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T・F・U物語  作者: 狼眼


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雨宿り?いえ殻宿りです

ドドドーン!!


花火が連続して打ち上げられると、辺りが夕方位の明るさになる。


「きゃ!」

「?どうした?」

「顔が・・・。」


バーン


神崎さんが上を見ていたので、俺はその視線を追ってみる。

見上げると、13号館の窓には、花火に照らされた顔がいくつも見えて、花火と言うシチュエーションでなければ、ホラー的な状況に見えないことも無い。


「みんな、ここで見てるんだね。中ってエアコン聞いてるのかしら?」


建物の軒先に入りながら、俺たちと同じような考えの人の多さに驚いている。

しかし・・・。


「でも、見事に男女で等間隔に並んでたね。あれ、何だっけ?柳川理論だっけ?」

「・・・違うわよ、鴨川理論。柳川理論は、確か、武術の人の理論って言ってなかった?黒羽先生・・・。」

「そうだっけ。夏前辺りの授業で聞いた内容だったから、忘れてるな・・・。」

「それ、1年の時の話よ?・・麝香君、1年の時は、授業にしっかり出てたのにね・・。」

「あ・・。知ってた?」

「2年になって、余り見かけなくなったから気にしてたのよ?何してたの?」

「え、何だろう。・・・何も、特に・・・。パチンコとか?」

「・・・ばっかね、破産するわよ?それより、単位は足りてるの?」

「ん、十分。卒業単位の7割くらいは取ってるよ。」

「なら、一緒に卒業できそうね!」


神崎さんの顔が、お説教モードから、普通の笑顔に戻った。

・・・そうか、心配されてたんだ・・・。


しかり授業には出ないとな・・・。


ドドドッドドドッドド!!!


「うわぁ!すごい!!」


幾つもの花火が、視界を埋め尽くすように打ちあがる。

花火1発で、何万円もするって聞いた事があるのだが・・・。俺たちの学費の一部がこんな形で消費されていくとは・・・。金持ってんな、この学校。


「あれ?梨那、ここに居たんだ。」


いきなり後ろから、女性の声が聞こえてきた。

梨那って誰だよ!って思っていると、神崎さんがそれに答えた。


「あら!歌恋!テントで見てたんじゃないの?」


歌恋・・・。あぁ、陸上部の、カレね。


「えぇ、だって、あの辺り、虫がいっぱい飛んでて嫌だったのよ。そっちこそ、どうしたのよ?」

「花火の殻がね・・・。降ってるのよ。この辺り一帯に。」

「マジ!ヤバくね?」

「麝香君が見つけてくれてね・・・。結構な硬さの紙の塊だったわ。」

「・・・麝香・・・?あ!行方不明の麝香じゃん!久しぶりね!!」


・・・カレンさんは、たしか、北川さんか。


「行方不明ってなんだよ!俺は色々あって、学校に行ってなかっただけだ。」

「だぁって、1年の時はよく見かけたけど、2年になったらぱったり。学校辞めたかと思ったわよ。ねぇ、梨那?」

「え!私は・・・。カレンには言ったじゃない!麝香君生きてたって!」

「・・生きてたって・・。普通に必須科目は取ってたし、バイトもしてたから外には出てたぞ?」

「へぇ、麝香ってバイトしてんの?どこで?」

「・・・正門前の、ゲーセン。」

「行かんわ!どうせなら居酒屋とかにすればいいのに~。ただ酒飲み放題ってね!」

「ちょっと!カレン!それより、何か用なの?」

「へ?あぁ、おじゃまって事?・・・でも、梨那、この後、部の打ち上げあるでしょ?出ないの?」

「!あ!忘れてた!!」


神崎さんが急におろおろし始めた。


「・・・さすがに、浴衣じゃ、まずいわよね・・・。」

「そうだね~。家、近いんでしょ?着替えてきなよ。」

「・・・麝香君!!・・・・自転車。乗せて?」


上目遣いで俺に懇願する神崎さんの破壊力は半端ない。花火のフィナーレも忘れてしまいそうだ。


「分かった!なら、急ごうか。」

「うん!ごめんね!」

「きをつけてねぇ~。」


俺たちは、自転車が置いてある通用口まで小走りで急いだ。

途中で神崎さんがこけそうになったので、自然と手を繋いで・・・。


・・・青春っぽい!!


自転車の後ろに神崎さんが座ったのを確認すると、不死身荘まで一気に自転車を漕いだ。

神崎さんが危なくないように、それでも早く・・・。


「麝香君、ありがとね・・。あと、ごめんね?何か急かすみたいになっちゃって。」

「いいから、時間、無いんでしょ?」

「うん!ありがとう!じゃ、また明日ね!」

「うん。」


神崎さんは無敵荘に消えていった。

暫く見ていても、部屋の電気が点く様子はない・・・。あっち側の部屋だな・・・。

・・・ストーカーみたいな事は止めよう・・・。


俺は、汗を流すため、風呂に入ることにした。

服を脱ぐと、一瞬いい匂いがした。

シャツの背中の部分から・・・・。


フルーツ?・・・ローズ系?少し甘い香りが背中から漂っていた。


「神崎さんの・・・。」


俺は、香水の類は好きではない。実家では誰も付けていなかったし、臭いに対する免疫が殆ど無いのだ。

なので、香水の香りを嗅ぐと、鼻が痛くなったり、腹が痛くなったりと、拒絶反応が起きる。


・・・はずだったのだが・・。


「良い匂い・・・だな・・。」


妙にこの香りは好きになりそうだ。

今度会ったら聞いてみよう。

それよりも。


「梨那・・・か。」


今更だが、神崎さんの名前を始めて知ることが出来た。


北川さん!ありがとう!!

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