第73話:管理の自動化(オートメーション)
「……カイトさん。第二大隊長――改め『管理ユニット01』を含む全捕虜の武装解除が完了。……現在、彼らはバルカとシルヴィアの監視下で、接収した軍備の搬入作業に従事しています。……ですが、このまま人海戦術で運搬を続けるのは、時間的コストが許容範囲を超えます」
リアが空間上のコンソールをスワイプし、街道を埋め尽くす物資の山を指し示した。
二千人分の鎧、剣、盾、そして巨大な攻城兵器。これらを一つずつ手作業で仕分けていては、日の入りまでに終わらない。
カイトはジャージの「常時自動洗浄」機能を作動させ、空気中の僅かな火薬の匂いを分解しながら頷いた。
「……効率が悪いな。……『物』を運ぶために『人』という不確かなリソースを消費し続けるのは、システムの設計ミスだ。……事象復元。……この戦場跡地を『カイト商会・集積センター』として一時的に再定義しろ」
【悪意消費:100,000 evil ―― 広域構造再定義】
カイトが掌を地面に突き立てると、蓄積された膨大な「悪意」が黒い奔流となって街道を駆け抜けた。
地面が脈動し、バルディア軍が放棄した残骸や、解体された鋼材が生き物のように蠢き始める。
数分後、そこには侵略の痕跡など微塵もなく、無機質な鉄製のコンベアベルトと、巨大な自動仕分け機を備えた「物流拠点」が忽然と出現した。
「な、なんだこれは……!? 瓦礫が、勝手に組み合わさって建物に……!」
屈服した大隊長が、その光景に震える声を出した。
「……黙っていろ。……お前たちの仕事は、そのコンベアに資材を載せることだ。……それ以降のプロセス(鑑定・解体・再資源化)は、私の構築したシステムが自動で処理する」
カイトはさらに空間庫を拡張し、仕分け機の末端に接続した。
捕虜たちが資材を載せるたび、魔導センサーが材質をスキャンし、ロックとテオが設計した「最適解」に基づいて自動で打ち直され、カイトの空間庫へと次々と吸い込まれていく。
「……カイトさん。……資材の回収効率が1200%向上。……同時に、この圧倒的な光景を目の当たりにした捕虜たちから、さらなる絶望と畏怖が供給されています」
【検知:捕虜二千名の『抵抗意志の完全消滅』:+120,000 evil】
【検知:神業を目の当たりにした自軍兵士の『狂信的な敬意』:+40,000 pt】
カイトはジャージの「緊急食料生成」で出した高濃度ゼリーを口に含み、冷淡に戦場を見渡した。
二千の軍勢という巨大な「エラー」は、今や完璧に制御された「生産ライン」へとリペアされたのだ。
「……リア。……資材の回収が終わり次第、この拠点を撤去し、街への帰還を開始する。……ロック、テオ。……回収した鋼材で、二千人を即座に収容できる『高層集合住宅』の骨組みを準備しろ。……木材の家などという、火災リスクの高い旧時代の遺物はもういらない」
「……へっ、了解だカイトさん! ……テオ、聞いたか! 都市開発の本格始動だぜ!」
「……はい、師匠! ……構造解析、最終段階に入ります!」
カイトの視線は、もはや目の前の敗残兵には向いていない。
彼の脳内には、二千人の「資産」を燃料に、大陸一の効率を誇る「管理者都市」へと変貌を遂げる街の完成図が、鮮明に描かれていた。
(第73話 完)
【現在蓄積リソース:134,682 pt(感謝) / 360,490 evil(悪意)】
【所持金:金貨 0枚】
【状況:戦場跡地の資源回収を自動化。都市拡張のための建築資材確保を完了】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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