第74話:帰還と、都市の「外科手術」
「……カイトさん。回収した資材の圧縮完了、および空間庫への搬入をすべて終了しました。……現在、捕虜二千名は管理ユニット01の指揮下、街道を整列して街へと行軍中。……なお、街の住民たちはこの大軍勢の接近を察知し、極度のパ律と不安に陥っています」
リアの報告を聞きながら、カイトは「風走」を微弱に展開し、街道の先に見える自分たちの街――「管理者都市」の全景を眺めた。
今の街のキャパシティでは、二千人をただ放り込めば食料と衛生のエラーでパンクする。
「……当然だ。……この街は、まだ私の設計の30%も完成していない。……リア、街の全住民へ広域思念通信を。……『これは侵略ではない。我が街の拡張のための、安価なリソース(素材)の入荷である』とな」
カイトは街の門をくぐると、驚愕で立ち尽くす住民や領主軍の兵士たちを無視し、中心部の広場へと向かった。
「……ロック、テオ。……材料はここにある。……まずは金貨を介さず、私の『悪意ポイント』を触媒に、街の地下構造をリペア(拡張)する。……二千人の排泄物と生活排水を処理できないインフラは、都市とは呼ばない」
カイトは地面に手をかざし、蓄積された膨大な「悪意」を注ぎ込んだ。
「……事象復元。……街の地下三層までの土壌を、高強度コンクリートと浄化機能を備えた構造体へと一括変換しろ」
【悪意消費:150,000 evil ―― 都市基盤・地下インフラの広域リペア】
地響きと共に、街の地下で物理法則が書き換えられていく。
古い井戸や不衛生な下水溝は消滅し、カイトの記憶にある現代的な「巨大地下神殿」を彷彿とさせる浄化システムが構築された。
さらに、空間庫から回収したばかりのバルディア軍の鉄材が、地上へと噴き出すように伸び上がる。
「な、なんだ……家が勝手に生えてくるぞ!」
住民が叫ぶ中、街の北側に、鉄骨と石材が緻密に組み合わさった「集合住宅区」が瞬く間に構築された。
一戸建てという非効率な土地活用を廃し、二千人を整然と収容するための高層モジュールだ。
「……バルカ、シルヴィア。……捕虜どもをその区画に叩き込め。……一部屋に十人、管理ユニット01に部屋割りをさせろ。……それと、全室に『自動洗浄トイレ』を接続した。……不衛生というノイズを出す者は、その場でリソースとして処分しろ」
「……へっ、相変わらず無茶苦茶なスピードだな。……おい、お前ら! ぐずぐずすんな、新しい『檻』がお出迎えだぜ!」
バルカが捕虜たちを追い立て、整然とした集合住宅へと詰め込んでいく。
カイトはジャージの「常時自動洗浄」機能をフル稼働させ、土木作業による埃を寄せ付けないまま、完成したばかりの居住区を見上げた。
絶望に震えていた捕虜たちは、自分たちに与えられたのが「地獄の牢獄」ではなく、帝国ですら見たことがないほど「清潔で機能的な設備」であることに、激しい困惑と畏怖を抱き始めていた。
【検知:捕虜二千名からの『理解不能な恐怖と期待』:+100,000 evil】
【検知:生活環境が劇的に改善された住民からの『狂信的な感謝』:+80,000 pt】
「……これで箱は整った。……リア。……次は、この二千人を飢えさせないための『高効率食料生産ライン』のリペアだ。……市場で買い叩いた二級品の種と肥料を、事象復元で品種改良する」
カイトはジャージの襟を正し、レーションを一口噛み締めた。
鉄道という遠い地平線に魔力を割く必要はない。
今、この街そのものを、世界で最も「エラーのない完成されたシステム」へとリペアする。
管理者の執刀により、街は巨大な生命体のように拍動し始めた。
(第74話 完)
【現在蓄積リソース:214,682 pt(感謝) / 310,490 evil(悪意)】
【所持金:金貨 0枚】
【状況:二千人収容の集合住宅および地下インフラを即時構築。都市の近代化を断行】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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