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『前世』で僕は、とある国の王族の嫡男として生を受けた。


そして父王の崩御後、王に即位し国を治めることになる。


夢に見るのは、即位する前のまだ王子だった頃の話だ。


~~~~~


幼少期から僕は、王子として振る舞わなければいけないことに窮屈していた。


度々開かれるお茶会や舞踏会に参加すれば、多くの令嬢が僕に群がってくるのだ。


ーー殿下!次は(わたくし)と踊ってくださいませ!

ーー違うわ!次は私よ!


僕を巡って、ぎゃあぎゃあと騒ぐ令嬢たち。


……はっきり言って、かなり迷惑だし不快だった。


でも、立場上それらを無下にするわけにもいかなくて。


ーー……順番を守っていただければ、ちゃんと皆さんと踊りますので。ね?


ちょっと優しくすれば、令嬢たちはすぐさま大人しくなる。


……王子の肩書きにしか興味のない、卑しい女。


僕に近づいてくる令嬢たちは皆そうなのだと思っていた。



あるとき、そんな僕にも婚約者ができた。


……もちろん、政略結婚として親が勝手に決めたものだ。


相手は名のある公爵家の令嬢で、何度か社交界でも見かけたことがあった。


自ら僕に近づいてくることはなかったものの、僕と目が合う度に頬を赤らめ、目を背けていたのが印象的だった。



そして、彼女は……まるで宝石のような、美しい蒼色の瞳を持っていた。



彼女には他の令嬢とは違う何かを感じていたが、今回の縁談の話が持ち上がったことで、それは僕の気のせいなのだと悟った。


……彼女も、王子の婚約者という称号に目が眩んだに違いない。


そう考えていた僕は、どことなく彼女を警戒するようになった。


ーー殿下!あの……!

ーー……なんだ。

ーーっ……いえ、なんでもありません……


彼女は常に緊張している様子で、肩や手をビクビク震わせていた。


こちらとしては普通に振る舞っているつもりでも、彼女には冷たく見えていたかもしれない。


ーー……そんなに緊張しなくてもいい。


そう声をかけると、彼女はパッと華が咲いたような笑顔を見せた。


こんな風に、ある程度の距離感を保ちながら、でも警戒は怠らずに彼女と接していた。



そんな中、成長するにつれて、度々彼女の黒い噂を耳にするようになった。


……やはり、ろくでもない女だったのだな。


失望はしたものの、彼女の前では普段通りに振る舞い、噂については知らないフリを続けた。



そして、僕の運命を変えた日。


その日、僕は誰にも何にも言わず、一人で城下に出向いた。

度重なる公務に飽き飽きしていたため、こっそり城を抜け出したのだ。


当然、民に王子だとバレないよう変装もした。


街の市場を歩いていると、そこには僕の知らなかった世界が広がっていてとても新鮮だった。


すっかり夢中になっていた僕は、人の流れに乗り遅れてドン!と誰かにぶつかった。


ーーあ……!


僕とぶつかった人がその場に倒れ込む。


やばい、と直感した僕はすぐにその場から離れようとした。


が、しかし、


ーーちょっと!アナタでしょ、ぶつかったのは!ちゃんと謝りなさいよ!


倒れていた人が、咄嗟に僕の手首を掴んで大声で叫んだのだ。


……初めてだった。僕に媚を売らず、対等な人間として話しかけられたのは。


ドクン、と大きく胸が高鳴る。


……なんだろう、この気持ち。胸がギュッと締め付けられるような……


俗に言う一目惚れだとわかったのは、城を抜け出したことがバレ、従者に連れていかれた後のこと。



これが……後に、僕の妃となる女性との出逢いだった。



それから僕は、城下で出逢ったあの女性のことが忘れられず、あらゆる手段を用いて女性の素性を調べ上げた。


そして、秘密裏にその女性と逢瀬を重ねる一方で、ますます婚約者への当たりが強くなっていった。


ーー……殿下?どうされましたか?

ーー……僕は今、疲れているんだ。だから、君の相手をしている暇はない。……休ませてくれないか。

ーー……承知、しました。


婚約者が引き下がった後も、頭の中はあの女性のことでいっぱいだった。


……彼女に、逢いたい。


そんな想いを、日々募らせていった。



それからしばらく経ったある日、従者がこちらへ急いで駆けてくるのが見えた。


ーー殿下!大変です!


従者の様子から、只事ではないと察したと同時に、どこか嫌な予感がした。


ーー……一体、何があった。

ーー実は……()()()が、殿下の婚約者殿に……


それだけで、何があったかを理解するには十分だった。


ーー……すぐに支度を。

ーーはっ!承知しました。

ーーそれと……父王に、謁見の手配を頼む。

ーー……御意に。


……彼女に危害を加える者は、何人たりとも許さない。


このときの僕は、怒りで我を忘れていたように思う。


その後、父王との謁見を果たした僕は、婚約の破棄と……処刑執行の許可を、申し入れた。


ーー……おまえがそう言うのであれば、好きにすればよい。

ーー……ありがとうございます、父上。


こうして許可を得た僕は、すぐさま実行に移るべく準備を始めた。

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