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東雲さんのバイト先である服屋を出た後も、忙しなく色々なお店を駆け巡った。
靴屋で今の私の服装に合う靴を探したり、化粧品売り場で東雲さんの肌や髪に合う商品を選んだりと、かなり濃密な時間を過ごせたと思う。
(なんだかんだで、結構買い物しちゃったな)
両手にぶら下がる袋に目をやる。
朝の集合時に抱えていた不安はなくなり、今は充実感でいっぱいだった。
「あー……そろそろ待ち合わせの時間になりそうだから、男子たちと合流しましょうか」
スマホを見ていた東雲さんが顔を上げた。
「そうですね」
「じゃあこっち、着いてきて」
「?……彼らの居場所、分かるんですか?」
何故知っているのか不思議に思い尋ねてみると、東雲さんの肩がピクッと跳ねた。
「えっとね、さっき連絡きたから」
確かに、彼女は先ほどまでスマホと睨めっこしていたが、
「……私には、連絡ないのに?」
自分のスマホを確認するも、特に通知はきていない。
一人にしか連絡がいってないのが妙に不自然だと感じた。
「そ、それは、その……まあ、行けば分かるから!」
言い訳するのを諦めたのか、開き直った彼女は私の腕を掴み歩き出した。
「ちょっ」
がっしりと掴まれた腕を振りほどくこともできず、彼女はズンズンと前に進んでいく。
(一体、何を隠してるんだか)
小さくため息をついた私は、流されるがまま彼女の後ろに着いていった。
~~~~~
「あっ、いた!夏芽さん、二人見つけたよ!」
「あー……確かに、いますね」
まだ距離はあるが、うっすらと二人の姿が見える。
そのまま二人の元へ行こうとした、その時、
「そこのおねーさんたち、ヒマ?」
「時間あるなら、俺たちとあそぼーよ」
派手な衣服を身にまとった男二人組が声をかけてきた。
(こ、これって、いわゆるナンパというやつなのでは……!?)
慣れない状況に戸惑う私とは反対に、東雲さんは二人組に対して明らかに敵意を向けていた。
「私たち、これからツレと合流するんで、あんたたちに構ってるヒマなんてないの」
「まあまあそう言わずに〜」
二人組の片割れが東雲さんの方に手を伸ばすと、パシッと乾いた音が響く。
東雲さんがその手を振り払ったようだ。
「邪魔だって言ってんの。わかんないかなー?」
「このアマ……舐めやがって!」
二人組のもう一人の方が東雲さんに飛びかかる。
「東雲さんっ!」
(ダメ!間に合わない……!)
彼女を守ろうと飛び出すも、あと一歩届きそうにない。
最悪の展開を想像して目を瞑った。
すると、グキッという音と共に、
「いてててて!」
と、男の叫ぶ声が耳に入った。
(何が起こったの……?)
恐る恐る目を開けると、男に対し鋭い目つきで技をキメている東雲さんの姿があった。
「だーかーら!私たちはこれから大事な予定がある……っの!」
「いだだだだ!」
彼女は、さらに男を締め上げる。
そんな一方的にやられている男の姿を見た、先ほど彼女に手を伸ばしていた方の男は、「ヒィッ」と情けない悲鳴を上げる。
(……そういえば、東雲さんって運動できる人なんだっけ。無用な心配だったな)
ほっ、と胸を撫で下ろした。
その後、東雲さんが男を離すと、二人組は一目散に逃げていった。
「ふぅ、一件落着!じゃ、二人と合流しよっか」
まるで何事もなかったかのように、ケロッとした顔をしている東雲さん。
「あの、東雲さん」
「ん?どうしたの?」
「今みたいなことって、よくあるんですか?」
「あー、ナンパ?まあ……うん。そんなに多くはないと思うけど、たまになら、ね」
気まずそうに目を逸らされる。
(たぶん、本当は頻繁にあるんだろうな……)
美人にも、色々と苦労があるんだな。ということを知った。
「さてと、あの二人はどうしてるかな……って、え?」
先ほど二人を見かけた辺りに再び目を向けた東雲さんが、怪訝な顔を浮かべた。
「東雲さん?」
「……はぁ、あいつらも、だわ」
(あいつら『も』、というと……)
なんとなく想像は出来るが、私も確認してみる。
(……やっぱ、そうですよね)
陽向と雨宮くんが、お店の前で知らない女の子たちに絡まれていた。




