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T・F・U物語  作者: 狼眼


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65/67

三菱・・・三ツ矢・・・。

不死身荘の入り口をくぐり一番奥の部屋へ・・・。

薄暗い通路の中央付近には、マッチョな男性の等身大ポスターが張られており、夜更けにここを通ると嫌な夢を見そうだ。


しかし!今日は違う!

同年代、同じ学部、同じ学科の高嶺の花!

神崎さんと30分近くも2人きりで話しながら歩いたのだ・・・。


もう、アレはデート!!


・・・何てな。


そんなバカみたいな幻想は抱くことは無い。

高値の花は、あくまでも見るだけのものなのだ。期待をしてはいけない・・・。


大丈夫、俺は浮かれたりなんかしていない・・・。大丈夫。


俺はスキップをしながら部屋にたどり着いた。・・・うん。大丈夫だ。


ベルトループに引っ掛けてあるカラビナを外し、部屋の鍵を取り出す。

・・・カス・・・


予想通りカギはかかっていなかった。

社長が部屋に居るのだ。


「ただいま帰りまし・・・た?」


俺は、目を疑った。

目の前には、30代?いや、若く見えるが40代?の女性が座っていた・・・。


あれ?部屋を間違えた?


漫画の様に、一度部屋をでる・・・なんてことはしない。

何しろ、異様なのは部屋の中の女性だけなのだから。


「え?・・・だれ?」


俺が女性をガン見していると、女性は立ち上がり、俺に頭を下げてくる。

え?何?何かの恩返し系?


「長い間お世話になったようで・・・。」


女性は、見た目に違わず若い声をしている。

いや、本当に若いのか?

とは言え、俺は驚いたまま、まだ声は出ない。


「ジャコ・・。」


どこかで聞いた事のある声が、女性の近くから聞こえた。

・・・誰?・・・って、社長か・・・。


「社長?・・・あ、そこに居たんですね・・。」


女性に目を奪われていたから気付かなかったが、女性の隣には社長が座っていた様だ。

って事は・・・。

社長が女を連れ込んだ?

・・・いや、お世話になったって言っていたな・・・。何が?


「あの、幸次がお世話になりっぱなしで、申し訳ございませんでした。」


幸次?こうじ・・・こうじ?誰?

ここに居るのは、俺と・・・社長・・・。社長?

社長、幸次って名前だったの?


俺は、もちろん知っていますよと言うくらい、ポーカーフェイスを決め込んだ。


「いえ、特にお世話なんてことはしていませんが?」

「いえいえ、衣食住の衣以外でご迷惑をおかけしておりましたので・・・。」


衣以外って初めて聞く表現だな。


「って事は、社長のお姉さんですか?!」

「ジャコ、違う、母ちゃんだ。」

「かあちゃん?・・・お母さん?・・・うそ・・・。」


社長の外見から・・いや、社長は大学生・・・で、留年を繰り返して、そろそろ期限切れって事は・・・。恐らく社長は26歳前後!

その母親となると・・・。50近いんじゃないか?・・・ないない・・・。


「嘘を言ってどうする。・・・いや~、バイト先から足がついてな・・・。」

「こら!足が付くとか言わない!」


・・・社長が怒られるなんて・・・。


「いやぁ、今日の昼頃、ここに尋ねてきてな・・・。すまん。」

「いえ、それは良いんですが・・・。社長はこれからどうするんですか?」

「ん~。まずは弟子入り・・・。小間使いとして勉強させてもらいに行く事になるよ。」


本当に落語家になるんだ・・・。すごいな・・・。


「所で麝香さん、あの・・・ぶしつけではございますが、こちらをお納めください・・・。」


社長のお母さんが、封筒を渡してきた。

・・・そこそこの重みがあるが・・・。中身は?


!!!金!!!


思わず数えだしたくなるのをぐっとこらえ、封筒を突き返す。


「いえ、これはいただけません。特に俺が何かをしたという訳でもないですし。」


そう、ここは礼儀として、日本人として、一度断る事が大切なのだ。

心の中では『いえ、そんな事を仰らず!』とかなんとか言いながら、もう一回俺にくれ!!!と叫びながらではあるが・・・。


「ジャコ、それは受け取ってくれ。ほら、行ってただろ?バイト代が入ったらって・・・。」

「まぁ、確かに言ってましたが・・・。」

「それだと思ってくれ・・・。」

「でも、こんなに?」


俺の目算では15万円くらいは入っている。下手すると20万?


今日、3万5千円失った俺としては、非常にありがたい申し出であった。


「そういう事であれば・・・・。頂いておきます・・・。」

「じゃ、そういう事で・・・。」


そう言うと、社長が立ち上がり、握手をしてきた。


「え?もう行っちゃうんですか?」

「・・・それもそうか・・・。飯でも行こうか?」

「それは良いわね。お礼の意味も込めて、ね?」

「そうですか?それでは、何処に行きます?」


近場だと、中華料理の娘々しかないけど・・・。


「いいから、ほら、車に乗って・・。」


車?えぇっと・・・。

不死身荘の前には、真っ白なセダンが止まっていた。

車の正面に掲げられた三菱マークみたいなのが印象的だ・・・。


って!ベンツかーい!!!


その日、俺は生れてはじめてベンツにのった・・。


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