第64話:供給遮断と、金貨の錬金術
「……報告します。本日予定されていた小麦、および鍛冶用の炭の納品が、商業ギルドの命によって一方的にキャンセルされました。……このままでは数日で拠点の備蓄が底を突きます」
リアが顔を真っ青にして報告してきた。商業ギルドによる、カイト商会を狙い撃ちにした兵糧攻めだ。
カイトはジャージの襟を正し、無機質な瞳で空間庫の中の金貨を見つめた。
「……現在の所持金、金貨62枚。……商業ギルドは、私が市場から品物を買うことしかできないと誤認しているようだが、それは大きな計算違い(エラー)だ。……アイスクリーム一つ出すのと、小麦粉の山を出すのに、本質的な違いはない」
カイトは空間庫から金貨20枚を取り出し、執務室のテーブルにばら撒いた。
「……カイトさん、まさか……」
「……ああ。等価交換(錬金術)を開始する。……ギルドが売らないというなら、この世界から直接引き出すまでだ」
カイトが金貨に手をかざすと、黄金の輝きが粒子となって霧散し、執務室の空気が激しく振動し始めた。
「金貨20枚を対価として登録。……指定物品、最高級小麦粉、乾燥肉、および高品質な石炭。……これらを現時刻をもって、この座標へ顕現させろ」
【物質消費:金貨 20枚 ―― 錬金術による物資生成を実行】
眩い閃光。
光が収まったとき、執務室の床には、商業ギルドが差し止めたはずの物資が、天井に届かんばかりの勢いで積み上がっていた。
そこにあるのは、どこかから運んできた形跡のない、錬金術によって「たった今生成された」ばかりの、混じり気のない純粋な物資だ。
「……相変わらず、無茶苦茶ですね。……お金さえあれば、本当になんでも出てくるんだから……」
「……当然だ。……金貨とは、この世界の可能性を固定するための触媒に過ぎない。……商業ギルドが供給を断とうが、私には何の影響もない」
カイトはさらに、残りの金貨を使って北の「旧・岩塩採掘場」の地質構造に干渉した。
「追加対価、金貨20枚。……埋没した坑道を再構築し、岩肌に含まれる塩分濃度を最大まで高めて、即時出荷可能な『最高級岩塩』として定義しろ」
【物質消費:金貨 20枚 ―― 岩塩採掘場の地質錬金を実行】
「……これで、我々は食料を錬金し、かつ『塩』という市場を支配する武器を自前で手に入れた。……リア、ギルドにメッセージを送れ。『在庫不足でお困りのようなので、我が商会が格安で塩を卸してやってもいい』とな」
【検知:商業ギルドからの「想定外の物資調達」に対する激しい動揺:+12000 evil】
「……感謝ポイントは身内から、悪意ポイントは敵から。……効率的な稼ぎ時だな」
カイトは、手元に残った金貨22枚を静かに空間庫へ戻した。
金貨を触媒にした錬金術。それは、既存の商業ルールを根底から破壊する管理者の特権だった。
(第64話 完)
【現在蓄積リソース:412682 pt(感謝) / 19490 evil(悪意)】
【所持金:金貨 22枚】
【状況:金貨を対価にした錬金術で食料問題を解決。採掘場リペアにより反撃開始】
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます!
カイトさんは今、集まってきた「悪意」をどうやって「ポイント」に変えようか、とっても怖い顔で計算しています……。
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