第46話 ゴール
一足先に3人でゴール前で待っていても、気持ちは晴れなかった。だって、ララが転んだ時の顔が、とても痛そうだったからだ。
無理しないでほしい。これは単位に響く授業ではなく、自由参加のマラソンなのだから。足が痛くて辛い時は、途中で棄権をしてほしかった。
……それでもララは前の人に一生懸命ついて行った。
すごいな。本当にすごい。
遠くの方から歓声が聞こえてくる。どうやら先頭集団が戻ってきたみたいだった。
私は顔を上げる。この目で焼き付けたかった。
ーーそしたら、ララが先頭だった。その後ろには甲斐さんがいる。
それは、まるで魔法のように私の心を震わせた。
手に持っているうちわをくるりと回す。
裏側には「ララ頑張れ!」の文字が書いてあった。実は、リバーシブル仕様だったのだ。
ララが私の方を見て、うちわの存在に気づくと、少し笑ったように見えた。
そのままゴールテープを切る。
わぁっと、一際強い歓声が湧いた。すごい。すごいよ。ララ。
膝小僧は擦りむいていて、血が途中まで流れていた。私は居ても立っても居られずに彼女に駆け寄った。
「ララ!」
「……真子……奈!」
息も絶え絶えだった。地面に尻餅をつく。
「はぁ……、1位取ったわよ。はぁ、ずるい。あたしの応援うちわもあったのね……」
「うん、うん」
「知らなかったわ。けど、嬉しい」
私は泣いていた。感情がぐちゃぐちゃだった。
「……あたし、真子奈のことが好きよ」
あっ。
ララがもう一度、言ってくれた。しかもこの1位を取ったタイミングで。……本当にかっこよすぎるよ。そしてかわいい。
「私も好き!」
迷わずに、そう言うと、ララのほっぺたを両手で包み込むとーー私はキスをした。
目を見開いたララは驚いた顔をしていた。
応援うちわは地面に転がり、「アキ頑張れ!」の文字が書いてある方が上になる。ララの膝小僧の血が私の腕に少し付いていた。
ーーララがゆっくりと目を閉じる。私からの2回目のキス。
いつしようか迷っていたけど、今したくてたまらないからした。
あぁ。やっちゃった。だけど、悪い気分ではなかった。
矢橋真子奈。思えば、自分の名前を気にしていた過去が遠いことのように感じるほど大胆になれた私がいた。恐れているものは何もなかった。ただ、目の前にいる彼女を大事にしたい。愛おしい。そんな気持ちが全身を包んでいた。




