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「雨宮くんの言う通りだよ。私が変わったのは、前世を思い出したから。……まあ、女子たちに変なちょっかいをかけられたっていうのも、原因のひとつではあるけど」

「……変な、ちょっかい?」

「あー、えっと、そこはスルーしてもらえるとありがたいっていうか……」


雨宮くんファンの女子たちに虐められました。

……なんて、口が裂けても本人には言えない。


「私は、前世でちょっとやらかしちゃってね。そのせいで早死してしまったんだけど……」

「……」

「……でも、最期に言いたかったことが言えたから、あんまり後悔はしてないんだ」



ーーレイン、さま……


死ぬ間際に、力を振り絞って放ったこの一言のおかげで、私は悔いを残さずに済んだのだ。



「それで……前世ではできなかった『普通』に生きるっていうことを、今回実践しようと思ったの。……まあ、ざっくり言うとこんな感じかな」

「……そう、なんだ」


私が話している間、雨宮くんはずっと私から目を離さないまま、真剣に聴いてくれた。


彼は少し考える素振りを見せ、



「……じゃあ、次は僕が話す番だね」



すると、雨宮くんの目つきが変わった。


「!」


(いつもの優しい雨宮くんじゃない……!これは、)


私はその目に見覚えがあった。


何故なら、前世でずっと恋焦がれていたあの人と同じ……


(……いや、でもまだそうだと決まったわけじゃない)


彼の話を聴くまでは断定できない。

……そんな、一縷の望みを抱いた。



「さてと……どこから話そうかな」

「……」


背筋を這うように、つうっと冷たい汗が流れる。


「僕は、この世に生まれ落ちた、その瞬間から……『前世』の記憶があったんだ」



~~~~~



気づいたら、僕は誰かに抱かれていた。


ーー元気な男の子ですよ。


その言葉に、女性と男性の喜ぶ声がした。


(僕は、一体……)


つい先程まで、看取られていたことは覚えている。

……そして、そのまま息を引き取ったことも。


王として国の発展に尽力し、役目を果たし終えた。そう思っていた。


(手も足も自由に動かせない。……口も同じだ。喋ることができない。これは……)


ゆっくりと、瞼を開く。


先程喜びの声を上げていた人たちだろうか、僕を抱える女性と、その側に立っている男性の姿があった。


(この人たちは……)


ーーあっ、見て。目を開けたわ!

ーー本当だ!さあ、その顔をよく見せてくれ。


二人が僕に顔を近づける。


……それが、全ての始まりだった。


僕と目が合った瞬間、二人は何故かおぞましいものを見るかのごとく、僕を拒絶しだしたのだ。


ーーきゃあ!何、この子!

ーー……なんなんだ、この目は。


(目?)


特に、目に違和感はない。


……では何故、こんなにも嫌がられなければいけないのだろうか。


(せめて鏡があれば……)


きょろきょろと周りを見渡したくても、身体が言うことを聞かない。


すると、男性が僕を抱え、少し遠くから見ていた白衣の女性に向かって怒鳴り出した。


ーーどうしてこんな子が私たちの子なのだ!別の子と間違えたんじゃないだろうな!

ーーいえ!そんなことは……!


幸運なことに、目の前に鏡が現れたので自分の姿を確認すると、



(これが……僕なのか?まるで赤子ではないか)


布に包まれた、碧い瞳の赤ん坊がいたのだ。



その瞬間、


自分は死んで生まれ変わったのだということ。

かつ、前世の記憶も残っているということ。


そして……怒鳴っている男性は今の自分の父親で、ベッドで泣いている女性は母親だということを、理解したんだ。



この両親が言うには、この世界では瞳の色は黒か茶色であるのが常識らしい。


……しかし、僕は『前世』と同じ碧色の瞳を持っていた。


そのことが原因で、両親はあまり僕を良く思っていないようだった。


両親は常日頃から喧嘩をしていた。

……僕の瞳のことで、だ。


父親は政治家で、母親は女優。

世間ではビッグカップルとして有名だった。


そんな夫婦の子供が、普通とは違う瞳の色をしているとバレたら……父親は、世間体を気にしていたのだ。


母親は、最初こそ拒絶していたものの、やはり自分の子は可愛いのか徐々に優しく接するようになってきていた。


ーーおまえがあんな子を生むから!

ーーあの子は私の子よ!文句言わないで頂戴!


僕に対する価値観のズレが、両親の仲を険悪にしていった。



僕が生まれ変わって数年経った、ある日のことだった。


母親が僕を連れて散歩していたところをパパラッチに撮られてしまい、週刊誌に掲載されたのだ。


当然、世間では大きな話題になった。


しかも、有名人夫婦ということが幸いしたのか、瞳の色についても肯定的な意見が多かったのだ。


『特別な子』『神に愛された子』等、様々なキャッチフレーズが僕に与えられた。


母親は大喜びだったが、古い考えに固執した父親は政治家という立場もあり、権力を振りかざしてどんどん揉み消していった。


その甲斐もあってか、数日経てば僕のことは話題に上がることすらなくなった。



その頃からだろうか。僕は、毎晩同じ夢を見るようになった。


……『前世』の、夢だ。

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