オラッ!
ボン!
低い音を立てながら車の扉を閉める。
昔、ベンツに乗る理由ってやつで「乗りやすいから」とふざけたことを言っている奴を聞いた事があった。が、その理由が分かった気がする。
揺れない・・。静か・・・。安定感・・・。加速性・・・。
これが高級って事が・・・。
車に感動していると、いつの間にか大学近くの駅前までやって来ていた。
「ここで良いんじゃない?」
「おう、そうだな。ジャコ!ここでいいだろ?」
「僕は、大学生になってから、外食は殆どしていないので、どこが良いかわかんないですよ。」
「よし、決定~。」
車は煌びやかなネオンで装飾された駐車場へ入っていく。
「ジョジョ?」
何か、新しい能力が発動しそうな店の名前だな・・・。何屋さんだろうか?
車の外に出ると、牛肉の脂の臭いが漂ってきた。
・・・焼肉か・・・。
不死身荘のバーベキュー以来だな・・・。
「ジャコ、行くぞ~。」
「ほら、麝香君!行くわよ?」
・・・やっぱり姉弟にしか見えない・・・。
店内に入ると、何かパンクな感じの焼き肉屋だった。
店員の制服は学ランっぽくて、ガタイの良い男性が多く勤めていた。ボ研に入っても十分やっていけそうだな・・・。
「いらっしゃいませ!オラァ!!!」「オラオラァ!!!」
・・・なんだ、この店・・・。
社長のお母さんが色々と注文を始めると、すぐに大皿に乗った肉が運ばれてきた。
この店、学生街の近くにあるくせに、食べ放題が無いだと・・・?
炭で焼く肉は、初めてかもしれない・・・。備長炭だろうか?
微かに赤みが残る感じの肉が、俺の更に配られる。
「これくらいが美味しいのよ?」
言われるがままに、口に運び入れる・・・。
肉が・・・溶ける・・・。
肉が甘いというのは、こういう事だったのか・・。
肉の美味さに感激しながらも、控えめに味わいながら食べていく。
「でね?大学に入る前の幸次君はね・・・・。」
「あぁ、もういいから、そんな事。」
社長の昔話・・・。社長にも歴史ありって感じだな・・・。
どうやら、子供の頃から落語の世界に関わっていたらしく、弟子入りも難しい事ではないらしい。
こんなゲーマーが落語家になったら、どんな落語が出来るんだろうな。
「でも、落語家の弟子になったら、ゲームも出来なくなるんじゃ・・。」
「ジャコ!!」
「幸くん?ゲームって・・・。」
「違う!ほら、ジャコの部屋に会っただろ?あれ!あれの事!!」
「え?・・・えぇ・・。」
「なんだ。私てっきり、学校にも行かずにゲームセンターに入り浸っていたのかと思っちゃった。」
「・・・ははは・・。まさか・・。」
まさか、そこまで見抜いているとは・・・。
「大学に入る時言ったもんね?落語の勉強もしっかりするからって。」
「そりゃ、もう。もちろん、あれさ。」
社長、言葉になってないっす。
色々な話をしながら、1時間ほどの食事会が終わった。
焼肉の臭い全快のまま、ベンツに乗るのは憚れるな・・・。
「さ、お腹いっぱいだし、行きましょうか!」
「ふぅ、喰ったぁ~。」
「ご馳走様でした。美味しかった~。」
ちょっと気を使いながらもベンツに乗り込む。
ベンツは静かに大学への差かを登り、静かに、そしてスピーディーに不死身荘へ近づいて行った。
「あ、あの・・・今日はありがとうございました。」
「いえ、せめてものお礼ですので。こちらこそありがとうございました。」
「ジャコ、またな。」
社長の荷物は、昼間の内に車に積み込んでいたのだろう。
俺は、不死身荘の前で社長の車を見送った。
・・・社長、立派な落語家になってください・・・。
んで、タダで寄席に招待してください!!!!




