第14話:情報の精算と、新たなる「商品」
廃鉱山から救い出した商人たちを街の入り口まで送り届けると、東の空が白み始めていた。
彼らは何度もカイトの手を握り、中には「ぜひ我が商会の専属に」と勧誘してくる者もいたが、カイトはそれらをすべて適当にあしらった。
今の彼にとって最大の報酬は、網膜に焼き付いた「1400」という感謝ポイントの残高だ。
カイトは喧騒を離れ、朝日が差し込む路地裏で一人、システムメニューを開いた。
「……1400。ようやく、補助的な魔法ではない『本物』に手が届く」
カイトが狙いを定めていたのは、戦闘の幅を劇的に広げる「空間干渉」の初歩。
四次元ポケットのような巨大な空間はまだ無理だが、自身の周囲にわずかな「隙間」を作る魔法だ。
【決定:感謝リソース 1200 pt を消費します】
【習得完了:初級空間魔法「空間庫」を記憶しました】
カイトが右手を軽く振ると、空中に波紋のような歪みが生まれた。
それは一辺が30センチほどのごく小さな空間だが、そこには「時間停止」と「質量無視」の法則が働いている。
カイトは腰のベルトから投げナイフを引き抜くと、その歪みの中へ放り込んだ。
ナイフは吸い込まれるように消え、カイトが念じると再び掌の中に現れる。
「……よし。これで、ジャージのポケットを膨らませる必要も、いちいちベルトに予備を指しておく必要もなくなった」
出し入れにコンマ数秒のタイムラグはあるが、戦闘中に「見えない場所から武器を取り出す」ことができる利点は計り知れない。
残りの感謝ポイントは200。カイトは次に、昨日情報をくれた酒場の仲介人のもとへ向かった。
「よう、新人さん。……いや、もう『死神』か『聖者』か判らねえな。廃鉱山の話、もう街中に広まってるぞ」
情報屋は、朝から酒を煽りながら、呆れたような、それでいて敬意の混じった視線をカイトに向けた。
「おかげで商隊の流通が戻った。商人たちはあんたを拝んでるが、面白くないのは『轟雷の牙』だな。自分たちが手を出さなかった獲物を、新人に横から掻っ攫われたんだからな」
「……だろうな。おかげで街を歩くだけで『悪意』が溜まって助かるよ」
カイトは笑い、銀貨を一枚テーブルに置いた。
だが、今回は情報を買うためではない。
「親父。この街で一番『腕の良い細工師』を教えてくれ。……魔法は使えなくていい。ただ、俺が渡す図面通りに、正確に鉄を削れる奴だ」
「細工師? 武器屋じゃなくてか?」
「ああ。魔法は俺が用意する。俺が欲しいのは、その魔法を載せるための『頑丈な器』だ」
カイトは、ジャージのポケットから一枚の紙を取り出した。
そこには、この世界の住人が見れば首を傾げるような、だがカイトの元の世界では馴染み深い「機構」が描かれていた。
魔法をそのまま放つのはコストが高い。
ならば、魔法の爆発力を「物理的な加速」に変換する道具を創ればいい。
カイトの視線は、もはや一冒険者の枠を超え、この世界の技術体系そのものを「等価交換」でハックしようとしていた。
【現在蓄積リソース:210 pt(感謝) / 30 pt(悪意:蓄積中)】
【所持金:銀貨 16枚】
【新習得魔法:空間庫】




