直滑降
「・・・はぁ・・・。足首と脛と大腿四頭筋と、僧帽筋が痛い・・・。」
「なんだそれ。」
昼食を食いながら、村上と駄弁っている。
クラス毎に休憩を取るから、Cクラス以外の人間は、このラウンジには居ない。
「っていうか、なんでここの飯は・・・・。まぁ、味が濃いな。」
「塩っ辛いというか・・・これは煮込みすぎだな。」
「ホントな。大根ぐずぐずだし。豚汁っていうの?これ。」
豚汁とカレーライスって・・・。合わないだろ。
文句を言いつつも、昼飯を平らげると、ゲレンデに向いているベンチでコーヒーを飲むことにした。
「これ、良いよな~。なんか、青春、って感じで・・・。」
「村上~。おっさん臭い事言うなよ。」
「でもなぁ・・・。こういうのって、女と一緒に来たいよな~。」
「それな。いや、ほんまに。」
目の前を小さな子供たちが器用に滑っていく。
俺も昔はあんな風にはしゃいでたんだろうな・・・。
「ジャコ、ほら、あそこ。」
「ん?」
目線の先にはDクラスのメンバーがゆっくりと滑っていく。
まるでノルディックスキーのような感じで、滑るというより歩いている感じだな。
「あれは・・・楽しいのか?Dクラス。」
「それなりだろ?初心者が山頂から滑り降りるなんてできんだろうし。」
「午後は俺たちもあれ、やるみたいだぜ?」
「・・・これは、筋肉痛まっしぐらコースだな・・。」
で、午後は本当にノルディックスキーだった。
全員、専用のスキーに履き替えてロッジ前に集合だった。・・・これって、Dクラスが使ってたやつだろ・・濡れてるし・・。
スキー板は特殊な作りで、板の裏はギザギザになっていて・・・、足を踏ん張って前に進む事が出来るんだな。普通の板より少し細い気がするが、ま、大丈夫だろう。
集合して・・・皆の前で指導員が話をしている。正直、周りの家族連れ達がうるさくて、何を言っているかが分からない。
「村上・・・。なんも聞こえん。」
「・・・前について行こう・・。」
「だな。」
5分ほど身振り手振りで話をしていたが、急にリフトへ向かって歩き出した。
「なぁ、村上、あのリフトってさ、途中で降りる場所あるよな?」
「・・・無いだろ?・・山頂まで・・・。」
「・・・・・イヤなんだけど・・・。」
とは言え、ここで一人で待ちぼうけする訳にもいかないよな・・・。
で、俺は、人生で初めてリフトに乗ることになった。
一人乗りのリフトは意外と怖くて、ずっと柱に掴まったままだった。
・・・こんな所を神崎さんに見られなくてよかった・・・。
あ、別の班で良かったのか・・・。いや、だけど・・・。ん・・良かったのか・・・。
見る見るうちに、山頂が近づいてきた。
・・・降りれるのか?大丈夫だよな!
リフトが頂上に着くと、自然と足が雪面について、足に力を入れるとそのまま前に押し出された。
・・・意外と、簡単だったな・・・。
俺が安堵している間にも、Cチームは続々と頂上に集まっていた。
・・・また、指導者が何やら話をしている。流石に頂上は声が聞こえるな。
「・・・じゃ、降りるから、真っすぐついて来て!」
・・・は?真っすぐって?
指導者がいきなり方向転換して、直滑降で滑り出した。
「ちょ!!!え?みんな!マジで!」
ペンギンの様に続々と谷の底に消えていくDチームのメンバーたち・・・。
「ジャコ、先行くぞ!」
「ちょ!村上で!!」
やばい・・怖がっていたら・・最後の一人になってしまった・・・。
俺は覚悟を決めて谷底へ滑り出した。
これ!雪じゃない!!氷じゃないか!!
クロスカントリー用のスキー板は、エッジが効きずらい。直滑降で滑り降りる分には問題ないのだが・・・。減速したいのに、減速出来ない・・・コワい!!!
凸凹の雪面を滑り降りながらも、何とか下までたどり着いた。
・・・・転んで骨折・・とかが脳裏によぎったけど、なんとかなったな・・。
先頭集団はすでに森の中の道を歩き始めていた。
森の入り口では、村上が待っていてくれたので、感謝の言葉を述べたあとで森の中へ歩みを進めた。
「なぁ、村上。」
「なんだ?」
「やっぱりこれ・・・面白くないな。」
「・・・な。」
その後、もう一回頂上まで連れていかれた。




