18
あの後、諸々の手続きを踏んで正式に生徒会書記となった。
そして、いくつか今後の予定を話し合い、キリの良いところで会議を終え、解散した。
その帰り道、私は陽向と一緒に歩いていた。
「夏芽、ほんとによかったのか?生徒会」
「うーん、正直あまり気乗りはしてないけど……まあ、メリットがないわけではないしね」
「……ふーん、そっか」
そこで一度会話が途切れるも、一呼吸置いた後、陽向が再び口を開いた。
「てゆーか、どういうことなんだよあの条件。なんで夏芽が罰を受けてる設定なんだ?」
「まあ、それはその……そっちの方が都合がいい、みたいな?」
正直なところ、周りからちやほやされるよりも、多少嫌われている方が性に合っている。
というか、前世も含めてそういう目で見られることが多かったためか、何故か落ち着くのだ。
悪女が板についててなんだか切ないが、仕方ない。
他にも、秘技を披露したせいで多くの女子から苦手意識を持たれているし、『罰』なら納得してもらえるのではないか?とも考えた。
あともう1つ、重要な点が、
「それに、あのイケメンや美人が集まってる生徒会の中に、一人だけ地味よりの普通の人間がいるっていうのがもう、ね。おかしいよね!?」
「はぁ?」
「私にとってはある種の拷問なの!不釣り合いにも程があるでしょ……」
だから、同等の地位ではなく、あくまでその下に仕えてるというポジションの方が自然だと思う。のだが。
「……なんだかよくわからねーけど、おまえ今、生徒会のこと『イケメンや美人が集まってる』って言ったよな?」
「?そうだけど」
「じゃあ、俺のこともイケメン……って思ってるのか?」
「まあ、陽向は昔から女子に人気あるみたいだし、イケメンなんじゃないかな?」
「……」
すると、陽向は急に顔を隠し、何やら呻き始めた。
「……どうしたの?」
「……やっべ。ちょー嬉しい」
「え?」
手で顔を覆っているせいか、陽向の声はくぐもっていてうまく聞き取れなかった。
「それよりもさ、副会長さん美人すぎない?一体何者なの?」
そう話題を変えると、陽向は我に返ったかのように顔から手を離した。
「あぁ、副会長ね……あの人、文武両道でスタイルもいいからモデルにスカウトされたこともあるらしいぞ。断ったっぽいけど」
「へぇ〜……なんだか、持ちうる全ての才能を詰め込んだ人、って感じだね」
(顔良し、スタイル良し、かつ頭も良い、運動もできる、ってどういうことよ……神は万物を彼女に与えすぎでは?)
と思ったのも束の間、
「ただ、その……ここだけの話、どうやら家があんまり裕福じゃないらしくて、いくつかバイトやってるって聞いた」
と、陽向はボソリと言い放った。
「そうなんだ……」
先ほど会った時には、疲れが溜まってるような雰囲気を全く感じられなかった。
(隠すのがうまいのか、バランス良くこなしているのか……どちらにせよ、すごいことだわ)
自己紹介したときの立ち居振る舞いも、バイトで身につけたものなのだろうか。もし接客業をやっているのならば、姿勢が良いのも頷ける。
だけど、
(普通の接客業で、あれほどの高貴なオーラを出せるものなの……?)
どうしても違和感が拭えない。
彼女には何かウラがあるのではないか。そう思わずにはいられなかった。
「あ!そーいえば、」
おもむろに陽向が声を上げた。
「副会長の目、見たか?」
「え?」
「茶色いんだけど、よく見ると一般的な茶色の目とは違って色素が薄いんだよ」
言われてみれば……と、私は彼女と対面した時のことを思い出す。
芯のある、力強い目だった。
(……薄い、茶色の目)
彼女とは初めて会ったのに、どこかであの目を見たことがあるような、妙な既視感を覚えた。
なんだか心がモヤモヤするが、原因はわからない。
(うーん……もう少しで思い出せそうなんだけどな……まあ、今後もちょくちょく顔を合わせるだろうし、ふとした瞬間に思い出すかもしれない)
そこで一旦考えるのをやめた。
その後は自然と世間話に切り替わり、陽向と談笑しながら帰路を辿っていった。




