第11話:投資の選択と、鋼の対価
宿に戻ったカイトは、ベッドの上に銀貨20枚を並べた。
「物質創造」でジャージを弄るには金がかかり、永続的なスキルとして魔法を「習得」するには膨大な感謝ポイントがいる。
そして「悪意」は、その場限りの使い捨ての燃料だ。
今のカイトには、ポイントを消費せずに恒久的に使える「手札」が必要だった。
「……攻撃魔法を買い取るには、まだポイントが全然足りない。なら、今は『金』で解決できる物理手段を持つべきか」
カイトは、空中にあるメニューの「攻撃魔法」のコストを忌々しげに眺めた。
・【火球】……必要コスト 3,000 pt
「3,000か。村一つ救ってようやく届くかどうかのラインだな。今は現実的な手段で行くか」
カイトは銀貨を掴み、宿を出て街の武器通りへと向かった。
向かったのは、魔法を付与した高価な魔導具屋ではなく、無骨な鉄の匂いが漂う腕利きの鍛冶屋だ。
カイトが選んだのは、一本の簡素な、だが頑丈な鉄の投げナイフだった。
「親父、これを五本。それから、こいつを固定できるベルトをくれ」
「……ジャージにナイフか? 変わった客だな。銀貨2枚だ」
カイトは銀貨を支払い、手に入れたナイフを腰のベルトに装着した。
魔法を介さない、純粋な物理的な「道具」。
これならば、感謝ポイントを消費せずに、今の「身体強化」の筋力だけで十分な射程と殺傷能力を発揮できる。
「(リペアがある限り、こいつが折れても『新品の状態』に戻せる。物理武器と魔法の組み合わせ……現状ではこれが一番コスパがいい)」
残りの銀貨は18枚。
カイトは次に、街の隅にある「情報屋」が集まる酒場へと向かった。
無双を続けるためには、効率よくリソースを回収できる場所を知る必要がある。
酒場の隅、煤けたテーブルに座る情報の仲介人に、カイトは銀貨1枚を差し出した。
「この街の近くで、手に負えなくて困っている『厄介事』を教えろ。……報酬が金じゃなく、人々の『怨嗟』が溜まってそうなやつだ」
情報屋は銀貨を懐に収め、低く濁った声で笑った。
「……景気のいい新人さんだ。それなら、北の峡谷にある『廃鉱山』の話はどうだ? 数日前から、そこをねぐらにしていたゴブリンの群れが街の商隊を襲い始めてる」
「……ゴブリンか」
「ただの群れじゃねえ。……人間の言葉を解し、罠を仕掛ける狡猾なリーダーがいるそうだ。おかげで街の流通は滞り、商人たちは毎日ギルドに泣きついてるよ」
カイトは席を立ち、ジャージの襟を正した。
新たな獲物。溜まった「悪意」をその場で消費し、敵を蹂躙し、結果として莫大な「感謝」を買い取るチャンスだ。
【検知:情報屋からの「得体の知れない男への畏怖」:+10 pt】
「狡猾、か。……等価交換のルール以上に、賢い奴がいないことを祈るよ」
カイトは腰のナイフの重さを確かめながら、夜の街を駆け出した。
目指すは北の廃鉱山。
悪意を燃料に、感謝を刈り取るための戦いが始まる。
【現在蓄積リソース:190 pt(感謝) / 0 pt(悪意)】
【所持金:銀貨 17枚】
【装備:鉄の投げナイフ×5】




