第71話:進軍のフリーズと、街道の再定義
「……カイト殿、見ろ。地平線を埋め尽くすあの砂埃……バルディアの鋼鉄騎士団だ。正気か? 我々わずか五百の兵で、あの二千を止めようなどと……」
領主が馬上で声を震わせる。国境の街道の先には、重厚な鎧に身を包んだ騎士たちと、巨大な攻城兵器を引く軍勢が迫っていた。
カイトは馬に乗ることすら拒否し、自らの足で街道の真ん中に立っていた。ジャージの「常時自動洗浄」機能が、風で舞い上がる砂埃を無機質に弾き飛ばし、常に新品のような輝きを維持している。
「……領主、動揺は指揮系統のラグを招く。……彼らは二千人という多大なコストをかけてここまで来たが、その投資は今この瞬間、すべて不良債権に変わる」
カイトは一歩前に踏み出し、地面に手を触れた。
「……デバッグ開始。……街道の物理属性を『流体』へと書き換えろ。……さらに、範囲内の重力を通常の三倍へ固定」
【物質消費:金貨 2枚 ―― 街道の物理属性リペア】
【感謝消費:50,000 pt ―― 広域重力展開】
瞬間、バルディア軍が足を踏み入れた瞬間に、強固だったはずの石畳が底なしの沼のようにドロドロに溶け出した。
「な、なんだ!? 足が沈むぞ! 重い、鎧が重すぎて動けぬ!」
敵の魔導師団が慌てて重力相殺の術式を放つ。その余波がカイトを襲うが、ジャージの「複合防御装換」が自動で作動し、七色の防御膜がすべての干渉を無効化した。
「……無駄だ。……私の管理領域において、許可なき術式の展開は拒絶される」
一部、無理やり突撃してきた騎兵の槍がカイトの腕をかすめるが、即座に「自己再生」が発動。傷口は血が一滴流れる前に消滅した。
「……各員に告ぐ。……負傷者は『広域再生』で即時補修する。……恐怖というエラーを排除し、淡々と作業を進めろ。……バルカ、シルヴィア。動けない連中を一人ずつ確実に拘束しろ」
「……了解だ! これじゃあ、本当に掃除だな」
バルカが重力で動けない騎士たちの首根っこを掴んでいく。二千の軍勢が、カイトの引いた境界線を越えた途端、文字通りフリーズしたのだ。
「……侵略という名のアクセスは、ここで遮断する。……彼らには、我が街の不当な通行料の代わりに、軍備一式を没収という形で支払ってもらう」
戦場に悲鳴が響き渡る中、カイトはジャージの「緊急食料生成」で出したレーションを一口噛み、混乱する二千の軍勢を「回収待ちの資材リスト」として眺めていた。
【検知:バルディア軍の絶望と敗北感:+80,000 evil】
【検知:奇跡を目の当たりにした領主軍からの畏怖と感謝:+60,000 pt】
(第71話 完)
【現在蓄積リソース:94,682 pt / 260,490 evil】
【所持金:金貨 0枚】
【状況:隣国軍二千を街道で完全停止。武装解除と資源回収を開始】
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カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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