第65話:資本の無限循環(キャッシュフロー・ループ)
「……カイトさん、また例の『錬金術』で出した食材を使うんですね? 商業ギルドの息がかかった商人は、まだ一人もこちらに卸してくれませんが……」
リアが、拠点の一階を改装して作った即席の食堂を見渡し、少し不安げに呟いた。
そこには、カイトが金貨20枚を対価として錬金した、最高品質の肉、野菜、そして芳醇な香りを放つスパイスの山が積まれていた。
「……問題ない。……外部からの供給が止まっている今の市場こそ、独占禁止法のないこの世界では絶好の稼ぎ時だ。……ガレット。……仕込みの状況はどうだ?」
厨房の奥から、純白のコックコートをリペア(生成)して身に纏ったガレットが、理知的な瞳で現れた。
「……完璧ですわ、カイト様。……これほど純度の高い食材、宮廷にいた頃でもお目にかかったことがありません。……これなら、ただのスープ一杯でも、この街の連中を虜にする自信がありますわ」
カイトは無機質な表情で、手元に残った金貨22枚をテーブルに置いた。
「……開店しろ。……メニューは一つ。……『本日の錬金定食』。……価格は銀貨5枚。……一般市民には少し高いが、この食材の価値を考えれば破格の安値(バグ価格)だ」
カイト商会・直営食堂『リペア・キッチン』。
開店と同時に、街中に異常なほど食欲をそそる香りが漂った。
商業ギルドによる供給停止で、他の飲食店が軒並み休業、あるいは質の悪い代用食を出している中で、この香りは暴力的なまでの誘引力を持っていた。
「……おい、なんだこの肉は!? 口の中で溶けるぞ!?」
「……この野菜、どこで仕入れたんだ? 瑞々しさが異常だぞ……。商業ギルドが止めているはずなのに!」
客たちは驚愕し、貪るように料理を口に運んだ。
そして、誰もが会計の際に喜んで銀貨を差し出していく。
「……売上回収。……銀貨200枚(金貨20枚相当)を確保。……リア、これを即座に次の『錬金触媒』に回せ」
「……えっ、もうですか?」
「……当然だ。……稼いだ金貨をそのまま眠らせるのは死に金だ。……この20枚を再び錬金術の対価として投入し、明日の分の食材と、さらに『高級酒』を生成しろ。……売ればさらに売上が増える」
「……すごい。……自分たちでお金から材料を出して、それを売って、また材料を出す。……商業ギルドを通さずに、私たちの手の中だけでお金が回っています!」
リアが帳簿をつけながら、その圧倒的な利益率に声を弾ませた。
一方で、店の外からその光景を苦々しく眺めている商業ギルドの密偵たちの姿があった。
「……クソッ、なぜだ! 食糧を止めているはずなのに、あいつらの店だけは潤っている! ……どこに隠し倉庫があるんだ!?」
【検知:商業ギルドからの「理解不能な経済力」に対する困惑と殺意:+28000 evil】
【検知:満足した客たちからの「美味という名の救済」に対する感謝:+22000 pt】
「……悪意ポイントは敵の妨害策を予読するための演算リソースへ。……感謝ポイントは私の魔法のレベルアップへ。……金貨は無限ループの燃料へ。……全てが効率的に循環している」
カイトは、ジャージの自動洗浄機能を起動し、汚れ一つない姿で窓の外を見つめた。
街の経済という名の不条理を、管理者の論理が塗り替えようとしていた。
(第65話 完)
【現在蓄積リソース:434682 pt(感謝) / 47490 evil(悪意)】
【所持金:金貨 52枚(初期22枚+売上30枚)】
【状況:飲食部門が爆発的ヒット。資金と食料の自給ループが完成し、商業ギルドを圧倒】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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