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副会長と呼ばれた綺麗な人に見とれていると、彼女はキョトンとした顔で目をパチパチさせながら口を開いた。
「えーっと……夏芽、さん?はじめまして。生徒会副会長を務めている、東雲秋菜と申します」
彼女は自己紹介し、私に一礼した。
その動きには無駄がなく、洗練されていた。彼女はすらっとしていて身長もあるので、とても様になっている。
まるでそれは、貴族かと錯覚してしまうかのような。
そんな彼女の姿を見て、思わず私も背筋が伸びる。
「はじめまして。私は白雪夏芽と言います」
私も自己紹介し、彼女に一礼した。
そこで少し気になることがあった。
(東雲……?)
どこかで聞いた、いや、見たことがあるような。
はて、と私は首を傾げる。そして気づいた。
「あの、もしかして、今回の中間テストの成績上位者掲示で名前をお見かけしたような……」
「えぇ、よくご存知で」
【3位 東雲 秋菜】と書かれた掲示を思い出す。
まさか副会長さんだったとは。
「私も貴方の噂は耳にしています。会長と同率1位だったとか」
「うっ」
ドキリと冷や汗をかく私に対し、彼女はニコニコと笑みを浮かべている。
その目を見る限り、悪意のようなものは感じられない。むしろ称賛しているようにも見えた。
「あ、あはは……たまたまですよ、たまたま……」
あまりにも純真な眼差しに耐えきれず、私は彼女から目を逸らす。
(うぅ、眩しい……)
副会長さんのキラキラしたオーラにあてられていると、
「さて、自己紹介も終わったのならそろそろ本題に入りたいんだけど……」
いつの間にか自分の席についていたらしい雨宮くんが話を切り出した。
急に空気が変わり、部屋には緊張感が漂う。
何を言われるのかとビクビクしながら、私はゴクリと唾をのんだ。
「白雪さん、君には生徒会書記になってもらいたいんだ」
「……え!?」
(私が、生徒会の、書記!?)
「夏芽が書記だって!?」
私が驚くとほぼ同時に、陽向も驚愕していた。
「私は賛成です。だって白雪さん、面白そうですし」
ふふふ、と微笑む副会長さん。
「いやいやいや!私が生徒会だなんて、そんな冗談……」
「僕は、本気だよ」
私の言葉は雨宮くんによってぴしゃりと両断された。
「約1ヶ月半、白雪さんの隣の席で過ごしてきたけど、君はとても優秀だ。まさに生徒会に属するにふさわしい存在だと、僕は思うよ」
急に雨宮くんに褒められたので、わかりやすく動揺してしまう。
レイン王子そっくりの顔面から、レイン王子が言わなそうなセリフが出てくると、どうしても混乱するのだ。
「まあ、俺も夏芽が生徒会に入ってくれるなら……すごく心強いし、嬉しいけど」
「ちょっと、陽向まで!」
「これで、3対1だね」
「うぅ……」
行く手を阻まれ、絶対絶命だ。
しかし、私にも生徒会に入りたくない理由があった。
「大変光栄なのですが、その……生徒会に入るとどうしても目立ちますし、私の理想とする『普通』とは違う気がするんです」
私が目指しているのは、あくまで何の肩書きも持たない一般市民なのだ。
『生徒会』というステータスを得てしまうと、『普通』のテリトリーからは離れてしまう。そう考えた。
「『普通』、ね……」
うーん、と雨宮くんが考える素振りをする。
そこで口を開いたのは副会長さんだった。
「では、こういうのはどうでしょう?表向きには書記ではなく、ただのボランティアとして活動してもらう。とか」
「なるほど。あえて肩書きを公にしない、ということだね」
「確かに、それなら他の生徒たちに『生徒会』だとは認知されないかもな」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
私を除く3人が勝手に話を進めようとするので、間に割って入った。
「なんでもう私が生徒会に入る前提なんですか!」
「白雪さん……さっき、『生徒会に入ると目立つ』って言ってたと思うけど、今回のテストで僕と同率1位だった時点で明らかに目立ってるよね?」
「……」
それを言われてしまうとぐうの音も出ない。
「それに、『普通』の人はテストで1位なんて取らないと思うのだけれど」
さらに、副会長さんが追い打ちをかける。
「夏芽……この2人に口論で勝つのは、諦めた方がいいぞ」
とどめに、陽向がポンと私の肩を叩いた。
「……わかりました」
完敗だな……と、私はガックリと肩を落とした。
「ただし、条件があります」
私が提示した条件はこうだ。
・私が生徒会書記になったことを、他の生徒たちには一切口外しないこと。
・表向きは、今日の昼に起こした騒ぎの当事者として、生徒会の雑用という罰を与えられていることにすること。
この2つを条件として、私は生徒会に入ることを了承した。
(まあ、生徒会に所属すると成績に加点されるし……推薦枠に一歩近づいたと思って、ここはうまく利用しよう)
「これからよろしくね、白雪さん」
雨宮くんを筆頭に、副会長さんと陽向も満面の笑みを浮かべていた。




