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『等価交換の創造無双 〜ジャージ姿の俺、悪意を燃料に最強兵器を創り出す〜』  作者: beck2026
第2章:管理者の実地研修(フィールドワーク)

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105/189

第105話:午前三時の静寂

午前三時。リスタの街は、死んだように静まり返っていた。

 宿の裏口から音もなく抜け出した三人の姿は、街灯の乏しい路地裏の闇に完全に同化している。カイトが事前に『リペア』で調整したジャージの表面は、微細な光の反射を抑え、三人の輪郭を夜のとばりへと溶け込ませていた。

「……カイト様、西門の衛兵は交代の時間です。……今なら、あくびをしている隙に検問を通らずに抜けられます」

 リアがぴんと立てた耳を僅かに動かし、数歩先からささやく。

 獣人としての夜目が利く彼女にとって、この時間帯の闇は障害にすらならなかった。

「……予定通りだ。……エリザ、足元に注意しろ。お前の杖が石畳を叩く音は、今の静寂の中では『ノイズ』として響きすぎる」

「……分かっているわよ。……言われた通り、杖の先端に端切れを巻いて消音デッドニングしてあるわ。……それにしても、本当に誰もいないのね。真祖わたしがコソコソ歩くなんて、三百年前なら考えられないことだわ」

 エリザは不満げに口を尖らせつつも、その足取りは驚くほど軽い。

 ジャージの伸縮性が彼女の動きを助け、蓄魔石ちくませきが体温を一定に保っているため、夜風の冷たさも感じていないようだった。

 三人は衛兵の視界の死角を縫うようにして西門を突破し、街道へと出た。

 リスタの街を囲む森からは、夜行性の魔物の遠吠えが時折聞こえてくるが、カイトたちは足を止めることなく、最短ルートで『沈黙の廃坑』を目指す。

「……カイトさん。前方、街道沿いの茂みにシャドウ・ラットの集団を確認。……ですが、私たちの移動速度と遮蔽しゃへい効率が上回っています。……戦闘によるタイムロスはゼロと判断します」

 リアが冷静に周囲を索敵しながら、カイトの歩調に合わせて報告する。

「……無視しろ。……今は経験値レベルを稼ぐのが目的ではない。……太陽が昇り、他の採掘者や冒険者が活動を始める前に、あの崩落現場の奥へ到達することが最優先だ」

 カイトは自身の『等価の天秤』のグリップを確かめながら、視線を廃坑のある山影へと固定した。

 今の彼の頭にあるのは、効率的な移動ログと、深部に眠るミスリル原石の座標データだけだ。

 一時間ほどの強行軍を経て、三人は再び廃坑の入り口へとたどり着いた。

 昼間は冒険者や作業員で賑わうはずの場所も、今はただ黒い口を開けて彼らを待っている。

「……着いたわね。……ここから先は、またあのジメジメした石の迷路かしら?」

「……いや、今日は一気に最深部まで潜る。……エリザ、お前の魔法は岩盤を砕くための『振動』として使う。……殺傷能力は必要ない。一点に高周波の衝撃を叩き込めるよう、出力を調整しておけ」

「……高周波……? よく分からないけれど、要するに細かく震わせればいいのね? ……ふん、真祖をツルハシ代わりに使うなんて、相変わらず贅沢な管理者様だこと」

 エリザは呆れたように肩をすくめたが、その瞳には未知の『作業』に対する奇妙な期待の色が浮かんでいた。

「……リア、案内を頼む。……一番奥の、あの『匂い』の源流までだ」

「……はい、カイト様。……こちらです」

 三人の漆黒の影が、廃坑の暗がりへと吸い込まれていく。

 外の世界では、ようやく東の空が僅かに白み始めようとしていた。

 他の誰かが目覚める頃には、カイトたちはこの廃坑の誰も知らない「定義外」の領域へと足を踏み入れているはずだった。

 不揃いな三人の歯車が、暗い坑道の中で静かに、そして力強く噛み合う。

 銀貨八枚の現状を打破するための、静かなる侵攻が始まった。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

もしこの「ジャージ管理者の等価交換ファンタジー」を面白いと思ってくださったら、ぜひ評価の「星」やブックマークで応援していただけると、カイトの魔力と作者のモチベーションがリペアされます!

よろしくお願いいたします。

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