シツレン
近頃、大学内が騒がしくなってきた。
音ではなく、雰囲気が・・・。
1号館から南門に抜ける長い直線の道の脇に、様々な看板が立て掛けられている・・・。
「よぅ!ジャコ!お前ら、今年はどんなんにすんの?」
「何って何が?」
村上が自転車に乗りながら話しかけてくる。
一体何がどんなんなんだ?
「何って、文化祭!建学際!!なんかするんだろ?」
「ん~。去年と同じらしいぞ?えっと、おでんとフランクフルト?と焼き鳥かな?」
「いいねぇ。喰いに行くわ!」
「ってか、お前んとこは?」
「わかんね。俺らは関わんないからな。普段から部活で忙しいのに、急に何かやれって言ってもな。」
「そか・・・。」
それから色々と話をしながら学食で腹を満たした。
しかし、今年の学祭は・・って言うか、ボ研の屋台は1年がこき使われるため、他の学年のメンバーは自由に散策できるのだ。
俺も今年は学祭を見て回る予定だが、屋台で喰っても金はかかる。腹を満たす事だけを考えるならば、家でインスタント麺でも食っていた方がましだ。
夕方になると、学内は更に騒がしくなっていた。
どうやら、そろそろお笑い芸人が到着するらしい。明日の下見と打ち合わせに来るらしいのだ。
なんでも数年前のM1チャンピオンらしい。
・・・あ、俺も知ってる人たちだ・・。いいな・・お笑いライブ・・・。
ま、明日の夜、初日のメインイベントらしいから・・・わざわざ出向くのも面倒な気がしないでもない。
誰かに誘われたら行こうかな・・・。
「さて・・・今日はボ研も、バイトも無いから・・・。どうすっかな~。」
ライトアップされた学内の道を下りながら、自分の部屋へと向かった。
「あら、麝香君!」
俺を正しい名字で呼ぶ、この女性の声は!
「あぁ、神崎さん。神崎さんも今帰り?」
「うん、明日の準備も終わったしね。」
「神崎さんは陸上部だったよね。何すんの?」
「私たちは、毎年同じよ?グラウンドの道沿いでお酒を振舞うの。って言っても、ただ単に缶ビールの販売なんだけどね?」
「あぁ・・それ、楽でいいね!」
「最初はね?でも、だんだんとビールを飲みだす部員が増えてきて、集客のピークに来る頃には宴会状態よ?2日目以降はもっと最悪。二日酔いのメンバーは勝手にいなくなるわ、みんなで飲むもんだからビールが足りなくなるわ・・・・。マネージャーの私たちが貧乏くじを引かされるのよね。」
「ははは、それは大変だね。でも、夜も営業するんだったら、お笑いライブも見れるんじゃない?」
「ん~。無理ね。ライブを見に行く人たちって、結構ビールを買っていくのよ。一番忙しい時だと思うわ。」
何処も結構忙しそうだな・・・。ま、俺は、1年の時に頑張ったから、今年はゆっくりさせてもらおう・・・。
「ねぇ、麝香君は夜の建学祭には来ないの?遊びに来てくれたら、おつまみのポテトフライくらいサービスするわよ?」
「ん~・・・。考えておくよ。」
「ん!待ってるね!カレと一緒に売り子してるから!」
・・・まぁそうだよな・・・。この顔立ちでアニメ声・・。彼氏がいない方がおかしいだろ・・・。
・・・気落ちなんて・・してないさ。
陸上部に彼氏がいたのか・・・。
極力平静を装って手を上げ、別れの挨拶をする・・・。
はぁ・・・・ちょっとは・・・ほんの少し、塩の粒ひとかけくらいは・・・俺にもチャンスがあると思ていたのは・・・。いや・・・。最近、少し話をしただけなのにな・・・・。惚れっぽいのかな、俺って。
「帰って飯食お。」
テンション駄々下がりの状態で部屋に戻る・・・・。
はぁ・・・。ため息しか出ないわ・・・。




