完済!
ほんの数時間前まで、満員御礼だった俺の部屋が、今では俺一人・・・。
同居していたのが、名前も知らないおっさん・・・。先輩だったが、いなくなると少しは寂しいものだ。
社長のお母さんが残していってくれた封筒が気になり、中を覗き込む。
・・・束になっていて、よくわからないな・・・。
封筒から中身を半分だけ出して、ゲーセンのバイトで慣らした札の数え方で万札を数えていく・・・。
・・・5・6・7・・・10・・13・14・15・・・。15!!
家賃で換算すると、4カ月分くらいだろうか・・・。
こんなに貰ってしまってよかったのだろうか?
とは言え、貰った物は有難く使わせてもらおうか・・・。
で、俺はその封筒を握りしめ、大家さんのお宅を訪問する。
「・・・こんばんわ・・・。」
「あら?麝香さん、お久しぶり・・・。」
「2か月ぶりですね・・・。」
「そうね?で?家賃は持って来たの?」
「こ・・・こちらに・・・。」
ガタイの良い大家さんが、上腕二頭筋を見せつけながら威圧してくる。
3か月分の家賃の金額を数え終わると、鋭い眼光でこちらを一睨み。
「次は、遅れるんじゃないよ?」
「はっはは~。」
「じゃ、お休み。」
「はい!おやすみなさい!」
・・・生きた心地はしなかったが、これでようやく心につかえていた物が取れたような気がする。
社長・・・ありがとう!
さて・・・寝るか。
6畳一間、やっと俺1人の空間が戻ってきた。
腹もいっぱい、家賃も完済。
久しぶりにいい気分で寝る事が出来る!
寝るぞ~!!
・・・で、起きたら14時20分・・・。
ま、今日は必修科目がないから良いか。
しかし・・。フランス語は確実に落としたな・・・。後期が始まってから1回も行っていないとは、自分でも飽きれてしまう。
1限目に有るのが悪いんだよな・・・。
さて、15時10分に向けて学校へ行くか・・・。
次の授業は3号館なので、少し遠い。教室も6階にあるため、中々行きにくいんだよな・・・。
とは言え、楽な授業は出ておかないと、単位がもったいない。
ま、1年で頑張った俺は、まだまだ余裕だがな!
懐が暖かくなった俺は、コンビニで、パンとコーヒーを購入し学校へ行きがてら、遅すぎる朝食を食った。
フランスパンの間に挟まっている甘いクリームが何とも言えず、フランスパンのうまみを引き出している。
甘くなった口を、苦めのコーヒーが洗い流す・・・。
う~ん、最強のコンボだ。
上り坂がきつくなってきたので、自転車を降りて、パンを食い切る。
この、漫画みたいに、無理やり頬張って食べるのがマイブームなんだが、正直見た目は悪いよな。
口の中のフランスパンをブラックコーヒーで攻撃する。
あっという間にふやけたフランスパンは、簡単に咀嚼できる様になるので、これまた強引に飲み込む。
・・・ちょっと喉が痛い。
痛めた喉をいたわる様に、コーヒーで潤しておこうか・・・。
「あら、麝香君じゃない。今から授業?」
「!ふぁ・・・ん。神崎さん。脅かさないでよ。コーヒー吹くかと思った。」
「ずいぶん遅い昼食ね。ちゃんと栄養バランス考えなきゃ。スポーツマンでしょ?」
「・・・栄養学は落としたんで。」
「ふふふ・・あれ、計算が難しいもんね!私も危なかったわ。」
「危なかったって、単位取れたの?」
「んふふ、当然。陸上部のマネージャーとしては、栄養学くらい取っておかないとね!」
・・・神崎さん、陸上部のマネージャーだったんだ・・。
「所で神崎さんも次の授業?」
「うん、経済学ね?」
「・・・ほぉ。難しい奴ですな?」
「そんなことないわよ?最初の段階は大体簡単だもん。続けていけば難しくなると思うけどね。じゃ、あたし6号館だから!」
「じゃ、がんばって。」
「お互いにね!」
・・・頑張って授業に出ようか。




