第二話 新しい朝
第二話 新しい朝
鳥のさえずりが聞こえる。
カルマはゆっくりと目を開いた。
見慣れない木造の天井。
窓から差し込む朝日。
そこでようやく思い出す。
「……異世界だったな」
昨夜の出来事は夢ではなかったらしい。
思わず苦笑する。
窓の外からは子供たちの元気な声が聞こえていた。
昨日まで知らなかった場所なのに、不思議と嫌な気はしない。
コンコン。
扉が叩かれる。
「起きていますか?」
オーファの声だった。
「あ、起きてます」
カルマは慌てて返事をした。
「朝食の準備ができましたよ」
「ありがとうございます。すぐ行きます」
顔を洗い、階段を降りる。
食堂の扉を開けた瞬間だった。
「起きた!」
「おはよう!」
「おはよう!」
元気な声が一斉に飛んでくる。
カルマは少し驚いてから笑った。
「おはよう。朝から元気だなぁ」
「カルマは元気じゃないの?」
少年が聞く。
「いや、元気だよ。ただみんなが元気すぎる」
子供たちは楽しそうに笑った。
昨日会ったばかりなのに、まるで前から知り合いだったみたいだ。
席へ向かう途中、小さな女の子が服の裾を引っ張った。
「カルマは何ができるの?」
「急に面接が始まった」
「めんせつ?」
「気にしなくて大丈夫」
周囲の子供たちも集まってくる。
「強いの?」
「魔法は?」
「剣は使える?」
期待の目が向けられる。
カルマは少し考えた。
そして正直に答える。
「期待してもらって悪いんだけど、たぶんこの孤児院で一番弱い」
「えぇー!」
大ブーイングだった。
食堂に笑い声が広がる。
「じゃあ何ができるの?」
再び聞かれる。
カルマは少しだけ考えた。
そういえば、履歴書を書く時も悩んだな。
面接でも、
「周りに馴染むのが得意です」
なんて答えていた気がする。
だからだろうか。
「人と仲良くなるのは結構得意かもしれない」
そう答えた。
子供たちは揃って首を傾げる。
「変なの」
「よく言われる」
カルマが肩を竦める。
「強い方がかっこいいよ」
「それは否定できないなぁ」
また笑いが起きた。
気付けばカルマも笑っていた。
少し前まで、この世界で一人だった。
どうなるかも分からなかった。
それなのに今は、子供たちと朝ご飯を囲んで笑っている。
悪くない朝だった。
少し離れた場所で見ていたオーファも、小さく微笑んでいた。
子供たちは人が好きだ。
けれど、誰にでもこんなふうに懐くわけではない。
それなのにカルマは、気付けば輪の中心にいた。
無理をしているようには見えない。
自然に話し、自然に笑い、自然に相手の懐へ入っていく。
それが少し不思議だった。
「ふふっ」
オーファは小さく笑う。
もしかすると。
この人は思っている以上に、たくさんの人と縁を結ぶ人なのかもしれない。
◇
朝食の後。
カルマはオーファと一緒に町へ出た。
――続く




