第16話:路地裏の対話と、悪意の収穫
カイトがわざと人通りの途絶えた広場へ入り込むと、月明かりに照らされた石畳の上に、四つの影が伸びた。
「……出てきたらどうだ。プロの端くれなら、鬼ごっこは柄じゃないだろ」
カイトが足を止め、ポケットに手を入れたまま振り返る。
暗闇から現れたのは、Bランクパーティ『轟雷の牙』の意匠が入った軽装の男たち。
先日のならず者とは明らかに動きが違う。
「……お前のせいで、うちのリーダーはひどくご機嫌斜めでね。おまけに下っ端を三人も再起不能にされちゃあ、面子も丸潰れだ」
リーダー格の男が、毒が塗られたと思しき双剣を抜き、低く構えた。
他の三人も、カイトを包囲するように散開する。
【検知:対象からの「組織的な排除意思」「冷酷な殺意」:+180 evil】
「面子、か。そんな安いもののために、あんたたちの命を『対価』に差し出すつもりか?」
「ハッ、減らず口を。……殺せ!」
合図と共に、四人が同時に踏み込んできた。
カイトは「風走」と「身体強化」を静かに発動させる。
双剣の男が放つ鋭い一撃がカイトの喉元を掠めるが、ナノケブラーが織り込まれたジャージの襟が、その衝撃と毒を完璧に弾き返した。
「……なんだ、その服は!?」
「言っただろ、こいつは俺の身体の一部だ」
カイトは右手を空中に突き出す。
「空間庫」から一瞬で投げナイフが掌に出現し、そのまま「身体強化」の剛腕で真横に薙いだ。
キィィィンッ! と金属音が響き、ナイフは相手の剣を叩き折る。
さらにカイトは、これまでに溜まった「悪意」をその場限りの燃料として右脚に注ぎ込んだ。
「悪意による一時創造――『加速補助・脚部噴出』」
【創造完了:悪意 330 pt を消費――一時的な瞬発力向上機能を付与】
ドォッ! と地面が爆ぜた。
カイトの姿が視界から消えたと思った瞬間、リーダー格の男の視界は真逆に回転していた。
カイトの膝蹴りが、男の顎を正確に、そして過剰なまでの威力で打ち抜いたのだ。
「ギ……、あ……」
リーダーが崩れ落ちると同時に、残りの三人の戦意が「恐怖」へと塗り替えられる。
【検知:対象からの「理解不能な存在への恐怖」:+150 evil】
「悪意が足りないな。……もっと俺を憎んでくれないと、次の魔法が試せない」
カイトは無機質な瞳で彼らを見据え、一歩、また一歩と距離を詰める。
生き残った三人は、もはや攻撃することすら忘れ、震える手で武器を落とした。
結局、彼らから絞り出せるだけの悪意と、わずかな所持金を「徴収」したカイトは、死体のように転がる四人を残して広場を後にした。
殺しはしない。彼らが生き延びて、この恐怖と憎しみを周囲に伝染させることで、さらに多くの「リソース」が収穫できるからだ。
「……さて。あと二日で、あの『筒』が完成する」
カイトは、新しく習得した「空間庫」の出し入れを繰り返しながら、宿へと戻った。
物理的な銃身と、魔法による火薬の代用。
それが完成した時、カイトの「無双」は、この世界の魔法体系を根底から覆すものになるだろう。
【現在蓄積リソース:250 pt(感謝) / 150 pt(悪意:蓄積中)】
【所持金:銀貨 13枚(徴収分含む)】
【製作依頼中:試作型魔導銃身】




