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鍵を職員室に返し、昇降口を出ると、


「……雪、降ってるね」

「ほんとだ……」


先程まで晴れていた空は一変し、雲に覆われていた。

しかも、雪のオプション付きだ。


「私は折りたたみ傘持ってるから大丈夫だけど……雨宮くんは傘、持ってる?」

「……今日は、夜まで降らない予報だったから、持ってきてないよ」

「!」


……と、いうことは、


(どうしよう。雨宮くんに雪を浴びせるわけにはいかないし……ここはやっぱり、)


「あの、雨宮くん」

「ん?」

「よかったら、この傘使って?私のことは気にしなくていいから」

「え……」


雨宮くんの手を強引に掴み、持っていた折りたたみ傘を押しつけた。


「じゃあ、私はこれで……」


と、すぐにその場を去ろうとするも、


「待って、白雪さん」


すかさずガシッと肩を掴まれる。


(う……)


ゆっくり振り返ると、そこにはものすごく威圧感のある笑みを浮かべた雨宮くんの顔があった。


()()()()()って、僕言ったよね?」

「うっ」

「なんで早々に帰ろうとするのかな?」

「ううっ」


痛いところを突かれ、雨宮くんの台詞がグサグサと心に刺さる。


(だって……)


何と答えればいいのか言葉に迷い、口をもごもごさせていると、


「……傘が一つしかないなら、こうするしかないよね」


雨宮くんは傘を開いた後、グイッと私の腕を引いた。


「!?」

「ほら。これなら問題ないよね?」



見事な相合傘の完成だ。



(こうなるのが嫌だったから、避けてたのに……!)


心の中で盛大な溜息をついた。


(もし、この光景を知り合いや他の生徒に見られたりでもしたら……)


そう考えただけでぞっとする。


ほぼ間違いなく、私は多くの女子生徒から敵意を向けられることになるだろう。


恐怖に震える私とは対照的に、雨宮くんは満足そうな表情をしていた。


「さあ、帰ろうか」

「……はい」


ああ神様、どうか何も変なことが起こりませんように……と、心の中で願うしかなかった。


~~~~~


街の中に出ると、辺り一面クリスマス一色で彩られていた。


「すごく賑わっているね」

「……そりゃそうだよ」



だって、今日はクリスマス当日なのだから。



……そう。私の誕生日は、12月25日なのだ。



そのため、誕生日プレゼント=クリスマスプレゼントという認識だった。


(……それはそうと、)


さすがはクリスマス。

街のいたるところにカップルらしき人たちが見受けられる。


(どこもかしこもカップル、カップル、カップル、って!ものすごく気まずいんだけど……!)


じわじわと嫌な汗が滲んでくる。


「……なんだか、こうして二人で歩いていると、周りからは僕たちもカップルに見えていたりするのかな?」

「んっ!?」


思わず雨宮くんの方を振り返ると、彼はふふっと笑っていたが、


(全っ然、笑い事じゃないんだけど!?)


顔から一気に血の気が引いていくのを感じる。


すると、不意にトンッと肩と肩がぶつかった。


「あっ、ご、ごめん……」

「ううん、大丈夫だよ」


(……距離、近いな)


折りたたみ傘なので、普通の傘よりは比較的小さめだ。

なので、当然距離感もかなり近くなるわけで。


(……そういえば、レイン王子とはプライベートでここまで近づいたことはなかったっけ)


社交の場では一緒にダンスを踊ることはあったけれど、プライベートではそうもいかなかったことをふと思い出した。


私は再び雨宮くんの顔を見上げる。


(やっぱり、見れば見るほどレイン王子にそっくりなんだよなぁ)


しばらくぽーっと見つめていると、ハッと我に返り、


(……って!私ったら一体何を!)


先程引いた血が顔に戻ってくるような感覚。


(ううっ、顔が熱い……)


急に恥ずかしさを覚えた私は、手で顔を覆って俯いた。


そんな私の姿を、雨宮くんが優しい眼差しで見つめていたことに到底気づくはずもなく。


~~~~~


「本当に、家まで送ってくれるなんて……ありがとう、雨宮くん」

「いえいえ、どういたしまして。こちらこそ、傘を貸してくれてありがとう、白雪さん。おかげで助かったよ」


そのまま傘をたたもうとしていた雨宮くんを引き止め、


「雨宮くんはこれから家に帰るんでしょう?なら、傘は必要だよね」

「でも、そんな、」

「いいのいいの!ここまで送ってくれたお礼ってことで」

「……はあ、わかったよ」


雨宮くんは、しぶしぶとまた傘を差し直した。


それを確認したところで、


「雨宮くん、今日はわざわざプレゼントありがとうね。……じゃあ、また」

「うん。またね、白雪さん」


お互いに手を振り合い、家に入ろうと背を向けた直後だった。


「あっ……!」


足を滑らせた私は、ドスン!と派手に転んだ。

その拍子に、かけていたメガネもふっ飛ぶ。


「いったぁ……」

「白雪さん、大丈夫!?」


ぼやけた視界の中で、雨宮くんが差し伸べてくれた手を握り、なんとか身体を起こした。


「ありがとう、雨宮くん……」


お礼を告げるも、雨宮くんからは何の反応もない。


「……」

「雨宮くん……?」

「……白雪さん、その目、」

「目?」


そこで私は、左目の違和感に気づいた。


「!!」



(カラコンが、取れている……!?)



もう時すでに遅し。


カラコンのない本来の目を、一番見られたくない人に見られてしまったのだ。

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