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サプライズ歓迎会後の休日明け、


「あれ?夏芽、その髪……」

「あぁ、結局縛るのやめようと思って」


サラサラと流れる黒髪に指を通す。


前世の記憶を取り戻す前の、ボサボサで傷んでいた髪は見る影もなくなっていた。

ここまで回復すれば、わざわざ髪を縛る必要もないだろうと考えたのだ。


(それに、)


ーーいつもの縛ってるのよりも、下ろしてる方が可愛いわ。


東雲さんに、キラキラと羨望の眼差しを向けられたことを思い出す。


(……褒められて、悪い気はしなかったからね)


若干照れくさくなった気持ちを、長い髪で覆い隠すように靡かせた。


「……俺も、」

「ん?」

「俺も、その髪型……いいと、思うぞ」


陽向はそう言って頬を赤らめ、指でポリポリと顔をかいた。


「そう?ありがと」

「……おう」


そんな私たちの姿を、少し離れた場所から眺めている美形の男子がいたが、私たちが彼に気づくことはなかった。


「……」



~~~~~



季節は、秋も終わりが近づく11月に入った。


そんな時期に行われるイベントといえば、


「もうすぐ球技大会かぁ……」


そう。球技大会である。


お世辞にも運動が得意とは言い難い私にとっては、正直苦痛だ。

前世で培った護身術は、球技とは無縁であるためあまり役に立たないのだ。


それに、生徒会を中心に運営も行わなければいけないので、今はその準備でてんやわんやしている。

私が生徒会に加入してから初めての大型行事ともあって、慣れない業務に追われる毎日を過ごしていた。


「うぅっ、まさかここまで大変だとは……」

「夏芽さん!次はこれお願い!」

「はい……」


弱音を吐いている間にも、東雲さんから新たな書類を手渡される。


東雲さんや陽向は、生徒会業務の傍ら球技大会の練習もこなしているため、私よりも倍以上忙しくしていた。

二人は学年の中でもトップクラスに運動ができると評判なので、各競技から引っ張りだこだった。


~~~~~


「東雲さんっ!是非うちのバレーボールに……!」

「いやいや、ここは私たちバスケが……!」

「あはは……ちょっと、落ち着こうか……」


「陽向!俺たちと一緒に野球やらねーか?」

「はあ?春斗は俺らとドッジボールするって決まってるし!」

「いや〜……どう、だろうな……」


~~~~~


あの時の二人の苦笑いは、今でも忘れられない。


(いつも明るくて元気の塊のような二人が、あそこまでたじろいでいるところは初めて見たな……)


手を動かしながら、ぼんやりとそんなことを考える。


ちなみに私は、卓球に出場する予定だ。雨宮くんも、私と同じで卓球になった。

卓球は個人競技なので、他の競技よりも比較的緩いという利点がある。


団体競技なんて出たら、みんなの足を引っ張るのが目に見えていたから、ちょうどよかった。


「白雪さん、一緒に頑張ろうね」……なんて、雨宮くんは言っていたけど。


(はやく球技大会終わってくれないかな〜……)


と心の中でボヤきつつ、いつの間にか机に積み上げられた書類を片付けていった。



~~~~~



時は流れ、球技大会当日。


予想はしていたが、初戦で敗退した私は他の競技の見回りをしていた。


生徒会の業務を兼ねてもいるが、他の生徒会メンバーの活躍を見てみたいという目的もあった。


この学校の球技大会は、一人一種目は出場厳守となっているが、上限はない。

そのため、複数の種目を掛け持ちすることが可能である。


この規則を利用し、……いや、利用させられたと言うべきなのか……東雲さんと陽向は各種目に駆り出されていた。


人間の体力には限界があるので、全てに出場することは出来なかったようだが、各々三種目に絞って出場するようだ。


(まずは……)


そっと体育館の中を覗いてみると、


「東雲さん!お願い!」

「任せて……っ!」


バシッと軽快な音が響き、そのままボールは床へと吸い込まれていった。


「やった!」

「さすが東雲さん!」


東雲さんがチームメイトとハイタッチを交わしていた。


(東雲さんのバレーボールを見に来たけど……さっきのスパイク、勢いが凄まじかったな…)


このまま決勝までいきそうだな。と考えていたとき、東雲さんが私に気づいたのか、こっちに向かってブンブン手を振ってきた。


(……絡まれると面倒だし、次のところ見に行くか)


小さく手を振り返すと、体育館を後にして次の目的地へと足を踏み出した。

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