかったんだ」


 お兄様がお母様に頬をかきながら申し訳なさそうにする。お父様もわたしから離れると、お母様を宥めた。するとお母様がお父様をキッと睨む。

 

「あなた、ハリソンがアリッサを王都へ呼んだ理由を知っていたでしょう!?」

「うっ……それは……」

「もしかして、国王陛下も絡んでいるのでは!?」


 ぐいぐいと責め立てるお母様に、お父様もたじたじだ。お父様がお母様に弱いのは、惚れた弱みだけではないらしい。

 あぜんと三人を見ていると、ライアン様がわたしの隣に立った。


「この度の事件は、すべて私のせいです。ブルーベル伯爵夫人、どうかお許しください」


 家格が上であるライアン様の謝罪に、さすがのお母様も慌てたようだ。


「いえ……領地に引きこもっていたこの子が、あの偽聖女に果敢に立ち向かうなんて……。あなたの影響なのでしょうね」

(今、しれっとセシリア様のことを偽聖女って言った?)


 涙ぐむお母様の言葉にジーンとしつつも、わたしはぽかんと口を開けた。


「私は前任の聖女として、神殿がオーキッド侯爵の手に落ちていくのを止められませんでした。今回のことで上層部は一掃されるでしょう。これもあなたのおかげです、アスター公爵閣下」

「いえ、私はアリッサ嬢に救われただけで、何もしておりません」

「そうですか……」


 穏やかに話すライアン様とお母様をぽかんとしたまま見ていると、お父様がこっそり教えてくれた。


「お母様はずっと神殿の動向を注視していたんだ。今回国王陛下の協力を得て動けたのは、お母様のおかげなんだよ」

「そうなの!?」


 つくづくわたしは何も知らずに、領地でのほほんとパンを作っていたんだなと思い知らされる。

 わたしは胸の前で拳を握ると、お母様を見た。


「お母様……今度はわたしがお母様の代わりに聖女として国のために……ううん、命をかけてくれている騎士団のために働きたい」


 お母様は驚いたように目を見開くと、ゆっくりと細めた。「そう」と一言だけ呟いて。


 時間になり、わたしたちは玉座の間へと通された。

 中央の椅子には国王陛下が座っており、隣にはレオニス王太子殿下が立っていた。

 頭を下げたわたしたちに陛下が威厳ある声色で言葉を放つ。


「今回の事件、ブルーベル伯爵家には大いに世話になったな。特にアリッサ嬢、息子の命を救ってくれたこと、礼を言う」


 恐れ多いお言葉に、わたしはさらに深く頭を下げた。


「リチャード、マーガレット。君たちの功績もさることながら、子どもたちも素晴らしいな」


 陛下が両親の名を呼ぶ。そんなに仲が良かったのだろうか?

 陛下の合図で両親が頭を上げたので、わたしもそれに倣って頭を上げた。


「我が息子レオニスの婚約者を決めなかったのは、そなたたちの娘が力を覚醒させるのを待っていたからだ。今回、アリッサはその力を示した。どうだ? アリッサをレオニスの婚約者にするのは」

(えっ!?)


 驚いて固まるわたしの肩を、ライアン様が抱き寄せる。


「……陛下」


 すると、お父様から聞いたことのないようなどす黒い声が発せられた。


「だ、ダメか!? 王太子妃だぞ!? ブルーベル伯爵家は陞爵されるし、アリッサも幸せになれるだろう? 誰もが望む幸せだぞ!?」

「……あなたは相変わらずですね。そうやって幸せの定義を自分の型で推し量って……」


 慌てる陛下に、今度はお母様がわたしにお説教をするときのような声色で話し始めた。

 え?? 大丈夫? 相手は国王陛下だよ??


「三人は幼馴染で、母上は昔陛下にプロポーズされたことがあるらしい」

「ええ!?」


 呆れた顔のお兄様がぼそりと教えてくれて、わたしは目を見開いた。


「それを蹴って父上を選ばれたのだから、二人は本当に愛し合っていたんだろうな。それに、父上の功績は国も無視できなかったしな。母上を無事陛下から略奪できたというわけだ」

「りゃく……だつ……」


 穏やかで研究肌のお父様には不似合いの言葉だ。

 家族のことでも知らないことはまだあるんだなと目を瞬いていると、お父様が一歩前に出た。


「陛下、私たちブルーベル伯爵家は、国のためならば喜んで力を尽くします。ただ、過剰な力は無用です。愛する人を守れる力があればいい。私たちは穏やかに暮らしていければそれで良いのです」


 お父様の言葉に陛下が盛大な溜息をついた。


「まったく……君たちときたら。わかったよ。君たちがいなくてはこの国は成り立たない。力を尽くしてくれると言うなら、ブルーベル伯爵家の安寧は約束しよう」

「父上、それにアリッサ嬢はライアンとの婚約が決まっているみたいですよ」


 レオニス殿下が陛下に囁くように伝えると、陛下は驚いたように目を見開いた。


「アリッサはそれでいいのか?」

「はい」


 陛下に声をかけられ恐縮したけど、これだけはきちんと返事しなければと背筋を伸ばした。


「ブルーベル家はつくづく欲のない者たちばかりだ」


 陛下はわたしを見て眉尻を下げた。お母様が「あら」と茶目っ気たっぷりに片目をつぶる。


「一番愛する人を手に入れた私もアリッサも、とても強欲ではないかしら」


 お母様の言葉に、わたしも憧れに手が届いたのだと胸が震えた。

 お父様とお母様、恋愛結婚で結ばれた二人のように、わたしも好きになった人と結婚したい。

 隣のライアン様を見上げれば、優しい微笑みを向けて手を繋いでくれた。

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