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幼女になった落第聖女ですが、騎士団で女神と呼ばれています〜騎士公爵様がお探しの最愛はすぐ側に〜  作者: 海空里和@電子書籍2冊発売中!
第六章 ジャム聖女と公爵騎士団長

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ジャム聖女と公爵騎士団長⑤

「セシリア様……」

「ジョセフの言う通り、見張りを薄くしておいて良かったわ! まんまとこんな所に現れて!」


 セシリア様は顔を隠すこともなく、ジョセフの後ろで高笑いをしていた。


「あなたがオーキッド侯爵令嬢である聖女ですか」


 聖女の顔を見るのは初めてなライアン様がわたしをマントに包むと、セシリア様を見据えた。


「そうよ。あなたが邪険にした聖女がこのあたし。ほんと、バカな男。あたしにしておけば死ぬことなんてなかったのに。そんなつまんない落ちこぼれなんかを選んで。それとも幼女趣味だったのかしら?」

「なっ――」


 くすくすとライアン様をバカにするセシリア様に反論しようとして、ライアン様に留められた。


「俺は……心の美しい女性に惹かれただけだ」

「なんですって!?」


 ライアン様の言葉にセシリア様が眉を吊り上げれば、ジョセフが剣を抜く。


「セシリア様、殺しますか?」

「……そうね。脱獄は立派な犯罪。近衛騎士であるあなたが手を下してもおかしくないわ」

「承知しました」


 セシリア様の了承を得たジョセフがそう言うと同時にこちらに突っ込んで来る。


「リーサ、離れていろ!」

「ライアン様!!」


 ライアン様はわたしを牢の中へ戻すと、剣を抜いた。

 剣と剣が交わる音が、狭い空間に響き渡る。


「あははは! 近衛騎士に手を出すなんて、いよいよ終わりね! ライアン・アスター! ジョセフ! 早く殺して!」


 楽しそうに笑いながらセシリア様が叫ぶ。

 わたしは為す術もなく、胸の前で両手を握りしめた。


 ライアン様は騎士団長だけあって、剣の腕がたつ。それは近衛騎士のジョセフも同じようだ。二人は拮抗して剣を打ち合っている。場所が狭いだけあって、やりにくそうだ。

 ジョセフは表情も変えずにただライアン様を亡き者にしようと剣を振り下ろす。あれは人を殺し慣れている人の目だ。――わたしを執拗に殺そうとしていたときと同じ目。


(ライアン様!!)


 怖くても目を逸らさずにライアン様の戦いを見届ける。

 ライアン様は剣を構え直すと、刃に炎をまとわせた。魔法だ。

 普段は剣の稽古しか見たことがなかったけど、ライアン様は魔法騎士団の団長なのだと思い出す。


 魔法騎士はお兄様みたいな魔術師のように魔法が使えるわけではない。自身の魔力を特別な剣に流すことにより、魔法を具現化できるのだ。

 その特別な剣は、もちろんお父様――はたまたおじい様の代からブルーベル家が作ってきた魔道具ともいえる。


「くっ……!」


 炎の剣を受けたジョセフが、じりじりと足を後ろに滑らせていく。ライアン様が押しているのだ。


「はあっ!」


 ライアン様は剣ごとジョセフを突き飛ばした。ジョセフの剣には亀裂が入り、その場で粉々になる。吹き飛んだジョセフは、壁に背を預けるように地面に腰をおろした。


「なんの騒ぎだ!」


 決着がついたかと思えば、その場に他の近衛騎士が駆け込んで来た。近衛隊長だ。

 セシリア様はにやりと笑うと、近衛隊長にすり寄っていく。


「隊長! アスター騎士団長が牢に押し入ったばかりか、罪人逃亡の手助けを……!」


 隊長はさすがにセシリア様の素顔を知っていたようだ。セシリア様にうなずくと、ライアン様に向き直った。


「どういうつもりですか、アスター騎士団長」

「騎士団は関係ない。俺は今、アスター公爵としてこの場にいる」


 ライアン様のその一言で、セシリア様が勝利を確信したかのように笑う。


「まあ! 恐ろしい! やはりアスター公爵様は、国家簒奪を企てていたのですわ! そこのアリッサ・ブルーベル、ハリソン・ブルーベル共々、国王陛下に断罪していただきましょう!」

「おい、捕まえろ!」

(そんな!!)


 もはやセシリア様の独壇場だ。

 国で唯一の聖女である彼女の影響力に、わたしは愕然とした。


「リーサ――アリッサ嬢は関係ない! 俺に巻き込まれただけだ!」

「ライアン!!」


 どうしようもないこの状況で、一人だけ罪を被ろうというの? わたしはライアン様に駆け寄った。


「どうして何もかも自分だけで背負おうとするの!?」


 彼の胸に飛び込みながら、拳を突き立てた。ライアン様はされるがまま受け入れると、両手をわたしの肩に置いた。


「すまない……君を守る方法が他に思い浮かばないんだ」

「だからって……こんなのは嫌」

「早く捕らえて!」


 セシリア様の声が高らかに響き渡る。


(どうしよう……!)


 わたしはライアン様の胸元を掴んだまま、ぎゅうっと目をつぶった。


「おい……?」


 しかし近衛騎士たちがこの場に入ってくることはなく、隊長が怪訝な顔で入口を見た。

 どうしたんだろうと、わたしも視線を向ける。すると、困ったような顔で近衛騎士たちが入ってきた。


「何をしているんだ! 早く罪人を取り押さえろ!」


 隊長の命令に、騎士たちはちらりと後ろを振り返った。


「へえ~、罪人とは誰のことですかね?」


 騎士たちの後ろから聞こえてきた声は、わたしのよく知る人――。


「お兄様!!」

「リーサ、待たせたね」


 魔法省のローブをまとったお兄様は、わたしに余裕の表情で笑ってみせた。

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