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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
砂漠の国編

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200/227

第200話:魔力大循環の適正化

大理石の正門を突破したカイトの四輪駆動車は、白亜の街並みを滑らかにすり抜け、都市の中央へと直進していた。

 周囲に並ぶのは、世界の魔力を独占して贅を尽くした、特権階級たちの豪華な邸宅群。

 外の世界の国々が魔力枯渇による作物の凶作や魔獣の凶暴化に苦しんでいるというのに、この聖域の内部だけは、溢れかえった濃密な魔力によって不自然なほど絢爛な花々が咲き乱れている。

「……判定。都市内部における魔力の過剰蓄積。これは自然な地脈の誘導ではなく、中枢の制御陣に意図的な『遮断障壁』を組み込んだことによる、人為的な隠匿行為。……極めて悪質な構造不備だ」

 カイトは衣服に汚れ一つない漆黒のジャージを纏ったまま、無表情でハンドルを握り、大通りを突き進む。

 背後に連結された高級キャンピングトレーラーは、この街に漂う強欲な魔力の圧力を完全にシャットアウトし、静かに心地よい冷気を車内に送り続けていた。

「カイト様、この街の人たち、自分たちだけで綺麗なお水を堰き止めて、独り占めしている悪い人たちと同じですね! 街の真ん中にある、一番大きなお山がすごく怒っています!」

 助手席のリアが、ジャージのフードからピンと耳を立て、窓の外の神殿を見上げて鋭い瞳を細めた。

 トレーラー内の完璧な栄養補給と、自動洗浄トイレやふかふかのベッドによって完全にコンディションを維持している彼女の野生の勘は、この都市の歪みを本能で拒絶していた。

「ふふ、人間の貴族も悪魔の将軍も、そして神を騙る守護者とやらも、結局は自分の取り分を増やしたいだけの浅ましい羽虫ね。カイト、あの天頂で詰まっているドロドロの魔力の塊、私の魔力で一瞬で爆破して散らしちゃいましょうか?」

 連結通路から優雅に顔を出したエルザが、調律杖を指先で転がしながら、赤い瞳を妖しく明滅させた。

 完全に気圧と温度がコントロールされた最上の室内空間のおかげで、真祖である彼女の魔力は一滴の目減りもなく、いつでも世界を調律できるだけの「満床」の状態にある。

「……否。エルザ、魔力中枢の物理的な爆破は、大陸全体の地脈構造を不可逆的に損壊し、二次的な環境災害を引き起こす。非論理的だ。……判定。神殿の最深部にある『制御盤コントロール・コア』へ直接アクセスし、術式の上書きを行う」

 四輪駆動車が、都市の中央にそびえ立つ最も巨大な『大魔導統括神殿』の前庭へと滑らかに停車した。

 カイトが静かにドアを開けて外へ降り立つと、衣服に塵一つないジャージの裾が、滞留した魔力の風に揺れた。

 神殿の奥から現れたのは、純金で縁取られた最高位の法衣を纏った『最高神官長』と、その側近たる老魔導士たち、数十人。

 彼らは正門の守護騎士が一瞬で全滅した報を受け、あまりの恐天動地に顔を老醜に歪ませながら、カイトたちを震える杖で指差した。

『お、おのれ不遜なる余所者め……! このミトラスの神殿は、世界の魔力を正しく管理する絶対聖域! 一介のジャージ姿の俗物が、我が主たちの築き上げた大循環のシステムに触れることは許されん! ただちに命を捧げて悔い改めよ!』

 最高神官長が狂乱の叫びを上げると同時に、彼らの背後にある神殿の中枢から、せき止められていた莫大な魔力が、迎撃の光線となってカイトたちへと放射されようとした。

「……お前たちの管理は、正常な分配ではなく不当な囲い込みだ。判定。その意思決定プロセスそのものが世界のバグである」

 カイトは感情の起伏がない声で淡々と告げると、迫り来る魔力の予兆に向けて、静かに右手を翻した。

「……空間軸固定。広域高重力圧着グラビティ・プレス

 パシッ――。

 次の瞬間、最高神官長と老魔導士たちの周囲の空間だけ、重力のベクトルが数十倍へと垂直に上書きされた。

「ガ、ハッ……!? な、何だ、この、圧倒的な、質量は……っ!」

『神殿の、加護が……術式が、展開、できな……っ!!』

 悲鳴を上げる暇すらなく、特権階級の老人どもは一斉に椅子や床の石畳へと叩き潰され、完璧に無力化された。

 カイトの精密な質量制御により、彼らが隠し持っていた神殿の鍵や、机の上の魔導書などの管理インフラには塵一つの傷もついていない。

「……これより、世界魔力循環のデバッグ作業(業務改善)を開始する」

 カイトは這いつくばる神官長たちを一瞥もせず、神殿の中央にある巨大な魔力制御結晶の前に佇んだ。

 結晶の内部では、世界中から不当に吸い上げられた莫大な魔力と、彼らが周辺国家から貢がせた金銀財宝が、宝物庫の奥で歪な輝きを放っている。

「……等価交換」

 カイトはジャージのポケットから手を抜き、神殿の宝物庫に眠っていた不正な財貨、および中枢に異常滞留していた過剰な魔力のエネルギーそのものを、自身の創造魔法の【対価(材料)】としてシステムに提示した。

 世界を停滞させていた強大な魔力の澱みと金銀が、カイトの権能の等価のルールに従い、空間でまばゆい光の粒子となって一瞬で消滅していく。

 その莫大な価値と引き換えに、カイトの手元に具現化されたのは、現代の最先端テクノロジーを魔導上書きするための『多次元魔力流体制御スクリプト(言語結晶)』、および『高次元超伝導魔導グリッド』の構造体だった。

 カイトは無表情のまま、その輝く言語結晶を、神殿の制御結晶の核へと迷いなく埋め込んだ。

 キィィィィン――ガシャァァァン!!!

 次の瞬間、どす黒く目詰まりを起こしていた天頂の魔力の渦が、一瞬にして透過性の高い、透き通った純白の光へと反転した。

 カイトの術式上書きにより、世界中の地脈へと魔力を「完全自動で均等に高速分配する」という、本来あるべき健全なインフラがその場で再構築されたのだ。

 シュウゥゥゥン……と、大霊峰から大陸全土へ向けて、心地よい魔力の清流が、波紋のように一斉に解き放たれていく。

 世界を蝕んでいた魔力の不備が、たった一回の等価交換のプロセスによって、完璧に均質化された瞬間だった。

「わあぁぁ……っ! カイト様、お空のドロドロが全部消えて、とっても綺麗な光になりました! 風がすっごく気持ちいいです!」

 リアが窓枠から身を乗り出し、嬉しそうに尻尾をブンブンと振って歓声を上げた。

「あらあら。一国の軍隊を消し去ったかと思えば、今度は世界全体の魔力の不備を、たった大金貨数枚分と敵の蓄えだけで完璧に最適化しちゃったわね。本当に、貴方の計算にはどこまでも無駄がないわ、カイト」

 エルザが本革のソファに深く背を預け、冷えたスープを喉に流し込みながら、愉しげにクスクスと笑った。

「……魔力大循環インフラの最適化を完了。これより、本領域における実地研修のフェーズを終了し、キャンピングトレーラーの居住自由度を維持したまま、次の構造不備の探索へと移行する」

 カイトは衣服に汚れ一つないジャージの袖を正すと、再び四輪駆動車の運転席へと乗り込み、滑らかに魔石エンジンを始動させた。

 世界のバランスを塗り替えた漆黒の移動要塞は、驚天動地から歓喜へと変わる大霊峰の都市を後にし、次なる世界のバグをデバッグするため、静かに、そして力強く新たな地平へと走り出した。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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