第33話:負債の清算と、首輪の対価
『轟雷の牙』の本拠地だった館のホールに、重苦しい沈黙が流れていた。
カイトの「強制倒産」によってすべての魔導武装を破壊され、組織としての体を成さなくなった構成員たちは、カイトの無機質な視線に射すくめられ、逃げ出すことすら叶わずにいた。
カイトはその中心で、床に膝をつくシルヴィアを見下ろした。
「……さて、シルヴィア。あんたが俺の時間を奪い、資産を毀損させようとした損害額の計算が終わった。……あんたの命を銀貨に換算しても、到底足りない額だ」
「……殺しなさいよ。敗者に残された権利は、それだけでしょ」
「権利? 勘違いするな。商談において、死は『踏み倒し』と同義だ。……俺は損をするのが嫌いでね。あんたには、物理的な資産としてその身で負債を返済してもらう」
カイトは空間庫から、かつてリアを縛っていたものとは比較にならないほど高度な、魔導式「隷属の首輪」を取り出した。
「『物』の入手対価は【お金】。……これ一つで、あんたの組織の備蓄資金の半分が飛んだぞ」
カイトはシルヴィアの首に、冷たい金属の輪を嵌めた。カチリ、という音が館内に響き渡る。
「……っ!? あ、あぁ……魔力が……っ」
「その首輪は、俺の許可なく魔法を使うことを禁じ、俺の命令に絶対服従を強いる。……今日からあんたは、俺の所有物(奴隷)だ。……名前を呼ぶ価値もないが、便宜上シルヴィアと呼んでやる」
【検知:シルヴィアからの「屈辱」と「底知れない絶望」:+1500 evil】
カイトは溢れ出す悪意ポイントを無機質に眺めながら、背後に隠れていたリアを呼び寄せた。
「リア。……こいつは今日から俺の奴隷だ。……あんたの身の回りの世話と、この拠点の掃除をさせる。……もしこいつが不穏な動きを見せたら、俺に報告しろ。その瞬間に、こいつの心臓をリペアの逆転現象で停止させる設定にしてある」
「ええっ!? ……は、はい。……あの、よろしくお願いします、シルヴィアさん」
リアは戸惑いながらも、自分を苦しめていた組織の長が、今は自分よりも下の立場になったことを理解し、カイトの徹底した「管理」に深い安心感を覚えた。
【検知:リアからの「絶対的な信頼」と「守られている実感」:+600 pt】
カイトは満足げに頷くと、館の壁に手を触れた。
「事象復元Lv.2――『再定義』」
カイトの魔力が広がり、悪趣味な装飾が剥がれ落ち、機能的で無機質な「カイト商会・第二拠点」へと書き換えられていく。
「……シルヴィア。まずはその床を磨け。……あんたの流した涙と鼻水で、俺のジャージが汚れるのはコストの無駄だ」
「……っ、……はい、……ご主人様」
屈辱に震えながら、かつての女傑が床に這いつくばる。カイトにとってそれは、単なる「負債の回収」に過ぎなかった。
「(さて、労働力と拠点は確保した。……次は、この街の物流を『最適化』して、文字通りの独占市場を築くとしようか)」
ジャージ姿の男の支配は、暴力ではなく「等価交換」という名の絶対的なルールで、この街を飲み込み始めていた。
(第33話 完)
【現在蓄積リソース:4682 pt(感謝) / 3090 pt(悪意:蓄積中)】
【所持金:金貨 5枚、銀貨 50枚(※組織の全資産を没収完了)】
【ギルドランク:C】
【新資産:シルヴィア(魔導隷属・雑用担当)】




