HANABI
「やばい!早く!・・・。」
とりあえずPCの電源は入れっぱなしで、近場にある上着を掴み玄関から出た。
扉を出て右側へ向かい、自転車置き場へ・・。鍵が・・・、焦ると上手く・・。
「キミ?何してんの?」
「何って、自転車の・・・。あれ?神崎さん?」
「やぁ~っぱり、どうせこんな事だとおもったわ。」
神崎さんは昨日の服とは違い、青系の浴衣を着ていた。
右側の神の毛だけをピンでとめて・・。まんまアニメキャラやないか!!!
「普通さ、女の子に誘われたら、30分前くらいには顔出さない?」
「いや、ほら、時間はちょうどにいかないと、邪魔になるだろ?」
「・・・まぁ、いいわ。ほら、急ぎましょ!」
「分かった・・え、と・・・。あれ?歩いてきた?」
「浴衣で自転車乗れるわけないでしょ?」
神崎さんがこちらに向かってうちわをパタパタしている。
・・・?二人で歩いて行くって事?
「ほら、早く鍵を開けて?・・・後ろに乗ってもいいよね?」
!!!!!!
それって!自転車の後ろから抱き着かれる・・あれか!!!
ガチャ!
「ほ、ほら。鍵が開いたぞ。」
「おっけー。さぁ、れっつごー!!」
神崎さんが後ろに座って、俺の胴体に右腕を回してきた。
マジか!!・・・・やばい・・・秋だというのに、汗が・・・止まらない・・・。
「い、いくよ。落ちないでね。」
「よぉ~し!早くいこー!」
神崎さんを後ろに乗せた状態で、不死身荘の坂を下る。
「きゃぁ!こんな小さな坂でも、スリルあるね!」
「しっかり掴まって。」
背中に、微かに・・・柔らかい・・・ふくらみが!!!!
「麝香君て、見た目以上に筋肉あるのね~。」
「あぁ、研究会で鍛えているからな。」
「ボ研だっけ?何してんの?」
「何って・・・。体鍛えて・・・。いろいろ。」
「何それ!いろいろって。変なの。」
「変なんだよ。ボ研って。ボディービルしたり、ボートに乗ったり、ボルダリングしたり・・・。先輩はボクシングしてたな・・・。」
「ほんとだ、ボが付くスポーツばっかりだね。」
・・・・それか!!
俺は今、ボ研の真髄を知った気がした・・・。
「ほら!こっちの通用口から近道しよ!」
「了解!・・・一旦自転車降りてね。」
「自転車はここに置いておくと良いわ。あっちの方は置く場所もないからね~。」
通用口の柵に自転車を括り付け、神崎さんと歩き出す。
バァーン!!
かなり近い場所で破裂音がした。
「あ、やば!始まっちゃったわよ!早く行きましょ!!」
「了解!」
浴衣と下駄でグラウンドに向かって、神崎さんが小走りになる。
流石陸上部と言ったところか、あんな走りにくい恰好でもバランスよく、スピードも速い。
ドォーン!!
一瞬、当たりが赤色に染まる。
「ほら!ここ!ここで見ましょ!!」
確か、この時間に、神崎さんが働くテントに遊びに行くって話だったが、花火に誘われてたんだな。
・・・うれしいじゃないか!!!
辺りはまだ真っ暗にはなっていないが、打ち上げられた花火の色が、夜空にきれいに映えている。
学内のグラウンドから放たれた花火が、地面を震わせるような破裂音と共に再び夜空を染める。
真上で破裂する花火が、下っ腹に響いて、体全体で花火を楽しめそうだな。
「すごい!近いわね!!手を伸ばせば届きそう!!」
どこかの歌の歌詞の様なセリフがさらりと出てくる。
言葉を返そうと神崎さんを見ると、真上を見上げながら、目がキラキラしているな・・・。
圧倒的な迫力で、花火は咲いては散り、散ってはまた咲く・・・。
神崎さんの顔も赤や黄色に染められて、見ていて飽きないな・・。
「へっ!なに?私、何か変だった?」
「え!・・そんなんじゃ・・・。」
神崎さんがいきなりこっちを向いたので、目が合ってしまった。
俺は照れ隠しで再び空を見上げる。
「綺麗だね・・・。」
「そうだな。」
・・・・コン・・・。
ん?何の音だ?
花火の炸裂音に紛れて、小さな、硬いものがぶつかる音が聞こえた。
・・・コン!
まただ!
気になって、辺りを見回すが、暗くて良く見えない・・。
ドォーン!!
花火の一瞬の光の中で、何かが動くのが見えた。
「ちょっと、ごめん。」
「ん?どしたの?」
俺は立ち上がり、動いていた物に歩み寄る。
何か、丸い、何かが・・・。
「アツ!!」
手を伸ばすと、かなりの熱が俺の指を襲ってきた。
・・・これは。
「・・・お待たせ。」
「何かあったの?」
「ほら、コレ・・。」
俺は、テニスボールを半分に切ったような形の、紙の器?を神崎さんに見せた。
「なにこれ?」
「・・・あれだよ。」
ドドォーン!!
「あれ?」
「花火の殻?」
「落ちてたの?」
「降ってきた。」
俺と神崎さんは、花火を見上げて暫く黙り込む。
「・・・ねぇ、危なくない?」
「・・・だよな。」
その辺の人で、ぶつかったと言っている人は居ないようだが・・・。
「・・日傘・・・でも、持ってくれば良かったね。」
「木の下にでも、移動しようか・・・。」
「それじゃ見えないから、あそこの13号館の入り口あたりで見ましょ?」
少し、辺りを警戒しながら30mくらい離れた建物の入り口へ向かった。




