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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
砂漠の国編

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201/227

第201話:新たなる進路と、天空の歪みへの導き

世界の魔力を統括する大霊峰『エル・ミトラス』の機能を完全に最適化し、全大陸への魔力大循環システムを構築してから、さらに数日が経過していた。

 カイトの四輪駆動車は、白銀の装甲を美しく輝かせる高級キャンピングトレーラーを牽引しながら、霊峰の険しい下り坂を滑らかに走り抜けていた。

 標高が下がるにつれて周囲の景色は岩山からどこまでも広がる真っ白な雲海へと移り変わり、外気には大霊峰から解き放たれたばかりの、清浄で豊かな魔力の清流が心地よく満ち始めている。

「……判定。大霊峰の神殿領域からの離脱を完了。これより、等価交換によって得た高精度端末の示す次なる目標座標への巡航手順へと移行する。路面摩擦係数、正常値。車両各部の駆動効率、百パーセント」

 カイトは衣服に汚れ一つない漆黒のジャージを纏ったまま、無表情でハンドルを握っていた。

 外の世界は、大霊峰の麓に広がる果てしない雲の海と、断崖絶壁に刻まれた危険な山岳道路が続いているが、四輪駆動車の最新鋭サスペンションと、等価交換で強化された連結ギミックがすべての衝撃を完璧に吸収している。

 遮熱・遮音装甲に守られた車内には、エアコンディショナーから常に快適な二十四度の冷気が送り込まれ、極上の静寂が保たれていた。

「カイト様! お山の上のひんやりした空気も凄かったですけど、雲がすぐ足元にあって、なんだか不思議な景色です! あ、冷蔵庫で冷やしておいた特製のベリータルト、ちょうど食べごろですよ!」

 連結通路から助手席へと滑らかに身を滑り込ませたリアが、ジャージの袖をパタパタと揺らしながら、嬉しそうにフォークを添えた皿をカイトのサイドテーブルへと置いた。

 大霊峰の神殿で手に入れた新鮮な野生の果実と、トレーラーの高性能オーブン。それらを用いた完璧な栄養摂取により、彼女の獣人としての身体コンディションは、実地研修の開始以来、常に限界突破の数値を維持している。

「ふふ、過酷な雪山を下りてきた直後に、完璧に温度管理された部屋で冷たいお菓子が食べられるなんてね。本当にこの移動要塞の快適さには、真祖である私も驚かされるわ。……それでカイト、そのダッシュボードでピコピコ光っている平べったい板が、次に行うべき『不備』の場所を教えてくれているの?」

 本革のローソファに深く腰掛け、優雅にハーブティーを喉に流し込んでいたエルザが、調律杖の先端でダッシュボードにはめ込まれた「液晶画面」を指差し、赤い瞳を妖しく細めた。

 それは、カイトが大霊峰の機密書庫から手に入れた古い地誌と、大河都市で得た通信機器の残存ログを【正当な対価(材料)】として捧げ、等価交換の創造魔法によって具現化させた『現代の軍用タッチパネル式高精度ナビゲーション端末』だった。

 ファンタジーな魔法のアイテムではなく、カイトの知識にある最先端の電子地図デバイスである。画面には、周囲の地形の立体透過マップと、上空に存在する歪みの座標が鮮明なデジタル文字で表示されていた。

「……肯定だ。ナビゲーションの現在位置から北緯に直進した雲海の遥か上空、世界の天頂に浮かぶとされる古代の浮遊都市『アエロ・フィード』。……判定。当該領域において、大霊峰の魔力が正常化した影響により、逆に天空の古代浮遊設備が過剰出力を起こし、周囲の気流を巨大な暴風へと変えて下界の気候を脅かし始めているという、局所的な環境システムのバグを感知している」

 カイトは感情の起伏がない声で淡々と答えた。

 本来であれば正常な魔力の恩恵を受けるはずの天空都市が、設備の旧式化や、何者かの人為的な管理放棄によって、周囲の全気候を破壊しかねない危機に直面している形跡が、カイトの論理式によって弾き出されていたのだ。

「空に浮かぶ都市、ねぇ。あそこに引きこもっている連中は、地上の人間たちを見下して自分たちだけが清高だと思い込んでいる傲慢な奴らばかりよ。どうせまた、自分たちの古代技術に溺れてろくでもない不備を溜め込んでいるに決まっているわね」

 エルザが不敵に口元を歪めた、その時だった。

 四輪駆動車のフロントガラスの向こう、どこまでも広がっていた白い雲海が、突如としてどす黒い雷雲へと変色し、激しく蠢き始めた。

 突如として、巨大な竜巻と落雷が何十本も巻き上がり、それが大霊峰の過剰な魔力によって強固な空気の壁を形成しながら、カイトたちの進路を完全に塞ぐようにして、巨大な「嵐の障壁」を形成したのだ。

「……前方に構造不備(障害物)。個体識別、魔力活性型変異気流ゴーレム。……巡航速度の維持を最優先する」

 カイトは車を止めることなく、行く手を阻むように進み出てきた体長十メートルを超える突風と雷撃の魔獣へと、静かに右手をかざした。

「……等価交換」

 カイトはジャージのポケットから、大霊峰の宝物庫から公共の物として回収しておいた、不要な古い魔導具の破片を数枚取り出し、空間へと提示した。

 物資が光の粒子となって消滅すると同時に、カイトの創造魔法によって、四輪駆動車のフロントバンパーの前面に、現代の流体力学テクノロジーを模した『高密度分子振動・大気安定化偏向シールド(デバッガー・ウィンド)』の構造が完璧に具現化・展開された。

 捧げた不要物資の等価価値と、敵である気流魔獣のエネルギー密度。そのすべてを計算式で回し、カイトは車内から一歩も出ることなく、その排除を実行した。

パシィィィン――ズドォォォン!!!

 目に見えない超高周波の安定化熱線が一直線に放たれ、立ち塞がっていた気流魔獣の結合部(核)を一瞬で分子レベルで霧散・自壊させた。

 悲鳴を上げる暇もなく、巨嵐の身体はただのそよ風へと変わり、進路を塞いでいた嵐の障壁は一瞬にして「綺麗に最適化」された。

「わあ、凄いです! あんなに大きな真っ黒い雷の塊が、一瞬でただの綺麗な空になっちゃいました!」

 リアが窓枠から身を乗り出し、嬉しそうに尻尾をブンブンと振って歓声を上げた。

「相変わらず、ただの羽虫を追い払うように一国を揺るがす魔獣を片付けてしまうのね。これなら次の天空都市とやらも、ただの楽しい空調設備の点検になりそうだわ」

 エルザが愉しげにクスクスと笑い、ソファに深く背を預けた。

「……これより、垂直上昇手順を開始する。……等価交換」

 カイトは再びジャージのポケットから、大霊峰で回収した純度の高い大魔石を一枚取り出し、端末の横へと提示した。

 魔石の莫大な質量と引き換えに、四輪駆動車の底面とトレーラーのフレームに、現代の航空力学を魔導上書きした『局所重力反転型・超伝導浮揚推進機関フライト・ユニット』が完璧に結合される。

 ガガガ、と車体が静かに鳴動し、タイヤが地面から離れていく。

「……軌道を上空へと維持。天空都市の不備の源流へと直進する」

 カイトは表情一つ変えずにアクセルを一定の踏み込みで維持した。

 雲海の遥か上空に蠢く、雷雲と古代技術に隠された新たなバグがその冷徹なデバッガーの到来を待つ中、漆黒の移動要塞は何一つ破損することなく、空に向かって着実にその車体を浮かび上がらせていった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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