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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026


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第17話:完成、そして等価交換の「弾丸」

街の喧騒から隔絶された、煤煙と鉄の匂いが立ち込めるガラムの工房。

カイトが再び訪れた時、老ドワーフは真っ赤に充血した目で、机の上に置かれた「それ」を凝視していた。

「……来たか。約束の三日だ」

ガラムの声は、極度の集中と疲労で掠れていた。

机の上には、カイトが図面に描いた通りの、鈍い光沢を放つ黒鉄の筒が置かれている。

単なる筒ではない。

内部は鏡面のように磨き上げられ、火薬の爆発……あるいはカイトが提唱した「魔法的な膨張」の圧力を一滴たりとも逃がさないよう、極限の精度で削り出された「銃身」だ。

カイトはそれを手に取り、重量と重心を確かめる。

ズシリとした重み。

「身体強化」を施したカイトの腕には、むしろその重さが心地よい安定感を与えていた。

「見事だ。……魔法の付与なしで、ここまで滑らかに仕上げられる職人はこの街には他にいないだろう」

「……フン。魔法なんて軟弱なもんに頼らんでも、鉄と知恵だけで世界は変えられる。貴様の図面を見た時、俺はそう確信した。だがな、カイト。こいつに込める『弾』はどうする。ただの石っころじゃ、この銃身が泣くぞ」

ガラムの問いに、カイトは薄く笑った。

彼は既に、この鉄の塊に命を吹き込む「対価」を準備していた。

「ああ。これからは魔法そのものを放つんじゃない。魔法のエネルギーを、物理的な『運動量』へと変換する。……それこそが、この世界における最も効率的な等価交換だ」

カイトは「空間庫」から、数枚の銀貨を取り出した。

そして、システムのメニューを視界に展開する。

【物質対価を確認:銀貨 3枚】

【創造開始:鉄の弾丸(45口径相当)および、薬莢に代わる『魔力集積結晶』を具現化します】

カイトの掌の上で、淡い光が収束し、数発の重厚な鉛の弾丸が形作られた。

それは、火薬による燃焼を必要としない。

代わりに弾底部には、カイトの魔力を受けて瞬時に爆発的な膨張を引き起こす、極小の「火魔法」が回路として刻まれている。

「これが俺の、最初の『商品』だ」

カイトはガラムに見守られながら、試作型銃身の後部に弾丸を装填した。

ガチャリ、と重厚な金属音が響き、完璧な密閉空間が完成する。

本来、一から銃という兵器を完成させるには数年単位の試行錯誤が必要だろう。

だが、カイトには「事象復元リペア」と「身体強化」、そしてシステムの「等価交換」がある。

設計の不備はリペアで即座に修正し、反動は身体強化で力ずくで抑え込む。

カイトは、工房の裏手にある分厚い石壁の防壁に向かって、銃身を構えた。

「(魔力の注入、開始。……点火)」

カイトの指先から微量の魔力が弾底に送り込まれる。

次の瞬間、工房全体が揺れるほどの轟音と、凄まじい衝撃波がカイトの腕を襲った。

ドォォォォォォン!!

火炎を吐き出した銃口から、音速を超えた鉛の塊が撃ち出された。

ターゲットの石壁は、砕け散るどころか「消失」したかのように穴が開き、その背後の土手までが深く抉り取られている。

「……バ、バカな……。魔法の気配は一瞬だった。それなのに、これほどの破壊力だと……?」

ガラムは腰を抜かし、崩れ去った石壁を呆然と見つめていた。

これまでの常識では、これほどの破壊を及ぼすには上級の「爆炎魔法」と膨大な魔力、そして長い詠唱が必要だった。

だが、カイトが行ったのは、ただ「引き金を引く」のと同等の、ごく僅かな魔力の火花を散らしただけだ。

【検知:ガラムからの「技術的衝撃」および「畏怖」:+150 pt】

「……コストは火球ファイアボールの十分の一。だが貫通力と弾速は十倍以上。これが、魔法を物理の奴隷にするということだ」

カイトは、熱を帯びた銃身を愛おしそうに撫でた。

ジャージの袖が反動で少し焦げていたが、そんなことは瑣末な問題だ。

この一撃は、魔導と物理の均衡を完全に破壊する「暴挙」だった。

だが、この轟音は当然、周囲にいた者たちにも届いていた。

工房を包囲し、カイトの動向を監視していた『轟雷の牙』の刺客たちにとっても、それは理解を超えた死の宣告に聞こえたはずだ。

【検知:外部の監視者たちからの「混乱」および「強烈な恐怖」:+300 evil】

【リソース:悪意エネルギーが「限界突破オーバーリミット」の状態に到達しました】

カイトは銃身を空間庫へと仕舞い、ジャージの襟を正した。

視界に映るリソースの数字は、かつてない勢いで増幅し続けている。

恐怖は伝染し、伝説は誇張され、それがまたカイトへと流れ込む。

「……お待たせ。外で震えてる連中に、新しい『対価』の支払い方法を教えてやらないとな」

カイトは冷徹な瞳で、工房の出口を見据えた。

もはや、投げナイフをちまちま投げている段階は終わった。

ジャージ姿の男の手には、この世界のルールそのものを撃ち抜く「黒鉄の杖」が握られている。

カイトが一歩踏み出すたびに、床の埃が「風走」の余波で舞い上がる。

等価交換のルールを悪用し、最小の投資で最大の暴力を買い取る。

その完成された「システム」としてのカイトは、もはや一人の冒険者ではなく、この世界の在り方を変える「魔王」にすら見えた。

「(悪意が300……。一時的な『照準補正』を展開するには十分すぎる。……実験を始めようか)」

夜の帳が降りる中、カイトは静かに工房を後にした。

背後でガラムが震えながら「とんでもねえ化け物を生み出しちまった……」と呟く声が聞こえたが、カイトは振り返らなかった。

彼はただ、次なる「リソース」を求めて、闇の中に蠢く悪意へと真っ直ぐに歩んでいく。

【現在蓄積リソース:400 pt(感謝) / 300 pt(悪意:蓄積中)】

【所持金:銀貨 8枚】

【新装備:試作型魔導銃「等価の天秤プロトタイプ」】

カイトの足取りは、かつてないほど冷徹で、そして揺るぎなかった。

ジャージのポケットに忍ばせた、新品の「弾丸」が、月光に照らされて冷たく輝いていた。

これからの戦いは、もはや冒険ではない。

効率的かつ一方的な、リソースの「回収作業」へと変貌するのだ。

(第17話 完)

【現在蓄積リソース:400 pt(感謝) / 300 pt(悪意:蓄積中)】

【所持金:銀貨 8枚】

【ギルドランク:D】

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