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両親曰く、私が産まれた日はとても雪の強い日だったという。


この地方では、雪は降るものの積もっても1cmが精々なため、大雪など滅多にない。

そのため、この日のことはかなり印象深く記憶に残っているらしい。


そんな冬の寒さに負けないようにと願い、『夏芽』と名付けたのだと、嬉しそうに両親は話していた。


(冬生まれなのに、名前に『夏』が付いてるだなんて、今となってはなかなか不思議な話ね)


と思い、くすりと笑みを浮かべた。



しゃりしゃりと、うっすらと積もる雪を踏みしめながら歩く。


……正直、雪は嫌いだ。


昔から、なんとなく雪に苦手意識があった。


その『なんとなく』が何なのか、どこから湧いてくる気持ちなのかがわからずずっともやもやしていたのだが、今ならわかる。


(絶対、『スノウホワイト』のせいだよなぁ…)


前世の、『スノウホワイト』だった頃の私が蘇る。


散々周りから魔女だの悪女だのと囁かれ続け、最終的には堕ちるところまで堕ちた哀れな私。


(……そんな自分が、嫌で嫌で仕方なかったんだろうな。心の奥深くで、ずっと後悔し続けてたんだ)


奇しくも、『スノウホワイト』は雪を由来として名付けられたものだった。……あくまでもこれは渾名であって、本名は別にあるのだが。


そのことも関係してたんだろう、とぼんやりと雪を眺めながら考える。


はあ……と息を吐くと、白く変化した空気が宙を舞う。


それが風に流され消えるのを確認した後、いつの間にか止まっていた足を再び前へと踏み出した。



~~~~~



「学校にきてほしい?」


陽向からそのような連絡がきたのは、冬休みに入ってすぐのことだった。


「うん。そんなに時間は取らせないからさ、な?いいだろ?」


私は部に所属していないので、長期休みに入るとほぼ自宅に引きこもっている。特にやることもないからだ。


おそらくそのことを知っているからこそ、陽向は連絡してきたのだろう。


「まあ、どうせ暇だからいいけど……」


呼び出される理由も、大体予想がつく。


(でも、なんで学校なんだろう?)


少しの違和感に疑問を抱く。


「よかった!じゃあ俺昇降口で待ってるから」

「わかった」


そこでプツッと電話が切れた。


「……さてと、着替えますか」


よいしょ、とベッドから身体を起こし、クローゼットをごそごそと漁る。


窓から差す日差しが、部屋を明るく照らしていた。


~~~~~


学校に着くと、電話で話していた通り、陽向が昇降口で出迎えてくれた。


「よっ、お疲れ。思ったよりも早かったな」

「まあね。私だってやる時はやるんだよ」

「なんだ、それ」


他愛もない会話をしながら靴を履き替える。


「陽向、今日部活はどうしたの?」

「あー……後で顔は出すつもりだよ」

「ふーん、まあいいけど……で、これからどこ行くの?」

「それは、行ってからのお楽しみ……ってことで」


そう言ってニカッとはにかんだ陽向に、小さく溜息をついた。



廊下を歩いていると、いろんな生徒とすれ違う。


今日部活ある人たくさんいるんだな、と感心していると、ふと思った。


(そういえば、最近私に対して怖がる素振りをする人が少なくなってきたような……?)


生徒会メンバーとしてせっせと働いている姿に何かを感じたのか、少しずつ容姿が『普通』に近づいてきたおかげなのかはわからない。


けれども、


(以前ほど避けられてはいない……と、思う)


中間テストの上位者掲示直後に比べれば、雲泥の差だ。


コソコソと噂されるのがゼロになったわけではないが、誰かとすれ違う度にみんながみんなヒソヒソ話してたあの頃を思えば、間違いなく改善したといえよう。


徐々にではあるが、『普通』に溶け込めるようになってきたと実感でき、思わず笑みが零れた。


「……ふふっ」

「ん?どした?」

「なんでもなーい」

「……なんだか、嬉しそうに見えるけど?」

「え〜?そんなことないよ?」

「嘘つけ、バレバレだぞ?」


二人してあははっと笑い、和やかな空気に包まれる。


(なんだか、久しぶりに心が踊った気がする)


今日はいい日になりそうだ。

そんな予感がした。


~~~~~


「着いたぞ」

「ここって……」


目の前には、もう見慣れた生徒会室の扉があった。


「今年中にやらなきゃいけない業務は冬休み前に終わったはずだよね?なんで?」

「まあ、いいからいいから」


半ば強引に背中を押され、扉を開けて部屋の中に入る。


パンッ!パンッ!


「!?」


突如鳴り響いた破裂音に驚いていると、


「夏芽!」

「夏芽さん!」

「白雪さん、」

「「「誕生日おめでとう!」」」

「え?……え?」


三人から一斉にお祝いの言葉を投げかけられ、思考が追いつかなくなった私はぽかんとマヌケな顔になった。

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