第66話:夜襲の掃除と、重力の支配
「……カイトさん、北西と南東から武装集団が接近しています。人数は四十二。商業ギルドに雇われた、腕利きの荒事集団のようです」
深夜の執務室。リアが、落ち着きつつも少し緊張した声で告げた。
カイトは窓の外の暗闇を見つめ、静かにジャージの襟を正した。
「……三時間遅い。ギルドも、もっと手際がいい連中を雇えばいいものを。……バルカ、シルヴィア。準備はいいか」
通信用の魔導具から、二人の声が返る。
「……最高の気分だ。ロックが打ったこの剣、振るたびに馴染む。早く試したくて仕方がねえ」
「……ふん、ゴミ掃除ね。あいつらに、誰を敵に回したか分からせてあげるわ」
カイトは「周囲探知」を広げ、接近する男たちの動きを完全に把握した。
彼らが壁を乗り越え、庭に足を踏み入れた瞬間――カイトの瞳に冷徹な計算が走る。
「……この程度のノイズに、クラン員の時間をこれ以上割くのは損失だ。……取得条件、感謝ポイント500,000 ptを投入。術式『重力操作』を解放、即時展開しろ」
【感謝ポイント 500,000 ptを消費 ―― 新規魔法:重力操作Lv.1 を習得】
カイトが手を地面へ向けて振り下ろすと、庭の空気が一変した。
「……な、なんだ!? 体が……重……っ!?」
侵入者たちは、まるで背中に巨大な岩を背負わされたかのように、その場に叩きつけられた。
土を噛み、指一本動かせないほどの圧力。50万という膨大な感謝の対価によって得た重力は、凡庸な戦士たちが抗える領域を遥かに超えていた。
「……シルヴィア、バルカ。動けない連中を一人ずつ確実に拘束しろ。抵抗する余地はない」
「……了解だ。これじゃあ、本当に掃除だな」
バルカが苦笑しながら、地面に張り付いた男たちの首根っこを掴んでいく。
シルヴィアは風のように動き、重力に押し潰されながらも必死に逃げようとする隊長格の男の喉元に、鋭い切っ先を突き立てた。
戦闘終了までわずか五分。カイト商会側の被害はゼロだった。
「……掃除は終わりだ。リア、捕らえた四十二名を地下へ運べ。怪我人は『広域再生』で最低限繋ぎ合わせろ。死なせては損だ」
「……分かりました、カイトさん。彼ら、どうするんですか?」
「……明日の朝から、岩塩採掘場の重労働に回す。罪の償いは、労働で支払ってもらおう。……それと、この夜襲を命じた商業ギルドの幹部たちの『悪意』も、残さず集めておけ」
【検知:商業ギルドからの暗殺失敗に対する絶望:+35,000 evil】
【検知:クラン員たちからの圧倒的勝利への心酔:+30,000 pt】
カイトは、ジャージの自動洗浄機能で袖の微かな埃を飛ばし、夜の静寂が戻った拠点を眺めた。
管理者の論理は、暴力に対しても最短の答えを叩き出す。
(第66話 完)
【現在蓄積リソース:4,682 pt / 117,490 evil】
【所持金:金貨 52枚】
【状況:50万ptで『重力操作』を習得。襲撃者を制圧し、採掘場の労働力として確保】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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