第34話 その後の二人
<矢橋真子奈side>
観覧車から降りた後、魔法が解けたようにいつも通りの私たちになる。ララは今の状況を振り返ることもせず、待たせている他の4人を心配していた。
爽やかな風を感じて、冷静になった今、私はララに聞きたいことがたくさんあった。
それは、「なんでキスしたの?」ということ。
他にも、「私たちの関係って何? 友達? それとも……」などなど。
ララの背中を見ながら、さまざまな思いが駆け巡る。
ララは高嶺の花だ。こんな私が気軽に触れてはいけない存在のように思える。
ララのファーストキスの相手が私で申し訳ない気持ちがあった。
だけど、ララが顔を近づけてきた時、茶化したり避けたりするような真似は絶対にしたくなかった。きれいな瞳に吸い込まれた私は、「ララとキスしたい」と心から思ってしまった。
……ララはどんな思いで私にキスをしたのかな。……気になる。もう少し、二人きりでいたかった。
私の思いとは裏腹に、ほどなくして4人と合流した。すごく待たせたように思うけど、各々が遊園地を満喫していたようで、私たちをとがめる人は誰もいなかった。
「立花さん、体調大丈夫?」
アキが心配そうにララに声をかけた。
「少し休んだら良くなったわ。葉月、ありがとう」
「ララちゃーん! くるくる回るアトラクション楽しかったよー! 風が気持ち良かったー! ってか二人、ベンチにいなかったけど、どこに行ってたの?」
飯塚さんがララに軽い調子で聞いた。
「……観覧車に行ってたわ」
「えー、ずるい!! 後で私とも乗ってー」
「良いわ」
「イェーイ!」
飯塚さんははしゃぎつつ、ララの肩を楽しそうに組む。
普段なら少しモヤモヤするところだけど、何故か私は落ち着いた気持ちで二人を見ることができた。
何故だろうと、自問自答してみれば、「ララとキスをしたからかな」という結論に辿り着いた。子どもの私が、大人のような心の余裕を持つことができた。
なんだか不思議。
ララと付き合っているわけでもないのに。
友達同士であることには変わらないはずなのに……。
◇
その後、みんなでお昼ご飯を食べて、アトラクションに乗った。
グーチョキパーで隣に乗る人を決めたら、アキや凛香ちゃん、そして飯塚さんとも隣になることができた。
不思議なことに……ララとは一度も隣にはなれなかった。
結局、観覧車は時間の都合で再度みんなで乗ることができなかった。最後に、アキが「また、みんなでどこか行こうよ!」と笑って締めたことで解散となった。
家に帰ってからも頭の中はララ一色だった。お風呂に入って、ベッドでごろんと横になった後、明日からどういう顔で会おうかと一人ドキドキしていた。
しかし、次の日。ララは学校に来なかった。
そういえば、昨日、遊園地で具合が悪いと言っていた。もしかして、疲れが溜まって、体調が悪化したのかな……。
「立花さんどうしたのかなー」
「うん。心配……」
アキともララのことを話していた。
休み時間にいてもたってもいられず、ララにメッセージを送った。
『ララ、大丈夫? 具合悪い?』
返信は、お昼休みに返ってきた。
『熱出たから休んだの』
『そっか! お大事にね』
私が返信をかえしたら、すぐにメッセージが返ってきた。
『真子奈にお願い。あたしのストレス発散ノート、今、机の中にあるの……。悪いけど、今日あたしの家に持ってきてくれない?』
良いよと返事を打ったことで気づく。
……あれ、そしたら、ララと会える? あれ。これって、もしかして、二人きりになるってことじゃない?
いやいや。不純すぎる! それに、今日は親がいるかもしれないし。それに、レトがいる!
私ったらララが具合が悪い時に、何てことを考えているんだろう……。
反省しつつも、私の意識は放課後だけに向いていた。
◇
先生の話が終わるや否や、椅子を引く音があちこちで聞こえた。
私はララの机の中にある「ストレス発散ノート」をカバンの中にしまい、足早に教室を出た。
ララの家は、一度しか行ったことがないけど道はしっかり覚えていた。拍子抜けするほど、すんなりとつくことができた。相変わらず、立派なマンションだなぁと思った。
エントランスに入り、インターホンを使って、ララにオートロックを解除してもらう。エレベーターを使って16階で降り、もう一度、部屋の前でインターホンを押したら、ララがドアを開けてくれた。ララはマスクをしていて、おでこには冷却シートが貼ってあった。髪型はツインテールではなく下ろされていた。
「……ララ、大丈夫? あのこれ、ノート持ってきたよ」
「ありがとう。助かったわ」
ノートを受け取った後、こほこほと私から顔を背けて咳をする。




