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名前がコンプレックスの女の子を好きになってもいいですか?  作者: 宮野ひの


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第39話 覚悟





「……俺、やっぱりララちゃんのこと好きだわ。最初は友達からで良いから、付き合ってくんない?」


 葉月と一緒に帰ってから一週間後。あたしは浦山ひろきに屋上に呼び出された。


 公園で真子奈とのキス(未遂)を見られてから、今まで何の関わりもなかったのに、今、急に告白された。


 ……やっぱり来なければ良かった。


 あたしは甲斐と浦山ひろきが別れた後、この人が何をしていたかまったく知らない。


 もしかしたら別の女の子に告白したり、付き合ったりしていたこともあるかもしれない。


 あたしがパパ活しているなんて噂を流した張本人なのに、よく告白なんてできるわね。デリカシーがない。ある意味、尊敬するわ。


 浦山ひろきは、きっと自分のことしか見えていない。


 ……この人はきっと、あたしのことなんて、これっぽっちも興味がないんだろうな。自分の欲望を優先、その時のノリで生きている。


 ……こんなふうに、浦山ひろきをすぐに否定することは誰だってできる。


 彼を通して自分を試みることができる人は、きっと一握りだ。あたしは、この人から何を学ぶことができるのだろう。この人の良いところを見つけられるまでに至れば、情け深い性格になれるかもね。


 浦山ひろきは、あたしが何も言わないことを不審に思って顔を上げた。


「……あたしの、どこが好きなの?」


 つい聞いてみたくなった。憶測ではなく、浦山ひろきの生の声に興味を持った。


 彼は首を傾げた後、しばらく口を開かなかった。腕を組んだ後に、ゆっくりとこう言った。


「……まぁ、顔?」


 ……。


 そういえば、入学してすぐの頃、教室でかわいいと言われた気がするわ。


 確かにそうだとしても、普通この場面では、性格のことを言うでしょ。

 あたしは何だか、おかしかった。


「あー、後は、はっきりしているところ?」


 さすがに空気に耐えられなくなったのかフォローするようなことを言った。疑問系で終わっているところが腹が立つわ。


「あなた、あたしがパパ活してるって噂、流したでしょ?」


「……」


 自分の都合が悪くなったら黙る。あたしと目すら合わせない。


 公園で甲斐からもバラされていたけど、あたしは本人の前で事実を突きつけたかった。


 あたしの噂を流した後、あたしに好きだと告白する。この人の気持ちがわからなかった。


「あたし、おじさんとなんて歩いていないわ。あなたのせいで、あたしがどんなに悩んだかわかっているの?」


「……すいませんでした」


 浦山ひろきが素直に謝った。突然の出来事にあたしは驚く。


「もうしません……」


 わかりやすく肩を落としてうなだれた。


 浦山ひろきとは、4月の中旬に、教室でカラオケに行くか行かないかで言い争って、クラスメートの注目を集めた。あたしが、プライドを刺激するようなことを言ったら噛み付いてきた。その時のムカつく気持ちが、でたらめの噂を流すモチベーションになっていたと思うわ。


 点と点をつなげば嫌なやつ、できれば関わりたくない人という印象に強く残った。


 だけど、そんな人にも良いところはあるものよね。素直に謝れる潔さ。まあ、浦山ひろきが謝ったのも形だけかもしれない。気まぐれで素直になっただけかもしれない。

例えば、今、気持ちがむしゃくしゃしていたら、喧嘩をふっかけてきたかもしれない。そう。あたしが教室で彼のプライドを刺激するようなことを言ったように……。


 浦山ひろきが告白した側で、私が受け入れるか決める側だから、結果として、そう言わざるを得なかったのかもしれない。


 いろいろ思うことはあったけど、ここで、すんなり謝ったことに驚いた。何か嫌味の一つでも言ってくるかと思ったけど、すんなり謝られたら、強く出れない。


「……あなたのせいで、最初の友達作りにつまずいたんだから」


「……」


「好奇の目に見られるの。どれだけ気に障ったかわかっているの?」


「……」


「もし、あなたがおじさんとパパ活してるって噂が流れたら、どんな気持ちになる?」


「……すいませんでした」


 浦山ひろきは、ただただ謝る。言い訳することもなく、素直に謝れる人はじつは一番強いのかもしれない。


「……あなたの告白を受け入れることはできないわ。ごめんなさいね」


 そうやって告白を締めた。あたしが謝る必要はなかったのに……つい口にしてしまっていたわ。


「……わかった」


 浦山ひろきは、あたしにOKをもらえると思っていなかったからか、あっさりと引き下がった。


「……罪滅ぼしじゃないけど、困ったことがあったらいつでも言って。俺にできることなら何でもするから」


 そう言うと、颯爽と屋上から去っていった。

 ムカつく。そんな言葉を残されたら、あなたがいい人に見えてくるから。


 ……だけど、浦山ひろきはすごいわ。絶対に断られるであろう相手に告白することができるんだから。


 そういえば、あたしが中学の時にもいたわ。脈なしの相手に告白できる男子や女子。

聞いた話によると、自分の中で想いを押し留めておくことができなくなったから、行動に移すというらしい。


 あたしは数人の男子に告白されたことがあるけど……そういえばあたしから誰かに告白したことはないわね。


 あたし、真子奈にキスしたけど……好きって気持ちは伝えていないわ。


 キスしたからって、自動的に好きという気持ちが伝わっていると思ったのかしらね。あたしったら、なんてこと……。


 くしくも浦山ひろきに知らされた。面と向かって相手に気持ちを伝える大切さについて。


 真子奈のことが大好き。思っているだけでは相手には伝わらない。それは、とても悲しいことのようにも思えた。


 ーーあたしは覚悟を決めることにした。

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